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未来のミライ:細田守監督に聞く2 トトロのメイ以降「4歳児がちゃんと描かれたことがない」

アニメ 映画
劇場版アニメ最新作「未来のミライ」で4歳の男の子を主人公にした細田守監督

 劇場版アニメ「未来のミライ」(20日公開)を監督した細田守さんは、自身初となるオリジナル作品「サマーウォーズ」(2009年)以降、「家族」をモチーフに描き続けている。自身は「僕はよく、家族をずっと描いていると言われますけど、本当は子供を描きたいと思っているんです」と語る。なぜ子供を描きたいのか……。細田監督に聞いた。

 ◇子供が変化していくダイナミズムへの憧れ

 ――子供を描く醍醐味(だいごみ)と難しさはどこにありますか。

 子供を描きたいと思うのは、我々大人に比べて、子供はすごくバイタリティーがあって、変化していく存在だからです。“成長”というのとはちょっと違います。成長というと、社会化されていくことが成長だという人もいれば、肉体的な成長も成長じゃないですか。だから成長とはあまり呼びたくなくて、“変化していくものだ”というところに、僕はすごく引かれるんです。

 変わろうと思ってもなかなか変われないのが大人。それに対して子供は、変化していくダイナミズムがすごい。それは、小さい子もそうですし、僕らから見たら、中学生、高校生だって、実はダイナミックに、古い自分から新しい自分に、チョウがさなぎから変態するように変わっている。そのダイナミズムに憧れているのでしょうね。

 日本のようなロリコン文化を持つ社会だと、アニメの世界にも、もっと違う意味で子供をとらえる視点があって、子供のままで変化しないことをめでてみたりとか、そういう子供の描き方は、すごくつまらない。変わってこそ子供なわけです。だから大人でも、変わっていくダイナミズムをもっと持ちたいし、もっといえば、社会というものにも、そういうダイナミズムは必要なのではないかと思うのです。

 ◇固定観点からの脱却

 ――子供が変化していくダイナミズムを見ることで、観客も、自分も変われるという励ましが得られるということでしょうか。

 そうですね。ただ、考え方としてはそうなんだけど、実際、励ましになるように描いたり、子供の変化をきちんと肯定的に描いたりするのは、注意を払わないと難しい。それこそ、アニメ的なものから飛躍しなければいけないと思っている僕ですら、どうしてもアニメとしてまとめちゃおうと思ってみたり、アニメにおける子供の表現というものの枠内に収まってみたりと、固定観念的になってしまう。例えば今回、4歳児を描くのがチャレンジでしたけど、つい、アニメの歴史の中で見たような表現に支配されてしまうんです。

 ――今回、4歳児を描く上で、類型化された4歳児との差をどうつけたのでしょう。

 表現のレベルでいえば、4歳児というのは、ちゃんと描かれたことがないと思っています。僕に言わせれば、30年前の「となりのトトロ」(1988年)に出てくるメイちゃんは4歳という設定なんですが、メイちゃん以降、ないのではないかと思っているぐらいです。

 ◇原点回帰への挑戦

 ――子供を描いているアニメはたくさんありますが。

 それは、子供的なキャラクターを描いているにすぎないわけで、テーマ的にも、表現としての作画的にも、本質的に子供を描くことに挑戦しようという作品はないし、そういうことをやろうという志もないと思うんです。僕らも、アニメーターの人も、つい「子供ってこんな感じでしょ」になっちゃうわけです。

 そうではなく、もう一回、子供を見て描こうよ。ユーチューブで子供を見て描くんじゃなくて、もう一回、目の前にいる子供をスケッチしたり、抱っこしたり、髪の毛の柔らかさを手で確認したりして、自分の中の子供というもののデータを入れ替え直して、もう一回観察の上で描く必要があるのではないかと思うのです。

 僕らが子供のころは、子供を描いていたと思うんです。例えば、東映の長編マンガ映画は、僕らにとっての一種の理想で、こういうものを現代で作ったらどうなるんだろうということを常に想定してやっているわけだけど、当時は、劇場版アニメを作るときに、ちゃんと子供を描こうという意識があったと思うんです。今はないわけですよ。

 今回、東映アニメーションとテレコム(・アニメーションフィルム)出身のアニメーターの方に集まってもらいましたけど、そういう子供を描く資格がある人たちが、しばらく子供を描いていないというんです。動物なんてさらにない。昔は、ディズニーからこちら、動物が走り回るのがアニメーションだったじゃないですか。ところが最近は描かないんですね。ですから、原点としてのアニメーションが手放してしまったものを、原点回帰してもう一回取り戻したい。そういう志を持った作品にしたいと努力しているのですが、言うほど簡単ではないわけで……(苦笑)。

 ――今、なぜ、子供を描く作品がないのでしょう。

 それはやっぱり、少子化というのもあると思うんです。身近に子供がいるかいないかで、子供の存在感は違ってくるじゃないですか。だから、ここで子供を描いておかないと、これから先、本当に(子供を描く作品が)なくなるぞ、という一種の危機感みたいなものもあります。

 僕の作品は、ここのところずっと家族をモチーフにしているので、テーマの発想が全部身近なところから来ているんですけど、だから簡単かというとそうではなく、それを形にするのは、やっぱりすごく高いハードルがあるんです。でも、そういうものも含めてもう一回、認識を切り替えて、子供というものをしっかり理解した上で描くということは、すごく難しい挑戦だけれど、やりがいがあると思っています。

 <プロフィル>

 ほそだ・まもる 1967年生まれ、富山県出身。金沢美術工芸大学卒業後、91年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社。アニメーターを経て、97年にテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(第4期)で演出家に。99年「劇場版 デジモンアドベンチャー」で映画監督デビュー。筒井康隆さん原作のアニメ版「時をかける少女」(2006年)で注目され、09年、自身初となるオリジナル作「サマーウォーズ」を発表。11年、アニメーション映画制作会社「スタジオ地図」を設立。そのほかの作品に「おおかみこどもの雨と雪」(12年)、「バケモノの子」(15年)がある。

(取材・文・撮影/りんたいこ)

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