小野憲史のゲーム時評:広がるゲーム開発イベント「ゲームジャム」 大手メーカー協力 自治体の支援も

ゲーム開発イベント「カタログIP×GameJam」の様子
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ゲーム開発イベント「カタログIP×GameJam」の様子

 超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、ゲーム開発イベント「Game Jam(ゲームジャム)」について語ります。

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 プロのゲーム開発者や学生など、経歴もスキルもまちまちな参加者が会場で即席チームを作り、数十時間(30~48時間)でゲームを完成させるイベント「ゲームジャム」が人気だ。当初は教育や人材育成が中心だったが、ゲームの試作品開発から人材採用、新サービスの宣伝など、さまざまな分野に広がっている。

 システム開発では最初に開発仕様書を作成し、その通りに進むのが一般的だ。しかしゲームでは計画通りに作っても、遊んでおもしろくなければ意味がない。そのため作り直しが日常的で、当初の計画から離れていきがちだ。プログラマー中心のシステム開発と異なり、プログラマーやアーティスト、ゲームデザイナーなど異なる専門分野のクリエーターがチームを組むため、さまざまな化学反応が起きやすい特性もある。

 しかし、ゲームの規模が拡大するにつれて、計画性が重視されるようになり、ゲーム自体も硬直化していった。こうした反動から生まれてきたのがゲームジャムだ。2000年代半ばに欧米で草の根的に始まり、日本には2009年に世界最大級の「グローバルゲームジャム(GGJ)」(主催:米非営利団体GGJ)を通して伝わった。GGJは成長を続け、2013年にはギネスブックにも登録。2015年は世界78カ国・地域で518会場が設立され、約2万9000人が参加。国内でも19会場・500人以上を数えた。

 GGJの拡大と共に日本でも、人材育成を目的に大学からゲームジャムが浸透していった。プロと学生がチームを組んでゲームを開発すること自体が珍しく、「集団による学びの場」として最適だったからだ。いち早くGGJの国内会場を立ち上げた東京工科大学メディア学部は好例だ。今では大学や専門学校で、ゲーム業界をめざす学生に対して、ゲームジャムを組み込んだカリキュラムを組む例も増えている。

 その後、ゲームジャムが一般化する中で、内容も多様化してきた。私が代表をつとめるNPO法人の国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)が主催する「東北ITコンセプト福島ゲームジャム」は、産業育成や地域活性化を目的としたもので、毎年8月に福島県を中心に実施されている。岡山県高梁市で10月に開催された「ゲームジャム高梁」も、町おこしを目的としたものだ。会場となった市民ホールが無料で貸し出されるなど、自治体からの支援も行われた。

 バンダイナムコエンターテインメントが11月6~8日に実施した「カタログIP×GameJam」は、自社サービスの宣伝を目的としたものだ。「パックマン」など過去17作品の公式二次創作コンテンツの開発・販売を認める「カタログIPオープン化プロジェクト」の一環で、約60人が参加し、14作品が開発された。同社では開催の狙いについて、「個人クリエーターなどより多くの層にプロジェクトの認知を広げたかったため」と話している。

 社内研修や福利厚生などの一環で開催される例もある。セガグループ有志が2012年から業務外活動として実施する「SEGA Game Jam」などだ。インターンシップにゲームジャムを活用する例もあり、カプコンは2014年12月から翌年1月にかけて「CAPCOM GameJam 2014」を東京と大阪で開催。バンダイナムコスタジオも同様の取り組みを2014年から進めている。企業と専門学校がコラボレーションする例もある。

 プロと学生が一緒になってゲーム作りに挑戦できるゲームジャムは、いわば草の根の産学連携プロジェクトだ。福島ゲームジャム2013で生まれたアクションパズル「ジャンプガン!」のように、商業リリースにむけて継続開発される例も出てきた。おりしも2016年1月29~31日、全世界でGGJが開催される。IGDA日本でも支援ユニットを通して国内会場の開催をサポートする予定だ。どのような未知のゲームが登場するのか、今から楽しみだ。

 ◇プロフィル

 おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長をへて2000年からフリーのゲームジャーナリスト。08年に結婚し、妻と猫3匹を支える主夫に“ジョブチェンジ”した。11年から国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表に就任、12年に特定非営利活動(NPO)法人の認定を受け、本格的な活動に乗り出している。

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