高杉真宙:アニメ愛ゆえの「あがき」 「キミスイ」で声優初挑戦

劇場版アニメ「君の膵臓をたべたい」で声優を務める高杉真宙さん
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劇場版アニメ「君の膵臓をたべたい」で声優を務める高杉真宙さん

 住野よるさんの小説が原作の劇場版アニメ「君の膵臓(すいぞう)をたべたい(キミスイ)」(牛嶋新一郎監督)が9月1日に公開される。主人公の「僕」の声を演じたのが、声優初挑戦の俳優、高杉真宙さんだ。幼い頃から「アニメとマンガとゲームが大好き」という高杉さんは「声優さんという仕事には僕の夢と理想が詰まっている」と語る。「理想と現実のギャップにあがいた」という高杉さんに、作品への思いや役作りについて聞いた。

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 ◇大好きな世界だからこそ感じた「理想と現実のギャップ」

 「君の膵臓をたべたい」は、2016年の本屋大賞で2位にランクインし、累計発行部数が260万部を超える人気小説。クラスで目立たない存在の「僕」が、膵臓の病気を患うクラスメートの桜良が書いていた文庫型の闘病日記「共病文庫」を病院の待合室で偶然見つけたことから、次第に桜良との距離を縮め、一緒に過ごすようになる……というストーリー。女優の浜辺美波さんと人気音楽ユニット「DISH//」のメンバーで俳優の北村匠海さんがダブル主演した実写映画が、17年7月に公開された。

 アニメやマンガが「大好き」という高杉さんにとって声優の仕事は「一つの夢だった」という。だからこそ、今回「僕」を演じることが決まった時はうれしさがありつつも「自分の趣味を作っている方々の場所に仕事として入るのは、めちゃくちゃ緊張しました」と振り返る。

 実際、アフレコの現場では「理想と現実のギャップ」に葛藤したという。「声優さんがやっているようにナチュラルにアニメと一緒に演技をするのが自分の理想。いろいろなすてきな作品を見てきたからこそ、自分の理想と現実とのギャップが信じられないぐらいあった」と話す。

 高杉さんは、演じる中で「『これは違うな』と感じるのは悔しかった」といい、「声優さんという仕事には自分の理想と夢が詰まっているからこそ、必死に役のことを理解して、何とかあがいて自分の理想に近付けるように演技した」と力を込める。

 ◇実写映画は「あえて見なかった」 現場で生まれた感情を大事に

 高杉さんは、俳優として役作りをする際は、原作と台本を読み込み、キャラクターの特徴などをノートにまとめる作業するといい、それは今回声優として役作りをする上でも同じだったという。ただ、ヒット作ともなった実写映画は「あえて見なかった」と明かす。

 「見たら緊張しそうだなというのもあったのですが、原作にも映画にもたくさんのすてきな評価がある中で、自分はそれとは関係なしにやらないといけないなと。(実写映画の演技に)引っ張られそうというのもあったので見ませんでした。ただ、見た時に(自分の演技が)どう変化していたのかは気になりますけどね」と話す。

 自身の演じた「僕」を「すごく複雑な子で、最初は台本を読んでも小説を読んでも理解できなかった」といい、キャラクターを模索する中で「本当に怖がりな子」という一つの答えにたどり着いた。「人と関わることが怖かったり、自分のことを深く探られるのも、相手を深く探るのも怖い。その怖がりなところが『僕』にとって大事な部分なんだと思ったんです。だからこそ、自分が閉じこもっている殻を破ってくる桜良にひかれていく」と説明する。

 高杉さんは準備を重ねて演技に臨むが、「それよりも現場でできあがった感情を大事にしたい」と常々思っているという。今回声優として演技した現場でも「そういう演技ができたことが楽しかった。いっぱい悩まされましたけど」と笑顔を見せた。

 ◇アフレコ現場で興奮 声優に意欲も「深夜アニメとか…」

 以前からアニメの制作現場に興味があったという高杉さんは、今回実際に制作の裏側を見る機会もあったといい、「自分が知りたかったことが目の前で起きているのは、テンションが上がりました」と興奮気味に語った。

 アフレコ現場では、「他の声優さんがアフレコしている様子を後ろで見る機会もあったんですけど、せりふを言い合っている時に目をつぶればアニメなんですよね。その瞬間が、一番泣きそうになりました。やっぱり声優さんってすごいなと改めて思いました」と目を輝かせる。

 そんな高杉さんに好きなアニメについて聞くと、「最近、『PSYCHO-PASS(サイコパス)』の1期を見返しました。(2019年公開予定の)劇場版もすごく期待しています。『PSYCHO-PASS』は、あの音楽の入り方が本当にキレイで」と語る。エンディングテーマを担当した音楽ユニット「EGOIST(エゴイスト)」が好きという高杉さんは、同ユニットが登場したアニメ「ギルティクラウン」にも触れ、「『ギルティクラウン』も音楽の入り方がいい。音楽がいいアニメって面白いなといつも思っています」と熱く語った。

 「PSYCHO-PASS」の脚本を担当した虚淵玄(うろぶち・げん)さんの作品が好きという高杉さん。自身が出演した特撮ドラマ「仮面ライダー鎧武/ガイム」は虚淵さんが脚本を担当していて、「現場でお会いして超興奮しました」と声を弾ませていた。

 最後に高杉さんに「今後も声優の仕事をやってみたい?」と聞くと、「ぜひ、やりたいです」と力強く回答。「今回一つ夢がかなって、夢がもっと膨らみましたし、もっとやりたいなと思いました。今度は正義のヒーローとかアニメならではの役をやってみたいですね。それこそ深夜アニメとか……。怒られそうですけど」と笑顔で語った。

 高杉さんが、初挑戦の声優として、芝居に真摯(しんし)に向き合う役者として熱を持って挑んだアニメ版「君の膵臓をたべたい」。アニメならではの「僕」に注目したい。

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