マット・デイモン:最新作「ジェイソン・ボーン」語る 「ボクサーのような身のこなしを」といわれ肉体改造

映画「ジェイソン・ボーン」について語ったマット・デイモンさん
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映画「ジェイソン・ボーン」について語ったマット・デイモンさん

 米俳優マット・デイモンさん主演の映画「ジェイソン・ボーン」(ポール・グリーングラス監督)が7日に公開された。この作品は「ボーン・アイデンティティ」(2002年)、「ボーン・スプレマシー」(04年)、「ボーン・アルティメイタム」(07年)からなる“ボーン3部作”の新章に当たり、デイモンさんが再び主人公の元CIAの暗殺者ジェイソン・ボーンを演じている。作品のPRのために8月に来日したデイモンさんに話を聞いた。

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 ◇背中を押したファンの声

 映画「ジェイソン・ボーン」の舞台は、前作「ボーン・アルティメイタム」から12年後という設定だ。消息を絶っていたボーンの前に、ジュリア・スタイルズさん演じる元同僚のニッキーが現れ、CIAが、新たな極秘プログラムを開始したという情報がもたらされる。それによってボーンは、再びCIAと対峙(たいじ)することを余儀なくされ、さらに、自身の過去にまつわる秘密にも迫っていくことなる。

 ボーンの旅は、前作でひとまず終焉(しゅうえん)を迎えた。しかしその後、デイモンさんとグリーングラス監督の元には、「次はいつ作るのか」「ボーンの作品をもう1本作ってほしい」というファンの声がひっきりなしに寄せられたという。かつては、「自分にも、誰も見に来てくれないような作品があった」と話すデイモンさんは、だからこそ、ボーン・シリーズの続編を待ち望む人がいることに、「本当に謙虚な気持ちになったし、ポール(・グリーングラス監督)と電話で話をすると、これだけ多くの人が見たいというのだったら、作るべきではないか」という結論に至ったことを明かす。

 ◇過酷なトレーニングは「きつかった」

 ただ、「ずっとアイデンティティーを探し求め、やっとそこから解き放たれ、泳ぎ去るという非常にいいエンディング」だった前作。そのままボーンが幸せになったら、次なる作品は作れない。そのため、「そのエンディングの5分後には、彼は罪悪感にさいなまれ、また危険に身を投じていく」という“裏エピソード”を作り上げ、デイモンさんも、プロデューサーからの「苦しみがにじみ出ていなければだめだ。それにはひたすら苦しむしかない」という言葉を受け入れ、役作りのために「非常に厳しいトレーンニングをしなければならなかった」と話す。

 その言葉通り今作のボーンは、登場シーンから驚くほど疲弊している。年齢を重ねただけではないほどのやつれ方だ。半面、素手で行うベアナックル・ボクシングのシーンでは、目を見張るほどのたくましい肉体を披露している。旧シリーズ1作目のとき、メガホンをとったダグ・ライマン監督から、「ボクサーのような身のこなしをしてほしい。ボクサーはものすごくバランスがとれていて、効率的な動き方をし、かつ攻撃的に歩く」と言われたことから始めたボクシングだが、その後も「16年間ずっと続けている」といい、それでも今回、ボーンを演じるにあたってのトレーニングは「前回は29歳、今回は45歳。もちろん、きつかったよ」と苦笑まじりに告白する。

 ◇餅屋は餅屋

 旧作以上の見せ場があるアクションについて、「特にオートバイのシーンは、僕の能力をはるかに超えているから、専門家にやらせた方がいいということになったし、1作目でビルを登るシーンも、一部は僕がやっていたけれど、それ以外はロッククライミングのチャンピオンがやっていた」と正直に打ち明ける。そして、「ジェイソン・ボーンは、すべてにおいてエキスパートだけれど、僕はそうじゃない。だから、危険なところは専門家にお任せして(笑い)、それで僕の演技とかみ合ってジェイソン・ボーンに見えればいいわけで、僕が必死にやったところでエキスパートにはかなわないから」と“餅屋は餅屋”の精神でスタントをこなした人々をきちんと立てるところに、デイモンさんの謙虚さがのぞく。

 自身で脚本を書き、米アカデミー賞脚本賞を受賞した喜びを親友のベン・アフレックさんと分かち合った「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(1997年)で、「まず人生が変わり」、ボーン・シリーズの成功が、「スタジオ側の出演者リストに載るようになり、やりたい監督と仕事ができる扉が開かれるなど、いろんなことを可能にしてくれた」と感謝するデイモンさん。シリーズの新たな幕開けとなる今作について、「『ジェイソン・ボーン』というタイトルは付いているが、それは彼の本名ではない。一度アイデンティティーを失った男が、そのまま生きていくことができるのか。その内面的な戦いがテーマになっている」と語った。映画は7日から全国で公開。

 <プロフィル>

 1970年生まれ、米マサチューセッツ州ボストン出身。「ミスティック・ピザ」(88年)で映画デビュー。自ら脚本を書き、主演した「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(97年)で、米アカデミー賞脚本賞を受賞。その後、「プライベート・ライアン」(98年)、「リプリー」(99年)、「オーシャンズ11」(2001年)、“ボーン・シリーズ”3作(02年、04年、07年)などに出演。「インビクタス/負けざる者たち」(09年)で、米アカデミー賞助演男優賞候補に、「オデッセイ」(15年)では、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」に続き、アカデミー賞主演男優賞候補になった。チャン・イーモウ監督による「ザ・グレート・ウォール」が17年2月に米国で公開予定。

 (取材・文/りんたいこ)

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