第159回芥川龍之介賞(以下、芥川賞)が18日発表され、高橋弘希さんの「送り火」(文學界5月号)が受賞した。高橋さんは4回目のノミネートでの受賞。同日、東京都内で行われた記者会見に、ボロボロのジーンズにスニーカーという装いで登場した高橋さんは「うれしいっちゃうれしい」と率直な表現で受賞の心境を明かした。会見の主な一問一答は次の通り。
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――受賞して、今のお気持ちは。
お気持ち……お気持ちですか? 会見やらないとだめって引っ張り出されてきたので、頑張っていこうかなと。
――4回目の候補で、期待はしていましたか。
期待は特にしてないですけど、普通に待っていました。
――どのような状況で?
担当の編集の人と。まあどうなるか分からないですからね。どうかねえと。
――自信はありましたか。
読んだ人がどう思うか分からないので、作品は、まあいいんじゃないと思いますけど、人がどう読むかは分からないので。
――選考委員の講評に、「大変読みにくい小説」とあった。どう思われますか。
読みにくくはないと思いますけどね。だいぶ読みやすいと思います。
――受賞が決まって、率直にどう思いましたか。ガッツポーズをとったりしたのか、静かに喜んだのか。
とりあえず(午後)8時までには(会見場の)帝国ホテルに来い、と言われたので。分かりました、という感じで。うれしいっちゃうれしいですけど、ガッツポーズはなかったかな。
――興奮はしなかった?
うれしいですよ。うれしいですけど、でも小説って、あまりガッツポーズとか出ないんですよね。短距離走とかならいいですけど。
――自身にとって文学賞はどういう位置付けでしょうか。
一応、評価されるということなんで。何かしら受賞できればうれしいですけど。でも賞がほしくて書いている人はいないと思うので、結果的にとれてああ、よかったなと。
――傍観者的な描写というのは、これまでの作品でもありました。そういう書き方を選ばれるのはなぜでしょうか。
そんなには意識してないですが、いろいろ細かく描いていくと傍観者っぽく読めるのかなと。意識はしていないですが、主人公が見たことをいろいろ書いていくと、傍観者っぽくなる側面があるのかなと。
――今日の服装には、なにかジンクスがありますか? 選ばれた理由も。
いや、なんか家にあったんで。
――やる気になると書くけどやる気がないと書かないと言っていました。今回受賞してやる気モードに?
どうなんすかね。出んのかな。ちょっと数日、様子を見て(笑い)。
――今回の作品の舞台は青森県ですがその理由は? また、子供のころ夏休みを青森県で過ごしたことがどう影響しているか教えてください。
作品の中でやっているお祭りを、近所でやっていたんで、これでいいかなという感じで。
――青森で過ごしたことが作品に与えた影響は。
実はあまりない気もするんですけど。記憶をたどって書いたって感じですね。
――青森の読者にメッセージがあれば。
単行本買ってください。(会場が笑いに包まれる)
――選評では、「言葉で別世界を構築するフィクション本来の醍醐味(だいごみ)を示す快作だ」という評価がありました。言葉で別世界を構築することの楽しさ、思いとは?
あまり意識してないんですけど、とりあえずうそっぽくならないようにしようかなって書いていくと、だんだんこう……。とりあえずうそっぽくならないように書くというのが、言葉で別世界を作る、というふうに解釈されたのかなと。
――そう評価されたことはうれしいですか。
……誰の選評ですか?(島田雅彦さんと聞いて)島田先生ですか、なるほど。それはうれしいですね。自分らの世代って今の選考委員の作品を読んでいる世代なので。
――最後に一言。
会見もこのように無事に終わって、こうしておさらばできるぞって、大変うれしく思います。
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