カプコンの看板ゲーム「モンスターハンター(モンハン)」シリーズの最新作「モンスターハンター:ワールド」が2018年初頭に発売される。ひときわ話題になったのは、9年ぶりとなった据え置き機での新作、しかも7年ぶりにソニーのゲーム機向けに発売されることだった。大ヒットシリーズが迎えた大きな転換点と狙いを探った。
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新作「モンスターハンター:ワールド」の最大の特徴は、海外のゲームでは主流となっている、広大な世界を境目なく自由に動き回れる「オープンワールド」に挑んだことだ。ゲーム内の世界を1枚のマップで再現する完全な「オープンワールド」ではないため、カプコンはあえて「オープンワールド」とは言わず、「シームレス」と表現している。
しかし従来シリーズでは、複数のエリアで構成されており、エリア間の移動に読み込み時間が発生したが、今回は切れ目のないエリアで快適なプレーが楽しめる。多様な地形と生態系が息づく世界で、その全てを利用してモンスターを狩るという内容、そして「ワールド」というタイトルからも、オープンワールドを意識していると考えられる。
スマホゲームが主流となった日本のゲーム市場のガラパゴス化が進む中、カプコンは以前から世界市場を意識していたメーカーでもある。これまでも説明会などで、世界的なヒットを目指していることを明言していた。PS4だけでなく、欧米では一定の支持を集めるXboxONE版やPC版も出すことから、今回の新作の開発は、経営方針と合致している。
ただしその道は平坦ではない。「オープンワールド」のゲームは、膨大なデータを制作するため、開発費も、効率化のノウハウも要求される。そのため日本で開発された「オープンワールド」と言えるゲームでは数えるほどしかなく、しかも欧米と比べると見劣りするのが実情だ。「モンハン」は日本での知名度は抜群で、国内での一定のヒットは約束されているだけに、欧米の評価は本作のカギとなる。
「モンスターハンター」シリーズで、最も売れたのは10年に発売された「モンスターハンターポータブル 3rd」(PSP)の490万本。15年に発売された「モンスターハンタークロス」(3DS)も420万本を売った。まさに“ドル箱タイトル”だが、そのため革新的なことに挑戦するよりもポイントを外さない開発が要求された。ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するKADOKAWAの浜村弘一さんが、数年前に「モンスターハンター」シリーズの今後の課題として「ファンが飽きるのを防ぐために、新要素をどう加えていくか」と指摘していたが、大ヒットゲームの宿命でもある「ユーザーの飽き」との戦いだったといえる。
カプコン側も、新作を出すたびにさまざまな要素を追加したが、性能に制約のある現行の3DSでやり尽くした感があるのは多くの業界関係者も指摘していた。そこに出たのが、据え置き機での開発が発表された今回の新作となる。今回公開された映像からは、美しい映像はもちろん、モンスターから姿を隠してやり過ごす偽装、フックのようなものを使った派手なジャンプなど、従来のシリーズになかったような要素が盛り込まれている。ゲーム機の性能がアップしたことで、遊びの幅が広がったことが容易に推測される。
今回の新作「ワールド」が国内でヒットしても、PSPや3DS時代のレベルの売上本数に達するのは容易ではないが、7年間PSハードで出ていない枯渇感、7月に「ドラゴンクエスト11」が発売されて市場のパイが広がった後に出せるのは大きい。しかし何より欲しいのは、巨大な欧米市場でのヒットだろう。「ワールド」が成功すれば、同社の経営戦略もより“ワールド”を見据えたものへと大きく変わることになりそうだ。
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