ダンダダン
第5話「タマはどこじゃんよ」
10月31日(木)放送分
女優の井上真央さんが猫の声を担当する劇場版3DCGアニメ「ルドルフとイッパイアッテナ」(湯山邦彦監督・榊原幹典監督)が6日に公開された。井上さんが担当したのは、主人公の黒猫、ルドルフ。「猫ちゃんというよりは、どちらかというと好奇心旺盛な男の子」というイメージで演じたという井上さんに、声優の苦労や収録時のエピソードなどを聞いた。
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映画「ルドルフとイッパイアッテナ」は、斉藤洋さんによる児童文学が原作。ひょんなことから岐阜県で暮らす大好きなリエちゃんの元を離れ、東京に来てしまった黒猫のルドルフ。右も左も分からない中で、彼は、その界隈を牛耳るボス猫のイッパイアッテナや、おしゃべりでお調子者の金物屋の猫、ブッチーらと出会い、友情を育み、ノラ猫として成長していく姿を描いている。イッパイアッテナの声を、アフレコ初挑戦となる俳優の鈴木亮平さんが、ブッチーの声を八嶋智人さんが担当している
――アニメーションの声優は2度目ですが、今回猫の声を演じるにあたって、どのような役作りをしたのでしょうか。
鳴き声や甘える感じは、小学生の頃、猫を飼っていたので、そのときのことを思い出したり、猫の鳴き声は結構得意だったので、そこに関してはあまり気にしませんでした。むしろ、猫ちゃんというよりは、イッパイアッテナやブッチーと話していることが多かったので、ルド(ルドルフ)の好奇心旺盛さとか、成長を見せていけたらいいなと思いながら演じていました。
――「それいけ!アンパンマン りんごぼうやと みんなの願い」(2014年)では、りんごぼうやの声を担当しました。その経験は生かせましたか?
りんごぼうやの“反省”を生かそうとは思いました(笑い)。あのときは、せりふだけではない、息遣いというものがこういうところで必要なんだとか、「う」とか「わ」とか、「はあはあ」という、いろんな息遣いの勉強をさせてもらいました。今回は、必要ないかもしれないけれどやってみたり、それが意外と使ってもらえたりしたので、それは「アンパンマン」で勉強させてもらったお陰だと思います。
――イッパイアッテナ役の鈴木亮平さんとの共演はいかがでしたか。
亮平さんは(アフレコは)初めてで、私も2回目とはいえ、久々の、しかも長編は初めてだったので、2人とも必死でした。ただ、亮平さんは最初から声のトーンを安定させていて、イッパイアッテナの声はこんな感じだというのをきちんと自分の中で作り上げていたので、私は正直、焦っちゃいました(笑い)。最初は隣同士、立ってやっていたんですけれど、いろんな音がお互い入ってしまうということで、亮平さんが後ろのブースでやることになって。だから、ずっと後ろから見られている感じはしつつ(笑い)、それでも一緒に(収録)できたのはよかったです。
――お芝居とはやはり違うものですか。
そうですね。やっぱりお芝居は、もちろんいろんな人がいて、自分も作り手として途中いろんなことをやりながら一緒に作り上げていく。一方こちらは、時間をかけて、いろんな人が関わって、ほとんど出来上がったものの最後に(声を)入れるわけですから、自分の声で台無しにできないというプレッシャーはありました。あとはやっぱり、亮平さんも言っていましたけれど、相手の顔ではなく、自分が演じるものを通して相手を見るということの難しさがありました。
――映画が始まってすぐの、桜の花びらを追いかけるシーンが難しかったそうですね。
あそこは、ルドのキャラクターが分かる一番最初の場面で、猫の鳴き声がしたり、人間の声がしたり、リエちゃんに甘えている甘えん坊のところが見えたりもするし、桜の花びらを追いかけることで(好奇心の)旺盛さというものも表現する必要があって、とにかく、ぎゅっと詰まった感じなんです。それをいきなりやるのが難しかったのと、「わあ、きれい!」と桜を追いかけるんですが、「それでは、桜や花びらがきれいなものだと知っている。だから追いかける、という感じになっている。そうではなくて、“なんだろう、なんだろう”という感じをもうちょっと出してほしい」と(湯山監督に)言われたときに、年齢設定もそうですけど、性格ももうちょっと掘り下げないといけないなと思いました。
――後半になるに従い、ルドルフの成長も見せていく必要があります。
そうなんです。本当に成長物語でもあるので、その部分が一番大事かなと思ったときに、自分でもちょっと年齢設定が上になっていたんですよね。それではちょっと伝わらないなと思ったので、(声のトーンを)もうちょっと下げて……という感じですね。
――ということは録(と)り直しをしたのですか?
はい。半分までやって、監督に会いに行って、すいません、最初からやらせてくださいって……。
――勇気がいりませんでしたか?
いりました。申し訳ありませんという感じでしたけど、でも、監督は「井上さんは真面目なんだね」と言って(笑い)、了承してくださいました。
――鈴木さんとの収録も済んでいたんですよね。
はい、だから、亮平君にも悪いなと思って、次の日、内緒でこっそり早めに入ってやりました(苦笑)。でも、亮平さんも、一つだったかな、やり直したところはあったようです。
――イッパイアッテナがルドルフに「絶望は愚か者の答えだ」と諭す場面がありますが、井上さんご自身、これまで絶望したことはありますか。
結構、“まあ、なんとかなるか”と思っちゃうタイプなので、意外とないですね。どんと落ちてどんと上がる、みたいな感じですね。絶望ですか……なんだろうな……鍵も携帯も家に忘れてきたとかは、しょっちゅうあります。買い物をしてお財布を忘れていたとか。あとは、携帯の充電がなくなることに気付かなくて、本当に電話したいときに2%というときは絶望的ですよね。だいたい2~3%で気づくんです。そのときは絶望的になるかな(笑い)。
――落ち込んだときは、気持ちをどう切り替えるのですか。
パターンにもよりますけれど、お仕事の場合だと、現場に行って人に会うと楽しくなるし、やらなきゃなという責任感も出てくるし。人と会う、現場に行くということが、自分の中で切り替えになっているのかな。
――今回、劇場版アニメーションの主演を初めて演じたわけですが、今後、やってみたい役はありますか。
最近、昭和を舞台にした役が続いていて、等身大の役を意外とやっていないんです。私自身は時代物は好きですけど、モンペとか、着物とか、しばらく普通の服を着ていないんですよね。舞台(野田秀樹さん演出の「逆鱗」)も奇抜な役でしたし、今回はネコちゃんだし(笑い)。女性の20代って、いろんな悩みがある時期じゃないですか。そういう等身大の役をやってみたいなという思いはありますね。
――映画は、「教養」の大切さも説き、イッパイアッテナがルドルフに本を読むことを勧めますが、井上さんご自身は、教養はどうしたら増やせると思いますか。
もちろん、子供のときなど、一番感性が磨かれる時期に本を読むことは大事だと思いますし、あとはやっぱり、ありきたりかもしれませんが、いろんな人との出会いの中で、いいことばかりではなく、傷ついたり、悲しいことがあったり、そういうことで相手の気持ちを知るということも大切だと思います。やっぱり、出会いと経験の中で身についていくものではないかなと思います。
<プロフィル>
1987年生まれ、神奈川県出身。2005年、テレビドラマ「花より男子」シリーズのヒロイン役でブレーク。映画「八日目の蝉」(11年)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞。15年NHK大河ドラマ「花燃ゆ」でヒロインを務めた。初めてはまったポップカルチャーは「アンパンマン」。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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