お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建さんと児嶋一哉さんが日本語吹き替え版で声優を務める米劇場版アニメ「コウノトリ大作戦!」(ダグ・スウィートランド監督)が公開中だ。今作は「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」という寓話(ぐうわ)を基に、赤ちゃんの配達を禁止したコウノトリ宅配便社のエースである主人公が、手違いから誕生した赤ちゃんを会社に内緒で人間の元へ届ける決心をしたことから巻き起こる騒動を描いている。日本語吹き替え版で主人公ジュニアの声優を務めた渡部さんと、社長のスパイで告げ口屋のハト、トーディーの声を担当した児嶋さんに話を聞いた。
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普段はコンビとして互いに聞き慣れている声だが、アニメの吹き替えとして聞く相方の声の印象について、「児嶋、頑張っているんだろうなという気はしました(笑い)」と渡部さんが冗談ぽく言うと、児嶋さんは「(キャラクターの声が)相方とか自分の声ってなんか変な感じはしますけど、そんなに気にならなかったです」と意外にしっくりきたという。
コンビそろって声優として共演となったが、「そういえば(声優での共演は)ないですね」と渡部さんはしみじみと言い、「こんな2人ですみません……という感じもありますが、コンビでこれだけの作品の声優ができるというのは、こんなありがたいことはないです。幸せ半分、我々で大丈夫ですかというのが半分みたいな感じです」と喜びつつも率直な気持ちを語る。さらに、映画にはコンビの“お約束”でもある名前を間違えるという持ちネタのようなシーンもあることから、「最初、本当になんで僕らなんだろうなと思って台本を見たら、あのくだりがあったので、なるほどこういうことかと(笑い)」と渡部さんは、ちゃめっ気たっぷりに語る。
一方、「こんな話が来たんだと思って純粋にうれしかった」と笑顔を見せる児嶋さんだったが、「その後はすごく難しいんだろうなとか、ちょっとプレッシャー感じたりしました」と打ち明ける。また児嶋さんが声を務めるトーディーが児嶋さんと顔が似ていることも話題だが、「たまたまなんですけど、目のトローンとしたところとか、すごく似ているなと自分でも思いました。うれしいです」と喜ぶ。
2人とも今回が声優初挑戦となったが、ともに「難しかった」と口をそろえる。「ここの時間がきたらこのせりふを言うということで目いっぱいなんですけれど、当然お芝居もしなければならない。プラス、声だけなので、普段よりも(せりふに)すごく感情を入れないといけなくて、そういうのが全部、難しかったです」と渡部さんが振り返ると、「自分の“間”で言えるものではなく決まっているものなので、(せりふをキャラクターの)口(の動き)に合わせるのが、まあ難しい」と児嶋さんも同意する。
続けて、「僕は途中で歌うシーンもあるんですけど、普段なかなか仕事でも歌うことはないのに、歌ってその間にまたせりふを言ったりとかに苦労しました」と児嶋さんは慣れない歌唱も大変だったと話すも、「一生懸命歌っているところは難しかったんですけれど、結構練習して頑張ったので見ていただきたい」と自信をのぞかせる。
それぞれ声を演じたキャラクターの注目ポイントは、「本当に仕事、仕事、出世、出世のジュニアが、そんなことより大事なことがあると気付き始めて、どんどん赤ちゃんの可愛さに翻弄(ほんろう)されていくんですけど、そのあたりが見ていて可愛いので注目してほしいです」と渡部さんはアピール。
トーディー役の児嶋さんが、「ジュニアとの絡みで、『やあムーディー』って言われて『トーディーだよ!』と言っているところ。やっぱりそこです」と自身の持ちネタを再現したかのようなシーンに言及すると、「だいぶ前半に見どころ終わっちゃうけど(笑い)」と渡部さんからツッコミが入る。それでも「そこさえ見ていただければ大体それで伝わるんで(笑い)」と児嶋さんは切り返した。
主人公のジュニアが働くコウノトリ宅配便社は、何があっても荷物は必ず届けるというモットーがあるが、2人が仕事をする際のこだわりは……。「コンビでやるときは児嶋さんはいじればいじるほど味が出るので、優しい気持ちになっちゃうと普通に終わっちゃうから、もう本当に心を鬼にして追い込むというか。やっぱりスベってからが持ち味が出るというか……」と渡部さんが切り出すと、「そんなことはない!」と児嶋さんがすかさずツッコミを入れる。
