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注目映画紹介:「LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版」震災の記憶を10代の目を通して見る

映画
「LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版」のワンシーン(C)2015 NHK

 女子高生のロードムービーから震災を見つめ出した「LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版」(井上剛監督)が23日から公開される。NHKで全国放送された特集ドラマに未公開場面26分間を追加して再編集し直した。被災した10代の目を通して、当事者にしか分からない悲しみに近づこうとする意欲作だ。

 朝海(石井杏奈さん)は東日本大震災で被災し、今は神戸の女子高に通っている。卒業を控えて合唱部の顧問の岡里(渡辺大知さん)から、阪神淡路大震災の復興のシンボルとして歌い継がれた「しあわせ運べるように」を歌おうと提案される。しかし朝海は歌う気になれない。ある日、朝海は小学校の同級生の勝(征木玲弥さん)と駅で待ち合わせ、電車を乗り継いで東を目指す。横浜で香雅里(木下百花さん)と落ち合い、福島県へ到着。地元の駅で待っていた本気(前田航基さん)、心配でついて来た岡里とともに、6年前にタイムカプセルを埋めた小学校を目指す……という展開。

 被災によってバラバラになった同級生たち。電車、バスで故郷に帰る乗り継ぎの旅路が映し出される。途中、富士山に心躍らせ、カラオケではしゃいだ後にやって来る、懐かしいはずの風景には、いまだに解決されていない原発事故のむき出しの姿が無残がさらされていた。10代のヒロイン朝海の柔らかな心の目を通して、一つ一つのカットが鋭く心に刺さる。人気のない街には確かに暮らしの痕跡があるが、時が止まったままだ。演じる俳優たちの表情も繊細にとらえ、芝居なのか本当の驚きなのか見分けがつかないほど自然な表情も見られる。

 阪神淡路から21年、東日本大震災からはすでに5年たつ。都心では震災の記憶が薄れつつあるが、風化をさせてはならないという思いと、忘れてしまいたいという当事者の思いが、二つの被災地を通して見えてくる。たとえ街は復興しても悲しみは癒えないこと、遺品探しをしながらも見つかってほしくないという複雑な思いがあること……当事者にしか分からない悲しみをすくい取っている。ヒロイン役は「ソロモンの偽証 前篇・後篇」(15年)などに出演したE-girsの石井さん。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の監督で、「その街のこども 劇場版」(10年)の井上監督が手掛けた。音楽は「あまちゃん」の大友良英さん、Sachiko Mさん。フォーラム福島(福島県福島市)ほかで先行公開中。23日からシアター・イメージ・フォーラム(東京都渋谷区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。デビッド・ボウイが亡くなってしょんぼり。

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