いきものがかり:10周年記念ベスト盤をリリース「幸せな状態で10年間歩んでこられた」 

10周年を記念したベストアルバムをリリースした「いきものがかり」の(左から)水野良樹さん、吉岡聖恵さん、山下穂尊さん
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10周年を記念したベストアルバムをリリースした「いきものがかり」の(左から)水野良樹さん、吉岡聖恵さん、山下穂尊さん

 3人組グループ「いきものがかり」が、デビュー10周年を記念したベストアルバム「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~ 」を15日にリリースした。メンバーが話し合いを重ねてセレクトした既発曲に加え、4月から放送される中谷美紀さん主演のTBS系ドラマ「私結婚できないんじゃなくて、しないんです」の主題歌「Sweet!Sweet!Music!」などの新曲も収録された盛りだくさんな内容だ。楽曲の制作秘話やエピソードなどについて、いきものがかりの3人に聞いた。

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 ――本編としては3枚組みの今回のベスト盤は、スタッフも交えながら選曲と曲順を決めていったそうですね。

 山下穂尊さん:最初の曲は(デビュー曲の)「SAKURA」がマストかなとか、じゃあ2枚目は「ありがとう」、3枚目は「風が吹いている」で、この10年間でフックになってきたような3曲を最初にして……。あとは、1枚1枚、普通に楽しんで聴けるものにしたいっていうのがあったんで、オリジナルアルバムを作るみたいな感じで選曲と曲順は考えていきました。

 吉岡聖恵さん:1曲1曲にレコーディングの景色とか、「インディーズでやってたね」「学生の頃からやってたね」っていう思い出があって、「あの時ああだったね」って思い返しながら、会話しながらやっていたので、何か温かい気持ちになりましたね。

 ――そんな中で、特に思い入れのある楽曲は?

 水野良樹さん:「SAKURA」は、これで世に出ていったんで、すごく大事だったかなって。振り返ってみれば、この10年間で一番演奏した数の多い曲なのかなと思っていて、この間のツアーでさえもダブルアンコールで「SAKURA」をやったりして、この曲と一緒に、何だかんだ10年、歩んできたなって。デビュー前に結構、試行錯誤して、いろんな方向に迷った時期もあったので、この曲をデビューシングルに選んで出ていったのは、自分たちのその後の将来にとって、ホントに良かったなって、すごく思いますね。

 吉岡さん:「花は桜 君は美し」という曲ですね。高校の頃、2人が1歳年上なので、受験を機に1回、活動を休止したんです。そこから自分も歌の勉強をしたいと思って、音大に行って声楽を習ったんですけど、声楽とポップスの歌い方を混乱してしまって、ちょっと歌いたくないなと思う時期があって。でもその間、男子メンバーは自分を説得してくれていて、曲も書きためておいてくれたんですね。それで、みんなそろって大学生になって「もう一度やろう」ってなった時に、地元のライブハウスで初めてワンマンライブをやったんです。その時の1曲目が「花は桜 君は美し」で、「また始まる」っていうのもあったし、ワンマンライブができたことで「いきものがかりとして、これからもやっていけるんだろうな」って何となく思ったきっかけにもなったので、思い入れのある曲ですね。

 山下さん:「夢題 ~遠くへ~」という曲は、実はいきものがかりのために書いた曲ではなくて、高校生の頃に自分の高校の文化祭のために書いたんです。その時に、同級生の女の子がステージで歌を歌いたい、みたいな話で、頼まれて書いた中の1曲で、良樹と僕がギターを弾いて、真ん中に2、3人の女の子が入って歌ったんです。それから大学生になって、いきものがかりとしてちゃんとプロを目指そう、みたいになっていった頃に、聖恵のボーカルで演奏して、路上ライブやライブハウスでやったり、という歴史のある曲なので、結構、思い入れがあります。

 ――「運命の人よ……」「白馬の王子様よ……」という歌詞が印象的な「コイスルオトメ」は、ライブアレンジのバージョンを音源化した“激情編”として収録されていますね。

 水野さん:当時、「女性がボーカルなんだから、女性の曲を書いてみたらどうか」みたいなことをスタッフに言われて、半ば、ちょっとすなねがら書いたような(笑い)。振り切って書いてみようみたいな感じで、女性の曲を書こうと思って書いたのはこれが初めてぐらいだったので、すごく苦労したのを覚えています。でも、歌詞はそうやって女性のものに寄るから、メロディーは自分の好きなように作ろうと思って、実はメロディーはいきものがかりっぽくないんです。

 吉岡さん:歌詞だけを見るとすごくラブリーな感じはするんですけど、すごくロックなメロディーでアレンジもカッコよくて、私の歌い方も、ものすごくクセのあるような感じではないので、すごく絶妙なバランスで成り立っている曲で。ライブで磨かれていったこのアレンジも、バンドがすごく燃える感じがあるんですね。バンドも集中してるし、聴いている人もグッと見入ってくれてるのを感じながら演奏できるので、ライブでずっとやり続けてる曲ですね。

 ――新曲「ぼくらのゆめ」は、グループとして節目を迎えた心境がつづられていて、自身を題材にするという意味で新鮮ですね。

 水野さん:いきものがかりって「自分はこんなふうに思っています」っていうことをあんまり言わないで、むしろ聴いてくださる方がどれだけ自分の感情を投影できるかということを大事にしてきたので、自分たちのことを歌ってる曲というのはすごく珍しいと思うんですね。僕らは幸せな状態で10年間歩んでこれたので、単純に幸せだったね、みたいな。「これだけたくさんのCDを出せて、仲間も増えて幸せだよね。さらに前に進めたらいいね」みたいな感じの、メンバーに出す手紙のような曲になったんですけれど、それが本編の最後に入っているので、気持ちとしては、10周年が終わってここからリスタート、みたいなイメージが伝わればいいかなと思ってます。

 <プロフィル>

 メンバーは、リーダーでギターの水野良樹さん、ボーカルの吉岡聖恵さん、ギター&ハーモニカの山下穂尊さんの3人。2006年3月15日にシングル「SAKURA」でメジャーデビュー。10周年記念のベスト盤のタイトル「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~ 」は「会議室でホワイトボードにみんなで意見を出しながら、2、3時間考えた」(吉岡さん)ということで、てんねん=“10年”と“天然”を引っ掛けたダジャレ。山下さんは、「インターネット上で、吉岡が(日本の特別天然記念物の)カワウソに似ているって話題になったらしくて、それでCDジャケットの足元に、紙粘土の人形でカワウソを作ってもらいました」と話した。

 (インタビュー・文・撮影:水白京)

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