豊川悦司:「荒地の恋」主演 奇妙な三角関係に「昭和の男の妙な強さ感じた」

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「連続ドラマW 荒地の恋」に出演する豊川悦司さん

 俳優の豊川悦司さんが主演するドラマ「連続ドラマW 荒地の恋」(WOWOW)が9日からスタートする。直木賞作家・ねじめ正一さん原作の大人のラブストーリーで、豊川さんは親友の妻との禁断の恋に陥る50代の男性・北沢太郎を演じている。クランクアップを迎えた豊川さんに、今作の魅力や撮影の舞台裏などを聞いた。

 ◇映画デビューの監督作に「感慨」

 主人公・北沢は、かつて詩人仲間と詩誌「荒地」の創刊のため、戦後日本の現代詩運動の中心として活動していたが、現在は53歳となり、新聞社の校閲部に勤務しながら細々と詩作を続けていた。妻と子供2人との平凡な幸せをかみしめながら生活していたが、親友であり戦後詩の代表的人物である三田村貴一の妻・明子と恋に落ちたことで、仕事と家族を捨て、これまでにないほどの情熱と「言葉」を取り戻していく。

 今作は、豊川さんの映画デビュー作である「君は僕をスキになる」でメガホンをとった渡邊孝好監督が何年も前から温めていた作品。「シナリオがまだない段階から、お話をもらっていた」といい、今回のドラマ化に「感慨があります」と思い入れを語る。

 そして、ストーリーについても「興味が湧いた」といい、「老いらくの恋もあれば、駆け落ち話もあるし。芸術家の話もあるし、家庭が崩壊していくホームドラマ的な要素もあるし。一人の男の人生を通して、人間とは何かを描いていく。ちょっと大河的な流れもあるような気がしますね」と豊川さん。「現場の感触的には、すごく面白いものになるんじゃないかなって気がします」と胸を張る。

 ◇「昭和の男たちの妙な強さ」

 豊川さん演じる北沢は、53歳で明子と恋に落ちたことで人生が一変する。くしくも現在の豊川さんと同い年だが、「若いときから追いかけてきたものを生活のために封印してきた男で。でも仲間たちはそれを続けている。そういう自分に対するコンプレックスみたいなものが北沢の中にはあって。それが、ある一人の女性との出会いによってどうしても抑え切れなくなってしまう。そういう意味では……出会いでしょうね。やっぱり人間ドラマだなって思いますね」と理解を示す一方で、「僕らの感覚ではついていけないようなところもある」と一線を引く。

 「いい意味でも悪い意味でも、今の時代より、あの時代の人たちは強かったっていうのかな。意志が強いというか。戦争というキーワードはそんなに大きくは出てこないけれど、彼ら実際に兵隊で行っているという設定ですから。自分じゃ分からないような強さをどこかしら持っているというか、植えつけられているというか……」と続ける。

 その上で、北沢と明子、その夫・三田村の三角関係について「すごく許容範囲が広い人たちなんですよね。(三田村は)自分の奥さんと親友ができちゃっても、そのことを責めずに、じゃあ俺はどうやって(北沢と)今後付き合っていくかというのを考えて。関係がぐちゃぐちゃなんですけど、昭和の男たちの妙な強さというか、開き直り感というか、それがすごいドラマチックなんじゃないかなと思いましたね」とある種、独特の魅力を語った。

 ◇詩人の世界に「引かれた」

 また今作では、1970年代後半から80年代に実在した個性的な詩人たちの人間模様が描かれており、「言葉の世界に身を投じていた人たちの姿がすごく面白く思えた」という豊川さん。劇中で、彼らが繰り出す“特別な”言葉に触れて、「僕、詩を熱中して読んだ記憶はなかったんですが、太郎さんの作品とかに触れて面白いなって思いました。汗の跡がにじんでるんですよね、言葉一つに。それが自分の知らなかった世界に引かれたっていうのはありましたね」と詩人への興味を語る。

