名探偵コナン
#1143「乱歩邸殺人事件(後編)」
11月23日(土)放送分
劇場版アニメ「君の名は。」「秒速5センチメートル」などの新海誠監督作品で知られるアニメ制作会社「コミックス・ウェーブ・フィルム」の新作アニメ「詩季織々(しきおりおり)」が、8月4日に公開される。その制作現場・市ケ谷スタジオを訪問した。ここでは同社の強みでもある背景を手がけている。プロデューサーの堀雄太さん、美術監督の渡邉丞さん、小原まりこさん、友澤優帆さんに、背景へのこだわりを聞いた。
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「詩季織々」は、「陽だまりの朝食」「小さなファッションショー」「上海恋」の三つの短編からなる。「陽だまりの朝食」は中国のイシャオシン(易小星)さん、「小さなファッションショー」はCGチーフとして新海監督作品に長年関わってきた竹内良貴さん、「上海恋」は中国のリ・ハオリン(李豪凌)さんが監督を務める。
ハオリンさんは、約10年前に「秒速5センチメートル」を見て以来、新海監督に憧れ、コミックス・ウェーブ・フィルムに熱烈なオファーを送り続けたことで同プロジェクトが始動した。3編はそれぞれ中国の3都市が舞台。中国の暮らしの基礎となるという「衣食住行」をテーマにした青春アンソロジーが描かれる。
今回訪れたスタジオには、背景などを担当する美術部とCG部がある。幾つものディスプレーを開きながら、スタッフが真剣に作業していた。
プロデューサーの堀さんは、同社の特徴として「社内に美術部があるのが特徴であり強み」と話す。通常のテレビアニメの場合は、レイアウトの段階でキャラクターの部屋や背景などに何を配置するかが決まっているが、同社の場合は「美術部がいろいろなものを足すことがある。『君の名は。』でもそうですが、あるシーンを特定の方にお願いして、その方の個性を背景で出していただく」と堀さんは語る。
アニメではキャラクターが主役とのイメージが強いが、堀さんは「弊社では、キャラクターがあって背景が決まるのではなく、どちらかというと、『この背景があるからこそ、こういうキャラクターが乗るんじゃないか』という形でやっています」と制作のこだわりを明かした。
中国・上海を舞台とした「上海恋」の美術監督を務めたのが、「君の名は。」など多くの新海監督の美術を手がけた渡邉さんだ。ビル群など構造物が多い上海が舞台ということで、細かい作業を得意とする渡邉さんにオファーがかかったという。
渡邉さんは、実際にロケハンで上海の街を訪れた際は、「スケールが大きい」という印象を受けたという。「日本の建物で使うような、コンクリートや鉄筋を使った建物だが、規模が違うという印象を強く受けました。(劇中に登場する)石庫門は日本の下町よりも、ごちゃごちゃ感というか、もっと情報を凝縮したような印象を受けました」と振り返る。日本と比べると建物の配置や雰囲気も違うため、制作では「考える時間が長くなってしまった」という。
渡邉さんが上海の街を描いたボードをハオリン監督に見せた際は、「きれい過ぎる」と言われたそうだが、渡邉さんは「情報量を増やすより、キレイに見せる」ことにこだわった。「我々が描くのはアニメの世界なので、やっぱり美しく見せたい」という思いが強かったといい、空を描く際も、実際には無い大きな雲を描いたという。
「上海恋」は、キャラクターたちの子供時代と大人になった現代という時の経過が描かれる作品だ。背景を描く上で渡邉さんは時間軸にこだわり、「大人になった世界を若干彩度を低めにして、ちょっとおとなしい色使いにした。一方、子供の頃をキラキラさせた」という。「子供って大人になることはできても、大人は子供に戻ることはできないので」といい、子供時代を「淡い思い出」として振り返る、キャラクターの心情も背景に反映させている。
渡邉さんは、作中でキャラクターのすれ違いが描かれているところに新海監督とハオリン監督との共通点を感じるという。「新海監督の作品を見ると、夕焼けとか夕暮れ時に2人の別れや出会いといった物語の大事なポイントが関わってくる。夕焼けへのこだわりは、ハオリン監督も『時間の流れを大事にしたい』とおっしゃっていたので、できるだけ画面で表現できるようにした」と語った。
「小さなファッションショー」の美術監督を務めた小原さん、友澤さん。中国・広州を舞台にした、人気モデルの姉と服飾専門学校に通う妹の物語。小原さんと友澤さんは「言の葉の庭」の制作時に学生アルバイトとして関わった。その後、「コミックス・ウェーブ・フィルム」に入社。共に今回が初の美術監督だ。
姉の部屋の背景を担当したという友澤さんは「自分にも姉がいて、『姉だったら部屋にこういうものを置くかもしれない』と想像して描いていった」と自身の経験も基にして背景を作っていったという。ファッションの最先端を行くモデルの部屋ということで、「今のオシャレな女の子はどんなものを置くんだろうと、雑誌を見たり、雑貨屋さんに足を運んだりして、アロマやオイル標本を部屋に描きました」と、研究を重ねながら、キャラクターに合う部屋を表現していった。
小原さんと友澤さんもロケハンで広州の街を訪れ、「洗練されたリゾート地」という印象を持ったという。その印象をアニメで表現する上で「キャラクターが配置された時に邪魔になるものは取ったり、そのまま描くと寂しくなってしまう時は実際に無いものを足したりしました」と話す。
「(竹内)監督に『このシーンはすごくキラキラした印象』と指示を受けた時は、現実には無い明るさという鮮やかさを出して、あざと過ぎず美しく見える絵を模索した」とこだわりを明かした。
「コミックス・ウェーブ・フィルム」作品を形作る上で大きな役割を果たす背景。「詩季織々」では、繊細で写実的でありながら、アニメだからこそ表現できる美しさにこだわった背景にも注目したい。
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