今年はすでに主演作が3作も公開されているニコラス・ケイジさんの主演作「コンテンダー」(オースティン・スターク監督)が28日から公開される。2010年に起きたメキシコ湾原油流出事故をからめながら、スキャンダルに沈められた政治家が再起を懸ける様子をスリリングに描き出す。
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下院議員のコリン・プライス(ケイジさん)は、メキシコ湾での原油流出事故に苦しむ市民のために活動を開始した矢先、自らの不倫スキャンダルのために活動ができなくなってしまう。元ニューオーリンズ市長だった父親(ピーター・フォンダさん)の力も及ばず、上院議員になる夢は絶たれ、妻のデボラ(コニー・ニールセンさん)にも愛想を尽かされ、追い込まれてしまう。広報コンサルタントのケイト(サラ・ポールソンさん)に励まされながら、再起を懸けて活動を続けようとするのだが……という展開。
米国最大の環境汚染となった原油掘削施設の爆発事故。今作は、その事故を踏み台にして、はい上がろうとする政治家の物語だ。今年、出演作が4作目の公開となったケイジさんの主演作。他の作品に比べると「顔力」はほどほどだが、抑え気味の演技の中に、どん底から野望まで微妙な心理状態を表情で語っているのがさすがだ。市民の心をとらえた名演説が台無しになり、一気に信用が失墜してしまった2世政治家がどう立ち直っていくのか。その行方を追うことになるのだが、意外とサラリと描かれ、ドロドロの展開を期待している人にはやや印象が薄いかもしれない。とはいえ、実際の事故が絡んだことで、お金による攻防や、政治家の生々しい会話から、「政治家-企業-市民」の関係について考えさせられる。「イージー・ライダー」(1969年)のフォンダさんが、父親役で登場。ケイジさん演じる息子と対峙(たいじ)するシーンでは、ピンとした緊張感が楽しめる。妻役は「ある愛の風景」(04年)のニールセンさん。プライドが高い弁護士という役どころだが、夫に裏切られた女心も垣間見せつつ繊細に演じている。脚本も手掛けたスターク監督は俳優、「ウォッチャーズ」(09年)などのプロデューサーを経て、今作が初監督作となった。28日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開。(文・キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。BS12で再放送されている昭和のドラマ「ありがとう」を楽しんでいる。
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