 「生きる上で、いろんな種類の言葉が存在するわけですよね。はっきりいって、その一言だけでも一編の映画、一冊の小説みたいなものになる。それを煮詰めて煮詰めて、何時間も煮詰めていくと、なべの底に残っているのが一つの言葉であるっていう。ある意味、そういう言葉に彼らは人生をささげたと思うんですよね。だから、すごく偉大なる先輩なんじゃないかなって思うし、大きさみたいなものを改めて感じた」としみじみ語る。

 そして、「納得する人生」とはどういうものなのかを真摯(しんし)に見つめ、もがきながら生きる詩人・北沢の言葉を引き合い出しに、「主人公(の北沢)は『生きていかなきゃいけないから』っていっているんだけど、かたや親友(の三田村)は『いかに死ぬべきか』って思っているわけじゃないですか。でも、それは同意語で。そこがすごく面白いっていうか。人間って深いなって。いろんな見方ができる。だから、僕はこの作品を群像劇として見てもらえればいいんじゃないかなと思っています」と続けた。

 ◇ドラマは「三丁目の夕日“ダークサイド版”」?

 ドラマは、北沢を中心に、登場人物それぞれが「荒地」の人生を歩んでいく姿が描かれている。禁断の愛が軸となることから、撮影現場もシリアスな雰囲気だったのかと思いきや、豊川さんは「楽しい現場でしたよ」と笑顔を見せる。

 「監督がそういう雰囲気作りをしていたというのもあるんでしょうけど」といい、「演出も面白くて。明子を演じた鈴木京香さんに『今日はジャンヌ・モロー』とか必ず(人物や映画など)何かにたとえて演出するんです。それが面白くて、現場も和むんですよ」とにっこり。

 鈴木さんについては「華やかな雰囲気を持っている人で、現場に入ってくるとパーッとそこだけ明るくなるような感じがありますね。性格的には相当天然な人だと思いますね(笑い)。いい意味でクラシカルな昔の女優さんみたいな雰囲気を持っていて、そういうオーラがすごくありますね。今回もね、ちょっと昔風のスタイルがすごく絵になる。生まれる時代を間違えたんじゃないかな(笑い)」と賛辞を贈る。

 また、一昔前の時代を演出するセットについても「時代劇を作る感覚っていうのかな。みんなその時代にいないから楽しんでいるんですよね。美術品もこだわって用意していたりとか。今回、久しぶりに見た家電っていうのがありましたね。けっこう年配の人たちも、そういうところで楽しめると思いますよ」とアピールし、「『ALWAYS 三丁目の夕日~ダークサイド~』っていってもいいかもしれない(笑い)」とユーモアを交えながら話していた。

 「連続ドラマW 荒地の恋」は、9日から毎週土曜午後10時、WOWOWプライムで放送。全5話で、初回は無料放送。

 ◇プロフィル

 とよかわ・えつし。1962年3月18日生まれ、大阪府出身。1990年、北野武監督の映画「3-4X10月」で演じた沖縄のヤクザ組長役で注目される。その後、「12人の優しい日本人」(91年)、「きらきらひかる」(92年)、「課長島耕作」(同)と映画に出演し、93年に第14回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第16回日本アカデミー賞新人賞などを受賞。92~93年にかけて放送された主演ドラマ「NIGHT HEAD」(フジテレビ系)で支持を受け、93年のNHK大河ドラマ「炎立つ」、94年の「この世の果て」(フジテレビ系)、「この愛に生きて」(同)と立て続けにドラマに出演。95年の「愛していると言ってくれ」(TBS系)、97年の「青い鳥」(同)の主演作が大ヒットした。おもなドラマ主演作として、「危険な関係」(99年、フジテレビ系)、「弁護士のくず」(06年、TBS系)、「ビューティフルレイン」(12年、フジテレビ系)がある。今後、ナレーションを務める映画「ジョーのあした 」が2月27日、出演映画「後妻業の女」が8月27日に公開する。

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