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岡田麿里:初監督作で描きたかったこととは… “約束”に込めた思いも

アニメ 映画
劇場版アニメ「さよならの朝に約束の花をかざろう」の一場面 (C)PROJECT MAQUIA

 アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」などの脚本を手がけた岡田麿里さんが監督に初挑戦した劇場版アニメ「さよならの朝に約束の花をかざろう」が24日に公開される。監督の岡田さんに、作品への思いを聞いた。

 ◇脚本だけでは到達できないところを目指した

 「さよならの朝に約束の花をかざろう」は、10代半ばで外見の成長が止まり、数百年の寿命を持つイオルフの一族の少女・マキアが主人公。“別れの一族”と呼ばれるイオルフの民は、人里離れた土地でヒビオルという布に日々の出来事を織り込みながら静かに暮らしていた。両親がいないマキアは、仲間と穏やかな日々を過ごしながらも、どこかで孤独を感じていた。そんなある日、イオルフの長寿の血を求め、メザーテの軍が攻め込んでくる。なんとか逃げ出したものの仲間も帰る場所も失ったマキアは、親を亡くしたばかりの赤ん坊と出会い、エリアルと名付け育てていく……というストーリー。

 これまで作品の脚本を担当することが多かった岡田さんは、初監督をやる上で「脚本だけでは到達できないところに挑戦したかった」と語る。「アニメ制作では、脚本家は一番最初に作業があって、その後はスタッフにお任せする形になるんです。それもあって、アニメの制作は共同作業ですし、みんなと一緒に最後まで作品に付き合っていくということをすごくやってみたかったんです」と話す。

 脚本家として作品に参加する場合は、「キャラクターの表情やせりふ、仕草、景色の色とか、そうしたところまで想定した脚本って、やっぱり限界がある」という。「でも、監督として絵コンテなどの話し合いや作業から参加することができれば、いつもより脚本も突っ込んだものにできるのではないかと」と思いを語った。

 ただ、監督として自分の思いを伝えることには苦労したという。「伝えるときにどこを省略していいか分からなくて、副監督の篠原(俊哉)さんには『そこまで言っても作画さんには伝わらないよ』とよく言われていました。本当に素人考えだったこともすごくいっぱいありました。今回、劇場版ということもあって、温かさや重厚感がある“黒”を多めに映像に入れたいと思っていたんです。でも実際にやってみたら、黒ってすごくおっかないみたいで、やらないだけの理由があるんだなって……」と、初監督ならではの難しさもあったようだ。

 岡田さんは、製作する中で「『これは素人考えなのかもしれないから言わないほうがいいな』と黙っていたこともあった」という。「でも、やっぱりいかんと思って、後から『やっぱりあそこを』と言ったりもしていて、毎日家に帰って『あそこは言うべき』『あそこは直すべき』と考えていました。すごく皆さんに迷惑をかけてしまったところもあるんですけど、ちょっとずつスタッフの皆さんも質問してくださるようになって、すごく皆さんに支えていただきました」と感謝の気持ちを語った。

 ◇タイトルの「約束」に込められた思い

 劇中でマキアはイオルフの長老・ラシーヌに「外の世界で出会いに触れたなら、誰も愛してはいけない」と言われる。長い年月を生き、“別れの一族”と呼ばれるイオルフの民を岡田さんは「美しい場所に住んでいる潔癖な人々」と表現する。そんなイオルフたちが「いろんな感情を得ていって、汚れていくことで成長していく姿を描きたかった」と話す。

 本作のタイトルには「約束」というワードが入っているが、そこには岡田さんの思いが込められているという。「この作品って何なんだろうなって、思ったときに『約束』というワードを入れたいと思ったんです。今回は『誰かが誰かを強く求める物語』なんですよね。どのキャラクターも、自分の置かれた役割や自分の決めごとにすごくとらわれていて、例えばマキアは、自分が母親じゃなかったらエリアルが離れていってしまうかもしれないと思っている」と語る。劇中でマキアは、母としてエリアルにある約束をするが、岡田さんはそんなマキアを「必死に母親であろうとしている」と表現した。

 岡田さんは「約束」という言葉について、「約束って何か決めごとであるとか限定することだったりもして、人はその約束や役割に縛られてうまくいかないことも多いです。でも、『自分は母親だからこうじゃなきゃいけない』と、役割にこだわることから生まれる美しい気持ちもありますよね。今回は、完璧じゃない人たちが出会って、別れていくことで、さまざまな気持ちが深まっていく物語を描きたかったんです」という。

 ◇P.A.WORKS堀川プロデューサーは「先生のような存在」

 本作は、岡田さんがP.A.WORKSの代表・堀川憲司さんに「岡田さんの100%が見たい」と言われ、岡田さんが「監督をやりたい」と申し出たことから始まった。堀川さんとさまざまな作品を共にしている岡田さんは、堀川さんに「製作人生の最後を私にください」と言ったという。

 堀川さんは、本作を自身が「ラインプロデューサーとして現場で指揮を執る最後の作品」と語っている。岡田さんは、「堀川さんには、監督をやる条件として『全てのパートに立ち会うように』と言われました。『監督は、全てのスタッフをお客様だと思いなさい。絶対に打ち合わせには遅刻しちゃだめ。この作品に力を貸してくださる方々なのだから』と教えてくださいました」と話す。

 改めて、岡田さんに堀川さんへの思いを聞くと、「堀川さんとの付き合いは『true tears』という作品からなんですけど、いつもすごく怒られていて、だけどその分、すごく認めてくださっているのも感じていて。最初の頃の、本当にまだよく分からない存在の私をすごく買ってくださいました」と振り返る。

 さらに、「私自身、調子が悪くていろいろなことがうまくいかない時期もあったんです。それでも忙しくて『うー……』となっていたら、堀川さんが『早く岡田さん、仕事なくなんないかな。仕事がなくなったら、うちの仕事全部突っ込めるのに』ということを言ってくれて、めちゃくちゃ感動した記憶があります。やっぱり人って、仕事相手が調子が悪いと、自分の仕事にも関わってくるから、(態度が)すごく変わるというか。でも、堀川さんは本当に変わらなくて。変な言い方かもしれないですけど、『人は信頼できる』ということを教えてくれた、本当に先生のような方ですね」と思いを語った。

 岡田さんと堀川さんのやりとりから始まり、さまざまなものが織り込まれていった「さよならの朝に約束の花をかざろう」を、岡田さんは自分にとっての「ヒビオル」だと表現した。その作品の世界をじっくりと味わってほしい。

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