福田雄一監督:ロングインタビュー(上) 山田孝之と長澤まさみの相性は?

映画「50回目のファーストキス」について語った福田雄一監督
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映画「50回目のファーストキス」について語った福田雄一監督

 俳優の山田孝之さんと女優の長澤まさみさんがダブル主演した映画「50回目のファーストキス」(福田雄一監督)が1日に公開された。メガホンをとり、脚本も担当した福田監督は、深夜ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズや映画「銀魂」などコメディー作品で高い評価を受けてきたが、今作は意外にも“泣けるラブストーリー”だ。「泣かせるより笑わせる方が何百倍も難しい」と語る福田監督に、初のラブストーリー映画について、またハワイロケの裏話やライバルの存在などについて聞いた。

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 今作は、アダム・サンドラーさんとドリュー・バリモアさんの2004年のハリウッド映画「50回目のファースト・キス」(ピーター・シーガル監督)が原案。プレーボーイの大輔(山田さん)はハワイ・オアフ島のカフェで地元の女性・瑠衣(長澤さん)と意気投合するが、瑠衣は交通事故の後遺症で、一晩で記憶がリセットされてしまう短期記憶障害を抱えていた。大輔は、毎日“初対面”の彼女にいちずに愛を告白し続ける。やがて瑠衣は、自身の障害と大輔の将来の夢のためにある行動に出る……というストーリー。“福田組”の佐藤二朗さんが瑠衣の父親役、ムロツヨシさんが大輔の親友役で出演している。

 ◇初めてのキスシーン「照れあった」

 ――今作はハリウッド映画のリメークになりますが、オリジナルの作品を見た感想と、それをリメークしようと思った理由は?

 たまたま僕がハワイにいたときに、小栗旬もハワイにいて、「小栗がハワイにいるうちに『銀魂』の主役くどいちゃいましょうよ」と(今作にも関わっている)松橋真三プロデューサー(P)に言ったんです。そうしたら2日後に本当に松橋さんがハワイに来たんですよね。小栗も、Pがハワイまで来たら断れないじゃないですか。そんな追い込み方をして銀ちゃんを受けさせたという(笑い)。

 そのときに松橋さんが車の中で「私が一番好きなラブコメ作品ってハワイが舞台になっているんですよね」と話したのを聞いたのが今作を知ったきっかけなんです。僕はあんまりラブコメを見ないから、オリジナル作品を知らなかったんですよ。見たら、とても面白い。1日で記憶が消えちゃうというのは本当にこんなに切ないものなのかと思いつつ、ちゃんとコメディーとして成立している。何より僕がハワイには詳しい方だと思っていて、これは自分がやるには非常に適した原作だなと思ったのが理由ですね。

 ――今作はコメディー部分もあるけれど、真面目なラブストーリーの部分もあります。照れはありませんでしたか。

 ぶっちゃけ照れはありましたね。僕はいままでキスシーンはずっと避けてきて、撮ったことがなかったので。今回初めて撮りまして。ドキドキしましたけど、この映画では何回もキスするので、最後はマヒしてきて、「早よ、しろや」くらいな感じになってました(笑い)。山田くんがとても面白くて、撮影でキスシーンがない日は不機嫌になって。助監督に「シーンの撮り順とか考えて、必ず1日1回キスできるようにしてくださいよ」みたいなお願いをしてました(笑い)。

 ――監督はどのキスシーンがお好きですか。

 山田君に激しく拒否されたパイナップル畑の“元気注入”が好きです。山田君にすごく嫌がられましたよ。「これを言うんですか」って(笑い)。「これ結構キュンときますよ」と訳の分からない、なんの根拠もないことを言って、やってもらいました(笑い)。

 ◇「勇者ヨシヒコ」の座組自体がネタ

 ――山田さんをラブストーリーの主役に起用した理由は?

 狙ったわけではないけれど、シンプルに言うと「ギャップ感」。一番この映画の面白いところは「勇者ヨシヒコ」をやっていたメンバーでラブストーリーをやるということだと思うんですよ。

 僕が監督をして、山田君が主演して、ムロ君がいて、二朗さんがいて、スタッフもほぼ「ヨシヒコ」と同じなんですね。そういう「ヨシヒコ」のにおいがプンプンする状況の中で、なぜラブストーリーをやるのだろうという“センセーション”ですかね(笑い)。今まで「ヨシヒコ」でもラブストーリーっぽいものは必ずやっていて、最後に必ず強烈なオチが待っていたわけじゃないですか。僕らにとって、オチのないラブストーリーを「ヨシヒコ」のメンバーでやるというのは、なかなかないだろうなと。座組自体がネタになっているのが今回の最高の面白みだと思うんですよ。

 ――ヒロイン役の長澤さんの笑顔がとても可愛らしいシーンが多いという印象です。笑顔を可愛く撮る秘訣(ひけつ)は?

 まさみちゃん自身がもともとああいう人ですからね。みんなを本当に楽しませたいのと、みんなが楽しんでいる場ですごく楽しそうに笑ってくれる。彼女は笑顔がすごくすてきな人ですから。ものまねされるくらい特徴もあるし、心から笑ってくれている。

 今回は障害の話だから、いわゆる重い話がベースになっているにもかかわらず、どこにも悲壮感ないということを、一応僕なりのこの映画のコンセプトとしていた。障害を抱えた彼女が常に笑っていることとか、家族も、太賀(が演じる弟)があれだけ(筋肉)バカで、(佐藤さん演じる)お父さんもすごく心配はしているけれど、瑠衣の前では頑張って笑顔で振るまっているという状況がほしかったので、できるだけ、まさみちゃんの笑顔が多い方がいいなという思いで撮ってました。

 ――山田さんと長澤さんの相性は監督から見ていかがでしたか。

 相性が良すぎて困ったくらい(笑い)。だって毎日一緒に飯食ってたんじゃないかな。撮影が終わったら、みんなでですけど。役者さんはみんな同じホテルに泊まっていたので、別にそこまでコミュニケーション取らなくてよくない?というくらい過剰なほどに仲良しでしたよ(笑い)。

 ――1カ月も一緒にいて海外ロケっていうとやっぱり仲良くなるものですか。

 ハワイという土地柄もあるんでしょうけどね。やっぱり楽しいという空気もあるし。あと、すごくいい環境で、泊まっているホテルの1階にプールサイドで飲めるバーみたいなのがあって。そこが結構楽しくて。役者さんだけじゃなくて、スタッフも同じホテルに泊まっていたので、みんなで毎日、楽しそうにやっていましたよ。僕は飲めないから一切参加しませんでしたけど(笑い)。

 <プロフィル>

 ふくだ・ゆういち 1968年7月12日生まれ、栃木県出身。1990年に旗揚げした劇団「ブラボーカンパニー」で座長を務め全作品の構成、演出を担当。傍らフリーの放送作家として人気バラエティー番組の構成を手がける。監督・脚本を担当した「THE3名様」シリーズ(2005~10年)などでファンを増やす。09年、舞台の映画化「大洗にも星はふるなり」で映画監督デビュー。テレビ東京の深夜ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズ(11~16年)もヒット。17年の映画「銀魂」が年間の実写映画ナンバーワンを獲得。今年は「銀魂2(仮)」や「聖☆おにいさん」の実写ドラマなどが控えている。

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