ドラゴンボールDAIMA
第10話 ウナバラ
12月16日(月)放送分
マンガ家の浦沢直樹さんが、マンガ家たちの制作現場に密着するNHK・Eテレの番組「浦沢直樹の漫勉neo」の新シリーズが、3月2日から3週にわたり放送される。2014年に「浦沢直樹の漫勉」としてスタートし、2020年からは「浦沢直樹の漫勉neo」とタイトルを改めて放送されており、これまでさいとう・たかをさん、萩尾望都さん、かわぐちかいじさん、ちばてつやさん、安彦良和さんら29人のマンガ家が登場してきた。浦沢さんは、さまざまなマンガ家の制作の裏側に触れることで「マンガ家は一人一ジャンル。一人一人が作品の顔をされている」と感じているといい、「刺激だらけです。番組を始めてから、僕は相当描き方が変わったんじゃないか」と語る。番組への思いを聞いた。
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「漫勉」は、マンガ家たちの仕事場にカメラが密着し、その貴重な映像をもとに浦沢さんが同じマンガ家の視点で対談し、創作の秘密に迫る。新シリーズでは、「弱虫ペダル」の渡辺航さん、「エロイカより愛をこめて」「ケルン市警オド」などの青池保子さん、「宮本から君へ」などの新井英樹さんの制作現場に密着。渡辺さんが3月2日放送回、青池さんが同9日放送回、新井さんが同16日放送回に登場する。各日午後10時に放送。
浦沢さんは「これまで番組に出ていただいた方は全て、それぞれ全く違うマンガの描き方をされている」と話す。新シリーズに出演する3人も、キャリアも作風も全く違うという。
「青池先生はキャリア50年を超えるレジェンドですが、その長いキャリアを支えた、とにかく楽しんでマンガを描くという姿勢に心打たれます。一番若い渡辺航さんは、本気で自転車に乗り続けていて日焼けで真っ黒なんです。それが作品の躍動感にそのまま現れています。そうかと思うと、新井英樹さんは、20年ほど引きこもってらしたという(笑い)。しかし最近外に出るようになって、新たに人に触れることでより温かな目線を獲得されている。一人一人の作家さんを見ると、作品の顔をされているんです。僕もそうですが、ほとんどのマンガ家さんは作品に自分が投影されている。それぞれの生活の中から、作品がにじみ出してくるんだなというのが、今回もよく分かるんじゃないかなと思います」
これまで番組で多くのマンガ家の制作現場を見てきた浦沢さんが、最も注目するのは「ペンスピード」だという。
「それぞれ皆さん、あのスピードが作品を生んでいるんだと。早いスピードの方の作品は躍動感がありますし、ちょっとずつペンを進めていく人は、繊細さが出ていたり。作品全体のムードをペンスピードがつかさどっているというイメージがあります。今回登場する新井さんは、作風からするとペンスピードが早いと思っていたのですが、実際は『漫勉』史上一番遅いかもしれない。あの作風で遅く描かれるのは、逆に怖いと思いました。勢いに任せているのではないなと。深い思慮の中で、『こうではない、ああではない』とゆっくりゆっくり考察しながら描かれている。それは新しい発見でしたね」
浦沢さんは「Gペンやミリペンといった道具によってもペンスピードは変わり、作風に影響する」と説明する。ほかのマンガ家の制作の裏側に触れることで、自身の描き方にも変化があったという。
「刺激だらけです。番組を始めてから、僕は相当描き方が変わったんじゃないかな。細かいところはたくさんありますけど、ちばてつや先生は、原稿が汚れないようキッチンペーパーを紙に当てていた。それは気付かなかった。すごくいいですね。また、『漫勉』のおかげで目を描くのが丁寧になったかもしれない。西炯子さんにもご登場いただきましたが、少女マンガ系の方は『瞳が命』という感じで描かれる。改めて、瞳は大事にしないといけないなと。この番組を通じて目を大事に描くようになりました」
番組として「漫勉」が誕生したきっかけには、浦沢さんの「マンガの読者と描き手に深い溝があるのではないか」という思いがあったという。
「僕は、5歳からマンガを描いていて、目の前でマンガが完成されていくのを自分の目で見てきました。自分の中では、描いている時の面白さを小さい時から感じていて、そこにマンガの醍醐味(だいごみ)があるんじゃないかと思っていました。それが読者と描き手に深い溝を作っているんじゃないかと。描き手はいつもあの面白さを体感しながら描いている。読者は出来上がったものしか見ていないという、そのジレンマをずっと感じていたんです」
生の制作現場を見ることによって、読者のマンガに対する認識が相当変わるのではないか。そうした浦沢さん、番組スタッフの思いが「漫勉」には込められている。また、「マンガ家たちの技術を残していかなければいけない」という思いもあるという。
「作業風景を見せていただきたくてもやはり当然、出演が難しいマンガ家さんたちがほとんどです。出演していただいた方々には本当に感謝しています。また残念なことに亡くなられた方々の作業風景はもう見ることはできません。だからこそ、できる限り次の時代に伝えるためにも、これは続けなければならない我々の責務だと思っています」
浦沢さんは「創作現場に入ることは、作品を相当深いところまで見つめるきっかけになる」と語る。担当編集者ですら立ち入ることができないことも多いというマンガ家の現場を映し出す「漫勉」。新シリーズも見逃せない。
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