SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』魚人島編
第8話 弱虫で泣き虫!人魚姫しらほし
12月22日(日)放送分
スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督が絶賛した新鋭カルロス・ベルムト監督の「マジカル・ガール」が12日から公開されている。サン・セバスチャン国際映画祭でグランプリと監督賞をダブル受賞し、主演女優に数々の賞をもたらした話題作だ。架空の日本製魔法少女アニメに憧れる少女とその父親が思わぬ運命に巻き込まれる様子を、ブラックな話とコメディーの絶妙なバランスの中で描き出した。このほど来日したベルムト監督に聞いた。
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映画には2組の男女が出てくる。日本のアニメ「魔法少女ユキコ」に憧れる白血病の少女アリシアと無職の父親ルイス。心に闇を抱える女性バルバラと彼女を愛する元教師ダミアン。4人の運命が狂っていくダークな物語が、簡素な部屋や真っ白な屋敷の中で展開されていく。
魔法少女のコスチュームを欲しがる娘のためにバルバラから金を巻き上げようとした父親をきっかけに、4人が予想もしない方向へと進んでいくストーリー。「脅迫」をモチーフに「古典的にならないフィルムノワールを作りたかった」というところから製作がスタートした。日本の架空のアニメを用いてイノセンスを表し、ダークな世界観との対比を作り出した。
「少女がアニメのキャラクターのコスチュームを欲しがったために、父親はバルバラを恐喝します。でも、次に魔法のつえが必要となり、再び恐喝しなくてはならなくなります。魔法のつえは、闘牛でいうところの『やり』も表しています」とベルムト監督が語るように、今作には闘牛の要素もちりばめられている。
ベルムト監督は「私は闘牛を残酷だと思うのですが、音楽を聴き、コスチュームを見ると、ドキドキして感動もするのです。自分の中で闘牛への葛藤があり、その要素を映画の中に取り入れたかった。例えば、元教師のダミアンが復讐(ふくしゅう)のために身支度するシーンは、マタドール(闘牛士)のように見えます。マタドールは男らしさの象徴で、男性にとらわれているともいえます」と語る。
そんなダミアンは元数学の教師だが、本能に導かれて一線を越えてしまう人物となる。アリシアの父親のルイスも元教師だが、こちらは国語の教師という設定だ。「スペインは歴史上、内戦を繰り返してきました。理由は南北、宗教、人種に関係なく、理性と感情の二つのイデオロギーの対立です」と説明し、2人の男はスペイン人の気質を表していることを説明する。
間違った愛に突き進む男性陣に対して、2人の女性の感情は淡々としている。女性を描くにあたって「目が重要な要素だった」とベルムト監督。バルバラ役のバルバラ・レニーさんがクールな美しさを放っている。
「レニーさんの目力は冷たく、まるで雪女のようです。スペインの女優は情熱的な目をしているけれど、感情を抑え込む芝居が難しいのです。でも、レニーさんはそれができました。すべてのシーンで彼女にインスパイアされながらカットを考えていきました」
少女なのに美少年を思わせる風貌の、アリシア役ルシア・ポジャンさんの目も美しく鋭い。デミアンと対峙(たいじ)するシーンでのアップが印象に残る。そのカットは、まるでマンガの中の一コマのようだ。映画監督になる前はマンガ家だったというベルムト監督らしいカットになった。
子どもの頃、日本のマンガ「聖闘士星矢」や「ドラゴンボール」を見て育ち、1年の3分の1は東京に住むというベルムト監督。アリシアが憧れる魔法少女のコスチュームは「美少女戦士セーラームーン」の影響があり、YouTubeで見つけたという長山洋子さんのデビュー曲「春はSA-RA-SA-RA」を使用し、美輪明宏さんの主演映画「黒蜥蜴」(1968年)へのオマージュも飛び出す。魔法が使えたら「好きな時に東京に行きたい」と即答するベルムト監督。今作の脚本は東京で書き上げたのだという。
「魔法少女のコスチュームにリアリティーを与えたかったので、秋葉原に行き、マンガを読んだり、コスプレの衣装を参考にしたりしました。今回で来日10回目です。最近は滞在中に友人と会ったり、散歩をしたり、本を読んだりしています。好きな場所は上野の国立科学博物館です」と笑顔で語る。
自らを「理性的な人間」と分析し、「理性的なものがよりよいものを作ると思うが、芸術においては、説明を求めずに謎を謎として作りたいという気持ちがある。理性と感情の葛藤は私にもある」と話す。
「私は魔法のない世界は退屈だけど平和だと思っています。でも、芸術の力が魔法だと思いたいですね」と力強く語った。
「マジカル・ガール」はホセ・サクリスタンさん、レニーさん、ルイス・ベルメホさん、ポジャンさんらが出演。12日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで公開中。
<プロフィル>
1980年生まれ。マドリードの第10美術学校でイラストレーションを学び、エル・ムンド紙でイラストレーターとして働く。2006年、初の単独著書を出版し、バルセロナ国際コミック・コンベンションの4部門にノミネートされる。09年、短編映画「Maquetas」が第7回ノトド映画祭でグランプリを受賞。11年、インディペンデント映画として初の長編映画「Diamond Flash」を製作。インターネット上のサイトで配信されて話題になる。日本のマンガ「ドラゴンボール」にオマージュをささげ、再解釈したコミック「Cosmic Dragon」を出版。手塚治虫さん、丸尾末広さん、浦沢直樹さん、水木しげるさんのファン。勅使河原宏監督の「砂の女」(64年)や園子温監督、岩井俊二監督、塚本晋也監督の作品がお気に入り。
(インタビュー・文・撮影:キョーコ)
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2024年12月23日 17:00時点
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