薬屋のひとりごと
第33話 先帝
3月7日(金)放送分
今年、創刊50周年のマンガ誌「ビッグコミック」(小学館)の関係者に、名作の生まれた裏側や同誌について聞く連載企画「ビッグに聞く」。第14回は、「YAWARA!」「MASTERキートン」などで知られる浦沢直樹さんが登場。早熟だった少年時代やマンガの未来などについて聞いた。
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1960年生まれの浦沢さんが「ビッグコミック」に出会ったのは創刊の68年。当時は小学2年生だった。「全然、読んでましたよ。あのころは、大人はこれ、子供はこれ、なんて線引きはなかった。僕は子供向けとか、子供だましが大っ嫌いだったんです。親戚のおじさんが『ナオキくん、マンガうまいねえ。プロのマンガ家になれるぞ』と言った時、この人は何も分かっていないなあ、マンガをなめている!と思っていた(笑い)」というから随分、早熟だ。
「中学1年生で、実家の縁側で手塚治虫の『火の鳥』を読んでいた時に、『マンガとはこういうものだ!』と光が見えた。あの衝撃を、皆さんに届ける。それができた時に、初めてマンガを描いたことになるのだ、と。まるで伝道師みたいですよね」と振り返る。
浦沢さんは83年にマンガ家としてデビューし、「ビッグコミック」では短編を発表していた。「でも若いころは『ビッグコミック』が嫌いでねえ。敵だから(笑い)」と明かす。「権威主義で商業主義。こっちは売れ線を描くなんてイヤだ。だから、ベテランの先生たちを潰す!と思っていました。ゴルゴ、ぶっ潰す!って。そういう仮想敵があるから僕は燃えた。この間もさいとう・たかをさんご本人に『ゴルゴ潰れませんねえ』と言ってみたんですよ。さいとうさんは笑ってらしたけどね(笑い)。ですから、『このサークルに入って、中から壊す』という気持ちでいた。ビッグのブランドをお借りして、中でテロ活動をやって、どれくらいやれるかな、という作戦だった」と話す。
「ビッグコミック」で描き続けてきたのは「ここには、メジャーとして売っていかなきゃいけないっていう、別の使命感があるんです。マンガを変革していくという使命とは別に。僕は、この両立をずっと考えてきました。僕って、マイナーな雑誌にいったら、マイナーで終わっているはずなんですよ。ビッグのお陰でメジャーな衣を着ることができた。今は、それはありがたかったと思います」という思いがあった。
マンガは、紙から電子書籍が主流になりつつあるなど変化している。50年後、マンガはどうなっているのか? 浦沢さんは「マンガは密造酒みたいになってたりして。未来では紙でこっそり刷って、裏通りで売ってるやつらがいてね。『いい紙ありまっせ~』って。『高いのある? 電子版はどうもぬるいから、紙ない?』と低い声で尋ねると、『紙の浦沢、ありまっせ』って。くんくんくん、『ええわ~、この匂いが!』とね(笑い)。だって最近、若い女のコもアナログレコードを買いあさっているわけですよ。カセットテープやビデオテープなどナローなのがブーム。ラジカセで聴いてごらんなさい、ニール・ヤングを! 最高だから。そんな感じよ、50年後は浦沢を紙で読む時代が来てるって(笑い)」と話す。
浦沢さんの新作も気になるところではあるが「何も言いませんよ。みんな、ネタバレ嫌いでしょ?」と笑う。伝道師の挑戦はまだまだ続く……。
浦沢さんの個展「浦沢直樹展 描いて描いて描きまくる! -埼玉の巻-」が、埼玉県立近代美術館(さいたま市浦和区)で開催中。「MONSTER」最終18巻の一巻丸ごとの直筆原稿のほか、ストーリーの構想メモ、イラストやスケッチ、少年時代のマンガノートなどを展示。開館時間は午前10時~午後5時半。観覧料は一般1100円、大高生880円。9月2日まで。
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