ドラゴンボールDAIMA
第10話 ウナバラ
12月16日(月)放送分
米国のマンガ家チャールズ・M・シュルツさんによって1950年に生み出された「ピーナッツ」。それから65年。スヌーピーやチャーリー・ブラウンらピーナッツの仲間たちが、3DCGによるアニメーション「I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE」(4日公開)でスクリーンに登場した。自身も「ピーナッツ」の大ファンというスティーブ・マーティノ監督に話を聞いた。
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「I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE」のチャーリー・ブラウンは、転校生の赤毛の女の子に一目ぼれ。彼女にいいところを見せようと、いろんなことにチャレンジするが、なかなかうまくいかない。一方、彼の飼い犬であり“親友”のビーグル犬、スヌーピーは、そんなチャーリー・ブラウンをサポートしつつ、自身は空想の世界で第一次大戦下のパイロット“フライング・エース”になりきり、パリの空で大冒険を繰り広げる。
――CG(コンピューターグラフィックス)によるアニメーションということで身構えましたが、完成した作品は、子供の頃にコミックやテレビアニメで慣れ親しんだままの「ピーナッツ」でした。
私もブルー・スカイ・スタジオのチーム全員も「ピーナッツ」の大ファンだったので、今回の映像化には不安がありました。でも、任務として自分の子供たちや新しい世代に、私たちが愛したあのキャラクターたちを、あのままの姿で見せたいと思いました。その一方で、劇場で見られるという新しさも欲しい、そう思いながら製作しました。
*……今作では、チャーリー・ブラウンの髪の毛が何本もの毛の集合体として描かれているなど、CGならではのリアルな描写が見られる一方で、ピッグペンの周りを舞うホコリは、コミックをスキャンすることでシュルツさんが描いたホコリが動いているように見せたり、チャーリー・ブラウンの頭は、コミックから15種類ものバージョンを抜き出すことで理想的な形を探したりなど、コミックの精神を尊重し、あえて“絵”のように見せるアプローチがとられている。
――20世紀フォックスのロゴが映るオープニングから笑わせてもらいました。
あの、誰もが知っている20世紀フォックスの音楽を、シュローダーが演奏したら面白いんじゃないかと思いました。それによって、これは今までの映画と違うぞというメッセージにもなるし、ピーナッツの世界だと分かってもらえると思ったのです。でも果たして、スタジオ側が許してくれるかどうか……。そこで、スタジオヘッドのジム・ジアノプロスとステイシー・スナイダーに見てもらったところ、2人とも大笑いして、「これを使え!」とゴーサインが出たのです。
――今回改めて初期の原作コミックを読み返して、チャーリー・ブラウンが、時折、いじめられっ子のような描き方をされていたり、物語自体が結構辛口だったりすることに驚きました。
私は、60~70年代のマンガを読みながら育ちましたが、確かに、あの時代の社会的状況と今は違います。あの時代の世界をそのまま登場させてしまうと、いじめの問題などがありますし、今の親も子供も、そういうことに非常に敏感になっています。ですから、ピーナッツ自体は変えたくないんですが、どの部分に焦点を当て、どのような描き方をするのか、そこが大事でした。ルーシーはまだまだ辛口で、いろんなことをいいますが、それは笑える範囲ですし、チャーリー・ブラウンに対してクラス全体が“対チャーリー”ではなく彼をサポートする側もいるなど、そういったバランスを大切にしました。
――今回、赤毛の女の子が登場します。原作では姿を見せなかった彼女を登場させることには一種の勇気が必要だったのではないですか。
チャールズ・シュルツは、赤毛の女の子を一度しか描いていません。1巻にだけ登場しますが、私たちはそれに基づいて女の子をデザインしました。今回のストーリー上、彼女は最小の描き方になっています。でも、彼女が最後にいう言葉がこの映画のメッセージであり、それを彼女にしゃべらせることがとても重要でした。
