モデルで歌手の三戸なつめさんが、中田ヤスタカさんプロデュースによるファーストアルバム「なつめろ」を26日にリリースした。デビュー曲「前髪切りすぎた」(2015年4月発売)や「8ビットボーイ」(映画「ピクセル」日本版主題歌)、本人出演の「NEW ベビースター」CMソング「ハナビラ」などのシングル曲のほか、新録した曲も収録されており、歌手デビューからの2年間を総括するようなラインアップになっている。「アーティストとしての実力を上げていきたい」と音楽活動へ意気込みを見せる三戸さんに、アルバムの制作秘話やトレードマークである「短い前髪」の原点、意外な生活ぶりなどについて聞いた。
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――青文字(原宿)系モデルとして活動する三戸さんは、私服も東京・渋谷や原宿の古着屋、原宿のファッションビル「ラフォーレ」などで購入しているそうで、地元の関西にいたころは服飾専門学校に通っていたそうですね。
ファッションがすごく好きで「洋服を作れるようになりたい」と思っていて、子供服が好きだったのでキッズ学科というところにいました。同じころに(読者モデルとして)街角スナップみたいなのに声をかけていただいて、そこからスナップだけじゃなくていろんな企画に呼んでもらえるようになって。そのスナップを撮ってもらった大阪の雑誌に、私が読者として見ていたころから今の事務所(アソビシステム)の先輩の武智志穂さんがずっと載っていて、志穂さんが上京してから結構ドラマやCMに出ているのを見るようになって、「読者モデルでもこうやって活動ができるんだ」というのを知ってから、私も目指したいと思うようになりました。
――三戸さんといえば、デビュー曲「前髪切りすぎた」にもあるように短い前髪がトレードマークで、今もテレビやライブ前にご自身でカットするときもあるそうですね。実は中学時代からこのヘアスタイルだったそうですが、なぜこの髪形に?
学校で同じ髪形の人が多くて、人と違うことをしたいなと思って自分で前髪を切ったのが最初。ちょっと切りすぎちゃったなとは思ったんですけど、調整していくうちに「イケてる。このまま学校行こう」みたいな(笑い)。普通のオン眉(オンザ眉毛)じゃなくて、ちょっと行きすぎてるというか、若干、違和感が残るくらいの長さにしています。歌手活動をすることになって、(中田)ヤスタカさんに曲を作ってもらうことになったとき、一度ご飯を一緒に食べに行ったんですけれど、そのときに「コイツ、前髪切りすぎてるな」って(中田さんが)思ったのかも(笑い)。何を言われても(この前髪スタイルを)変えてこなかったので、最初の自己紹介の曲としてはすごくいいなって思いました。
――歌手活動を始める直接のきっかけは、今の事務所の社長さんからの提案だったそうですが、そもそもの動機は?
上京してからもずっと読者モデルをやっていたんですけど、「年をとったらこの雑誌に呼んでもらえるんだろうか」みたいな危機感があって(笑い)、何か自分の強みみたいなものがないとダメだなと思ってたんです。女優さんだったり、絵を描くことも好きなのでイラストレーターとか、もちろん歌手もそのときに考えていて。小さいころは「SPEED」と「モーニング娘。」が大好きで、小学校の朝礼台とかでよく友達と踊っていたし、歌手とか踊れる人への憧れがそのときからメチャメチャあったんです。
――プロデューサーの中田ヤスタカさんと今作の曲作りに関して、話し合いはあったんですか。
一切ないです。たまにご飯とかは行くんですけど……。結構、会話の中で歌詞を考えるというのはおっしゃっていたので、「今、しゃべってる(話の内容の)中で使われたりするのかな」って勝手にドキドキしたり。いや、(実際に歌詞に)なったことはないんですけれど(笑い)。結構、言ってないのに自分的に刺さるフレーズが今までも何回もあって、(「新生活」や「旅立ち」をテーマにしたアルバム4曲目の)「I’ll do my best」という曲のサビに「楽しい思い出に 頼らなくてもいい日は来る……」というフレーズがあるんですけれど、まさに上京したとき、寂しいけど、それを寂しいと思わないというか、「友達や家族に頼らなくても頑張んなきゃ」と思っていたんですよ。それをまさに当てられた感じがありました。
――8曲目のタイトルチューン「なつめろ」は、海辺の恋の情景を連想させる1曲ですね。
「なつめろ」=「懐かしいメロディー」だと思うんですけど、「思い出すの いつもこのタイミングで……」という部分で曲調が変わるんです。そこが「今」で、ここ(Aメロなど)が、自分(主人公)が青春していたときの甘酸っぱい思い出で、そういうのを「なつめろ」と掛けてるのかなって。「自分も高校生のときに彼氏と一緒に自転車に乗って帰ったな」とかって思い出しながら歌っていました。いい思い出です。
――10曲目「ねむねむGO」に「昼まで 目を閉じれば……」という歌詞がありますが、実生活はどうですか。
合ってますね。「昼まで寝ます」みたいな話は(プロデューサーの中田さんに)した気がします。家に帰ったらまずソファーでダラダラして、夜中の12時を過ぎたらお風呂に入って寝る、みたいな感じ。1日休みだと出かけないですね。前の日におやつとマンガを買い込んで、次の日に備える、みたいな。普段から結構、おやつしか食べなくて……。ご飯を作るのが面倒くさくてお菓子を食べちゃう、という感じで、誰かにご飯に連れて行ってもらわないと、ちゃんとしたご飯を食べないんです。塩っからいスナック菓子が好きで。上京してからずっと(おやつ生活)かも。
――驚きの食生活ですね(笑い)。一方、アルバムのラスト曲「風船と針」は他の曲とはまた違った雰囲気で、主人公が悩みを吐露しているような内容ですが、ご自身の心境とリンクする部分はありますか。
ありますね。テレビとかに出れば出るほど恐縮しちゃって、「やっていいのかな」「言っていいのかな」とか、デビューしたときも「こんなにたくさんの人がいろいろとやってくれているのに、コケたらどうしよう」とか思ったり、いろいろ考えていた時期がすごくあって。責任が増えれば増えるほど「いい子でいなきゃ」みたいなのがあって、今も考えるときはあるんですけれど、「風船と針」の歌詞は「それを発散していいんだよ」って言ってくれている感じがして、グッときました。今も守らないといけないところはいっぱいあると思うんですけど、そこをいい感じのスレスレのところで、自分の表現ができていければいいなって思いますね。
<プロフィル>
1990年2月20日生まれ、奈良県出身。2010年に関西で読者モデルとしての活動を開始し、13年に上京。15年4月にシングル「前髪切りすぎた」で歌手デビュー。三戸さんが初めてハマッたポップカルチャーは、小学校1年生のころから読んでいた少女マンガ雑誌「ちゃお」(小学館)と「りぼん」(集英社)。「沖縄のアクターズスクールを舞台にした『はじけてB.B.』というマンガが(「ちゃお」に)あったんです。『DA PUMP』や、まだデビュー前の山田優ちゃんが出ていて、それを見て、自分もアクターズスクールに入りたいって考えてました。そのあとに『SPEED』とかが出てきて、音楽的にめちゃハマッた、みたいな感じです」と話した。
(インタビュー・文・撮影:水白京)