しかし、「なるべくちゃんとスベりやすい方向に導いてあげるというか……まあ勝手にスベってもくれるんですけどね(笑い)」と渡部さんが続けると、「いきなりウケるときもあります」と児嶋さんが合いの手を入れるが、それでも「スベってからの何か、『おいっ!』とかがあるので、それを引き出すためにルールとして、優しくなりすぎないと」と渡部さんは何事もなかったかのように語る。
渡部さんにいじられて持ち味を発揮する(?)児嶋さんは、「昔は全然キャラがないといわれていた2人ですけど、最近は個々のキャラクターもちょっとずつ認知していただけるようになった」と前置きし、「キャラに乗ったことを言ったほうが面白いじゃないですか。だから僕はいじられたりしているけれど負けないように全力で返すということぐらいです」と児嶋さんは神妙な面持ちで語る。
児嶋さんの発言にもあったように個々の活動も増えてきているが、「スタッフの意図を100%反映するというか、個性を出さないこと。なるべく制作の人が何を伝えたいかを第一優先にというのはあります」と個人活動に当たっての心構えについて渡部さんは語る。その理由について、「個人的には僕は面白くできないんです(笑い)」と自虐的に話しつつも、「だったら余計なことをせずに、ちゃんと伝えるとか、こういう進行をするとかをまず第一に心がけて、それでちょっと余裕があったら個性を出すぐらいにしないと」と真意を説明する。
一方、児嶋さんは「あまり器用じゃないので、これを言ったら番組の流れが壊れちゃうかなとかを考えなきゃいけないんですけど、ある程度、思ったことは多少言ってもいいかなと思って最近は言うようにしています」と自身のキャラクターに沿ったノリを大事にしていると言い、「わざと変なふうにするつもりはないですけど、それはそれで面白くなったりもする。あまり小器用にやろうとするのはやめました」と心境の変化を明かす。
そんな2人は次なる“初挑戦”について「始球式の仕事を前に一回やらせていただいたのですが、高校野球が好きなので甲子園でやってみたいです。阪神戦の始球式を来シーズンぐらいできたらなというのはあります」と渡部さんが希望を口にすると、「2人でドラマに出たりとか一度もないのでやってみたい」と児嶋さんはドラマでの共演を熱望する。
今作の見どころについては、「ハラハラドキドキがあって、笑いがあってキャラクターが本当に可愛くて、その中でも赤ちゃんがぶっちぎりに可愛い。見終わったあとほっこりするというか、赤ちゃんの可愛さに満たされるという作品だなと思います」と渡部さんは絶賛し、児嶋さんは「家族でも恋人でもみんなで見ても、一人で見てもいい。全員に見てほしいです!」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。
<渡部建さんのプロフィル>
1972年9月23日生まれ、東京都出身。お笑いコンビ「アンジャッシュ」のツッコミ担当。芸人としてだけでなく、グルメリポーターとしても活躍。夜景鑑賞士検定3級、日本さかな検定3級、ダイエット検定2級、高校野球検定など多くの資格を取得している。2006年には舞台劇「恋愛戯曲」に出演、07年にはドラマ「働きマン」(日本テレビ系)にも出演。
<児嶋一哉さんのプロフィル>
1972年7月16日生まれ、東京都出身。2008年に出演した映画「トウキョウソナタ」で演技力を評価され、以降はバラエティー番組のみならず、俳優として数多くのドラマや映画にも出演。主な出演作に、NHK大河ドラマ「龍馬伝」、「救命病棟24時 第5シリーズ」(フジテレビ系)、「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS系)、映画「映画 謎解きはディナーのあとで」(13年)、「HERO」(15年)、「闇金ウシジマくん Part3」(16年)、「少女」(16年)など。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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