ザ・リフレクション:アメコミを「そのままアニメに」 長濱監督が語る映像表現 スタン・リーへの思い

テレビアニメ「ザ・リフレクション」のキービジュアル(C)スタン・リー,長濱博史/THE REFLECTION製作委員会
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テレビアニメ「ザ・リフレクション」のキービジュアル(C)スタン・リー,長濱博史/THE REFLECTION製作委員会

 アメコミ界の巨匠のスタン・リーさんが制作総指揮を務めるテレビアニメ「THE REFLECTION(ザ・リフレクション)」が22日、NHK総合テレビでスタートする。ポール・マッカートニーさんやロックバンド「イエス」をプロデュースしてきたトレヴァー・ホーンさんが音楽を手がけ、アニメ「蟲師」「惡の華」などで知られる長濱博史さんが監督を務めるなど豪華スタッフが集結。PVが既に公開され、アメコミのコマがそのまま動き出したような独特の映像表現も放送前から話題になっている。長濱監督に映像表現や制作の裏側を聞いた。

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 ◇スタン・リーには「ガッツリやっていただけた」

 「ザ・リフレクション」は、多くの人々が命を落とした大災害・リフレクションが起きた世界を舞台に、正体不明のマスクの男・エクスオン、メタルスーツを身にまとったアイガイらの活躍を描く。「ひぐらしのなく頃に」シリーズなどのスタジオディーンがアニメを制作する。

 「ザ・リフレクション」の構想は約20年にも及ぶという。長濱監督は「“スタンのユニバース”みたいな作品をやりたい!と20年くらい前から考えていた。スタンの作品で、たくさんのヒーローが登場するアニメをちゃんとやりたかった」と話す。

 長濱さんと、大ファンだったリーさんの出会いは約10年前。「スタンと会って、ヒーローを作ることになった。その時はどういうマーケットでやるかを考えていたが、うまくいかなかった。ちょっと邪念があったんですよ。何でもいいから形にしたかった。スタンはその時、年齢的にも80代ということもあって、時間がない……と焦っていた」と振り返る。

 企画はいったん休止したが「4、5年前にスタンから『まだやる気はあるか?』と言ってもらえ」て再始動した。ただ「前の企画はベースにはありません。キャラクターのデザインはちょっと残っているところもあります」と「ザ・リフレクション」を新たに作ることになった。

 ビッグネームが制作総指揮として参加すると言うと、最初にちょっとしたアイデアを出すだけ……ということもあるが、「ザ・リフレクション」は違う。「ガッツリやっていただけました。多いときは年に4回くらいアメリカに行っていた。スタンとアイデアを出し合って、スタンがあらすじを書いてくれた。最初、スタンは『忙しいから、ライターを頼むか……』とも言っていたけど『やっぱり、やるわ』と言ってもらえた。敵の名前もスタンが付けている」と語る。

 ◇“和”を感じる映像表現も…

 長濱監督がアメコミに興味を持ったのは小学生時代までさかのぼる。「小4の時、小野耕世さんが翻訳した光文社のマーベルコミックスの『スパイダーマン』の4巻を買った。ボロボロになるまで読みました。当時、アメコミはあんまり売っていなかった。専門学校入学のために上京して、いっぱい売っているじゃん!となり、のめり込んでいった」と振り返る。アメコミの影響は「ずっとあります」といい「『蟲師』『惡の華』も影響されています。レイアウト、省略するところなどアメコミをずーっと意識しています」と話す。

 長濱監督はこれまで「惡の華」で、撮影した映像をアニメにするロトスコープという手法で独特の映像を作り出すなどアニメファンを驚かせてきた。「ザ・リフレクション」も特殊なアニメだ。独特の色づかいのアメコミのコマがそのまま動き出したかのような表現で、試写会に参加した関係者からも「こんなアニメは見たことがない!」という声も聞かれた。

 「何だかんだ不器用なんですよ。例えば『ペットボトルを作れ!』と言われたら、何かを参考にする人が多いかもしれないけど、オレはできない。『ペットボトルって何ですか?』というところから始める。だから、オレなりのペットボトルができるんですよね。『蟲師』『惡の華』にしても、これをアニメ化すると、普通のアニメになりますよ?と考えていた」と、作品との向き合い方を語る。

 今作については「こうなったのは、自分が見たいからですね。アメコミのすばらしいアートスタイルを何でそのままアニメーションにしないんだろう?という気持ちがあった。全く見たことが無いスーパーヒーローを作るのではなく、これがアメリカンコミックですよ!というものを見せたかった」と明かす。

 映像が切り絵や浮世絵のようにも見え、どこか“和”を感じるところもある。しかし「和は意識していないんですよ」という。「自分が意識しなかったことを言われたり、意図したことではないことが誰かの心に刺さったりするのがうれしいですね。突き詰めていくと、アメコミは浮世絵や切り絵に近いのかもしれない。世界中にあるアートスタイルは突き詰めていくとつながっている。根底に流れているものが一緒なのかもしれない。突き詰めた結果、本質が見えてきたのかもしれない」と話す。

 ◇12話で表現できるのは全体の3%くらい

 長濱監督には「ザ・リフレクション」がNHKで放送されることについても思いがあった。「NHKでやれるのは特別。子供の頃、NHKで『キャプテン・フューチャー』というアニメが始まった時、すごくゾワゾワした。『これは、オレが好きなものだ……』と感じたんですよね。NHKで放送が決まった時、『ザ・リフレクション』は、今の『キャプテン・フューチャー』になってほしい、オレが子供の時に受けたような衝撃を伝えられればと感じた」と語る。

 「ザ・リフレクション」は全12話で放送される。しかし、「謎がすべて解明されるわけではない。この中で起こる事件は解決しますが、12話で表現できるのは全体の3%くらい」という。残り97%は……と気になるところ。長濱監督は「ずっと作りたいですね」と意欲を見せる。壮大な物語を垣間見られる「ザ・リフレクション」、そして続いていくであろうプロジェクトの今後の展開にも期待したい。

 「ザ・リフレクション」はNHK総合で22日から毎週土曜午後11時に放送。

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