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阿部寛:ロングインタビュー(下) 松嶋菜々子は「心で演技する人」 10年後の展望も語る

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映画「祈りの幕が下りる時」に主演した阿部寛さん

 阿部寛さんが主演を務めてきた「新参者」シリーズの最新作にして完結作「祈りの幕が下りる時」(福澤克雄監督)が、1月27日に封切られる。メガホンをとったのは、昨年好評を博したTBS系連続ドラマ「陸王」を演出した福澤克雄さんだ。阿部さん主演の連続ドラマ「下町ロケット」(15年、TBS系)も福澤さんが手掛けていることから、「僕は勝手に信頼関係ができていると思っている(笑い)」と話す阿部さんが、福澤監督との撮影を振り返りつつ、共演者について語った。

 ◇集中力を要求される現場

 「新参者」シリーズは、人気作家、東野圭吾さんの「加賀恭一郎シリーズ」(講談社)を原作に、これまで、2010年の連続ドラマと2本のスペシャルドラマ、そして1本の劇映画が作られてきた。シリーズ完結作となる今作では、東京葛飾区で起きた殺人事件をきっかけに、これまで謎だった加賀の母の失踪の理由が明らかになっていく。

 阿部さんは福澤監督に、「とにかく明るいし、面白いし、力はあるし、半面、誰でも緊張させられるという面もある」と全幅の信頼を寄せる。そして今回、「新参者」シリーズ初参加だからこそ、「“新しい風”をたくさん吹き込んでくれた」と話す。その一つが、加賀に、原作にはないせりふを言わせたり、自分の迷いや自分のことを卑下する言葉を吐かせたりした点だ。そこには、「犯人にたどり着くまでの加賀の葛藤というか、そういう人間らしい部分をあえて見せる」という福澤監督の狙いがあったが、それは阿部さんにとって「まったく新しいことでした」と明かす。

 映像の作り方についても阿部さんは、ある場面が、野村芳太郎監督作「砂の器」(1974年)を彷彿(ほうふつ)とさせると指摘した上で、そこから事件の真相が明かされるクライマックスにつなげていく福澤監督の手腕を、「本当に素晴らしい」と賛辞を惜しまない。ちなみに福澤監督は過去に連続ドラマ「砂の器」(2004年)を手掛けており、福澤監督自身、野村監督のオリジナルの大ファンだという。

 さらに阿部さんが挙げたのは、捜査会議の場面。そもそも福澤監督の現場は、「その都度その都度、明るいところ、重いところで空気の作り方が全然違ってくるんです。だから常に集中力を要求される」そうで、その捜査会議の撮影でも、捜査の指揮をとる大林刑事役の春風亭昇太さんのしゃべりの速度を「もっと速く、もっと速く」とテンポを上げさせ、そうやって追い込んでいくことで、阿部さんいわく「あたかも事件のせいで追い込まれていくように見える」演出をしていったという。

 ◇松嶋さんの「計算のない芝居」と「俯瞰で見ていた」溝端さん

 事件の鍵を握る女性、浅居博美を演じるのは女優の松嶋菜々子さんだ。松嶋さんと初共演の阿部さんは、当初、松嶋さんに対して、「家政婦のミタ」(11年)の影響から、クールな印象を抱いていた。しかし実際の松嶋さんは、「大人で、気取りがなくて、力が抜けていて、何でもしゃべってくださる」と、あまりの気さくさに驚いたという。そのうえ、「芝居となると、あんなにきれいな人が、涙も鼻水もためらいなく流すんです。そこに“計算”はなく、そのままの感情、心でおやりになる人。本当にすてきな女優さん。というか、人間としてすてきな方です」と絶賛した。

 一方、シリーズ開始以来、溝端淳平さんが演じるのは、加賀のいとこで捜査1課の刑事、松宮脩平だ。今回の松宮は加賀に対して、敬語ではなく、いわゆる“タメ語”を使っている。阿部さんによると、もともとの台本は敬語だったそうだが、溝端さんが福澤監督に、「(加賀と松宮は)いとこ同士だから、タメ語にしたいと提案した」という。

 そんな溝端さんを阿部さんは、「今、若い俳優さんたちがたくさん出ているから、いろいろ苦労もあると思う」とおもんぱかったった上で、「一つ一つのシーンに対してこだわって、自分の役だけではない、作品全体を俯瞰(ふかん)で見ることを今回やっていましたね」と、25歳下の後輩の成長ぶりに目を細める。

 ◇10年後の自分、そして今年の抱負

 これまで、さまざまな役を演じてきた阿部さん。それこそ、“加賀恭一郎”に出会う前は、「エキセントリックな役ばかりだった」と苦笑する。しかし、加賀という役は、「いつの間にか僕の背骨になっていた。心でお芝居したり、目だけで表現したりすることに最初は苦手意識がありましたが、その軸ができることによって自信になっていったんです。それで、『下町ロケット』もやりやすかったと思うし、いろんな成長が、もしかしたらあったのかもしれない」と、加賀役が自身にもたらしたものを推測する。

 もともと、10年先の自分を「よく考える」そうだが、その10年後も、「男優ですから、白髪になっても、髪が薄くなってもいい。年相応に見えて、その年齢の役がちゃんとできる年の取り方をしていけたら」と気負う気配はない。そんな阿部さんにとって今作は、18年の幕開けとなる作品であり、その後も、「空海-KU-KAI-」「北の桜守」「のみとり侍」と出演作が続く。「まずはこの作品。自分の中で、すごくいい出だしが切れたと思うので、この作品に恥じないよう、いいお仕事をしていけたらいいなと思います」と今年の抱負を語る。

 そして「今回の作品でこのシリーズは完結しますけど、8年間、この作品を愛してくださった皆さんにきっちりと納めたいと思ってやった作品です。だからこそ福澤監督という(シリーズを)客観視できる方に入っていただいて作りました。自信作に仕上がったと思います。ぜひ、劇場に見に来てください」と締めくくった。映画は27日から全国で公開。

 <プロフィル>

 あべ・ひろし 1964年6月22日生まれ、神奈川県出身。モデルを経て、87年に映画デビュー。主な映画作品に「トリック劇場版」シリーズ(2002、06、10、14年)、「歩いても 歩いても」(08年)、「麒麟の翼~劇場版・新参者~」(11年)、「テルマエ・ロマエ」シリーズ(12、14年)、「柘榴坂の仇討」(14年)、「エヴェレスト 神々の山嶺」「海よりもまだ深く」(共に16年)、「恋妻家宮本」(17年)など。公開待機作に「空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎」「北の桜守」「のみとり侍」がある。

 (取材・文:りんたいこ)

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