世界のトップで活躍する日本人バレエダンサー、西野・エケベルグ・麻衣子さんが、子供を出産、再びプリンシパルとして復帰しようとする姿を映したドキュメンタリー映画「Maikoマイコ ふたたびの白鳥」(オセ・スベンハイム・ドリブネス監督)が20日から公開される。仕事は続けたい。でも、子供は欲しい……そんな悩ましい問題を抱える女性にとって、一つの道しるべとなる生き方を提示した作品だ。
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大阪出身の西野さんは、15歳のときに英国ロイヤルバレエスクールに留学。1999年、19歳でノルウェー国立バレエ団に入団し、25歳で同バレエ団東洋人初のプリンシパルとなった。その一方で、オペラハウスで芸術監督を務めるニコライさんと結婚。やがて、「子供が欲しい」と思うようになるが、プリンシパルという立場での妊娠、出産は、最も大切なときを失うことでもあった。そんな中、西野さんは予期せぬ妊娠をする。そして、出産。西野さんは、子育てをしながらプリンシパル復帰を懸けて、クラシックバレエ屈指の難役「白鳥の湖」に挑む……という展開。
バレエダンサー、しかもプリンシパルであり続けるためには、過酷なレッスンが必要になる。周囲には、しのぎを削るライバルたちが山ほどいる。そんな中で子供を産み、育て、再びプリンシパルとして復帰する。この、誰もが無謀だと思うことに、西野さんは挑んだ。カメラは、そんな西野さんの姿をとらえる。妊娠7週目に入っても踊り続ける西野さん。ターン、リフト、そこからの着地……見ているこちらがひやひやする。おなかが大きくなってもレッスンを続けるが、しかし“限界”はやって来る。自分が立つはずだった舞台を、客席から見つめる西野さんの表情が印象的だ。その一方でカメラは、西野さんのプライベート……大阪出身の西野さんが、愛する家族と過ごすだんらん風景や、尊敬する母、衣津栄さんとのやりとり、さらに、夫ニコライさんと、生まれてきた息子アイリフ君に対する西野さんの妻として、母としての姿をとらえる。
(西野さん自身はそう思っていないだろうが)頂点を極めながら、それに甘んじることなく、さらに、子供を産み、育てるというバレエとは別次元の大変なことに挑む西野さんの強靭(きょうじん)な精神力と肉体には感服するばかりだ。同時に、「頑張れ」ではなく「(一緒に)頑張ろう」と妻を支えるニコライさんの理解ある様子、そして、妊娠を告げたときの、バレエ団の人々の反応の温かさに、妊婦や子育て中の母親を取り巻く環境の、ノルウェーと日本の歴然とした差を感じた。20日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで順次公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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