*……マーティノ監督によると、ピーナッツの歴史上、赤毛の女の子はテレビの特番で2、3回登場したことがあるものの、それは当時の製作者が考えたもので、チャールズ・シュルツさんのデザインにはなっていないという。ちなみに、シュルツさんが描いた赤毛の女の子のエピソードでは「チャーリー・ブラウンが勇気を奮い立たせ、彼女にダンスを申し込みに行くが、結局、スヌーピーが彼女とダンスしちゃう(笑い)」のだという。
――ピーナッツファンにおすすめの場面を挙げるとしたらどこでしょう。
たくさんありますが、例えば、ライナスの“安心毛布”にまつわるシーン。毛布は教室には持ち込めないという規則があるため、彼はいつもそれをロッカーに入れています。廊下でチャーリー・ブラウンが赤毛の女の子のことをわあわあ話している背後で、ライナスがランチボックスを出そうとロッカーの扉を開けると、そこに毛布がぶら下がっている。彼がそれを「う~ん」と気持ちよさそうになでるんです(笑い)。本当に小さなシーンですが、アニメーターが描いたその姿がすごくチャーミングなんです。
――お気に入りのキャラクターを教えてください。
私は昔からスヌーピーです。スヌーピーとウッドストックのシーンというのは、せりふがないからパントマイム的。アニメーターとしては、そこに一番引かれます。今回の映画で、あの2人がタイプライターを学ぶところなんか、すごく好きな場面です。
――そのスヌーピーが、今作ではフライング・エースになりきり、パリの大空を駆け巡ります。
彼は、自分は欧州で戦い、雨や嵐の中をかいくぐっていると思っていますが、実のところは、フランクリンの家の風呂場やペパーミントパティの家に行っているだけなんです。で、ペパーミントパティがチャーリー・ブラウンに、あんたのバカな犬がここにいるわよ、と電話するわけですが(笑い)、アニメーターとしては、ああいうところがすごく楽しい。
――いつもホコリだらけのピッグペンがキレイになるシーンもありました。
ダンスシーンのところですね。実は、チャールズ・シュルツは、キレイになったピッグペンも描いているんです。それを見せるチャンスでしたし、ストーリー上もよかったと思います。
――先ほど、赤毛の女の子が最後にしゃべる言葉がこの作品の大事なメッセージだとおっしゃいましたが、改めて、日本の観客にどんなところに注目してもらいたいですか。
チャーリー・ブラウンは、たこ揚げをすればうまく揚がらないし、フットボールもうまく蹴ることができない。いつも失敗ばかりですが、彼が50年間、人気者であり続けられたのは、その性格のよさのお陰だと思います。今の世界は本当に情報があふれていて、私の娘たちなどは、価値観が一番にならないとだめだ、とにかく何かを達成し、メダルをとらないと、という気持ちがある。でも、一番重要なのは、人間関係における人に対する優しさなのです。チャーリー・ブラウンの妹サリーは、ときどき頭にくるようなことをしますが、チャーリー・ブラウンはそんな彼女に優しいし、ここぞというときは、みんなの尊敬に値するほどの正直さを発揮します。それに、常にギブアップしない。そういう、今日一番大事な性質を、彼は持っているのです。
<プロフィル>
1959年、米オハイオ州デイトン市生まれ。オハイオ州立大学でグラフィックデザインとコンピューターアニメーションの学位を修得。クランストン/クスリ プロダクションで実績を積み、メトロライト・プロダクションに入社。「トータル・リコール」(90年)で視覚効果に携わる。20世紀フォックスのアニメーションスタジオ「ブルー・スカイ・スタジオ」に参加し、「ロボッツ」(2005年)のアート・ディレクションを担当。「ホートン ふしぎな世界のダレダーレ」(08年)、「アイス・エイジ4 パイレーツ大冒険」(12年)では監督を務めた。
(インタビュー・文・撮影/りんたいこ)
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