名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
2018年に創刊50周年を迎えた小学館のマンガ誌「ビッグコミック」の関係者に名作が生まれた裏側や同誌について聞く連載企画「ビッグに聞く」。第3回は同誌で20年以上にわたって「のたり松太郎」を連載し、現在は「ひねもすのたり日記」を連載中のちばてつやさんが登場。「のたり松太郎」が長寿作になった裏側や「ひねもすのたり日記」について聞いた。
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「ビッグコミック」が誕生したのは1968年。ちばさんが「あしたのジョー」の連載を始めたのは67年で、当時を「あのころは体が疲れていた。マンガ家になって10年ちょっとたって、自分のエネルギーがどれだけなのか分かっていなくて、気持ちも体も弱っていた時でした。ジョー(矢吹丈)が(パンチを)打っては、吐くシーンを繰り返し描いていて、キャラクターの気持ちになりながら描くから、精神的にも疲れ果ててね」と振り返る。
ちばさんは「ビッグコミック」の誕生に刺激を受けた。「それまではストーリーのある大人向けのマンガ誌はなかった。ジャンルが広がったことがうれしかった。マンガ家は少年の心をなくしたら、使命は終わりと言われていた時代です。私たちの表現の舞台も広がるじゃないですか。だからうれしかった。我々の年代のマンガ家は、誰もが『ビッグコミック』に描いてみたい!と思ったんじゃないですかね」と話す。
社会現象にもなった「あしたのジョー」の連載は73年に終わり、同年、「ビッグコミック」で「のたり松太郎」の連載が始まった。98年に連載が終了。30年以上続いた長寿作だが、ちばさんはそもそも連載にすることを考えていなかったという。
「『あしたのジョー』を描いているころやその前から小学館の編集の方がよく遊びに来ていてね。連載を頼まれたけど、いっぱいいっぱいだから、パンクして、いろいろ迷惑をおかけする……とお断りしていた。『ジョー』が終わったときにへとへとだった。ラストシーンは苦しんで、やっと描いた。私も燃え尽きたんです。3、4週間休みをもらった。ホッとして2、3日はボーッとしていましたよ。食欲もなくてね。ただ、若かったので、だんだん元気が出てきてね。小学館に描くのは今しかないかな……となった。『2、3回どうでしょう?』って言って、読み切りのつもり描いた」というのが「のたり松太郎」だった。
さらに「2回くらいを描いたとき、『今までにないキャラクターだし、もったいないから、続けよう』となった。2回が3回になり、担当編集が格闘技のいろいろな資料を持ってきて、私を煽る。その中に相撲があった。私は両国(東京都墨田区)に住んでいたこともあるので、相撲は身近だった。こんな男を封建的な相撲の世界に入れたら、どんな化学変化が起こるのか? そういうことで長期連載になってしまったのですが、松太郎が一人前の力士、十両になったら、終わりにしようとしていた。十両になって話も一区切りついたので『完』と描いたんだけど、雑誌を見たら『続く』になっていてね。私が優柔不断なことも原因だけど、なんだかんだ延々と続くことになりました」と明かす。
「のたり松太郎」の坂口松太郎は、破天荒なキャラクターで人気となったが、ちばさんは「私が描くキャラクターは私と対極にある」と話す。「私は子供のころ、おとなしかった。学校行っても、いるかいないか分からない子供だった。どこかそれが嫌だったんだろうね。こんなマイペースで自分が思うままな生き方をしてみたいな!というのを描いた。言いたいことを言えなくて我慢している人も多いので、読者のストレス解消にもなったのかもしれませんね」という思いがあるという。
「あんなに長く続くとは思っていなかった」というが、「担当の編集さんが、一生懸命おだてて、励ましてくれたことも大きいが、実はキャラクターがどんどん好きになり、描いていて楽しかった。実在する人間のように親しみを感じたり、今、あいつはどうしているかな?などと考えたり、一緒に生活しているような感じでした」と振り返る。
「ビッグコミック」で連載中の「ひねもすのたり日記」は、ちばさんの日常や満州で過ごした幼少時代などが描かれている。「私はいつもそうなんだけど、連載中、次は何を描くかを考えたことがない。今は『ひねもす』のことで頭がいっぱい。ただ、ふと世界を見ると、地球上、どこかでいつも戦争が起きている。悲しいことだけど、昔、戦争に巻き込まれていた時代があったということを忘れてはいけないという気持ちもあってね。思い出すのはつらいんだけど、時々、戦時中のエピソードも織り交ぜながら、描いています」と語る。
今後について、「今、自分に描き残したことがあるのかな? まだ描いていないキャラクターが何人かひっそり隠れているような気もするんだよね。それが頭の中で浮かんだら描いてみたい」と話すちばさん。79歳の“ビッグ”はまだまだ意欲的だ。
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