わたしの宝物
第6話 生まれ変わったら本当の親子になれるかな・・・
11月21日(木)放送分
俳優の上川隆也さんが主演のWOWOWのドラマ「連続ドラマW 真犯人」が、23日から放送される。主人公の重藤成一郎を演じた上川さんが、作品への思いや共演者の印象などを語った。
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ドラマは、江戸川乱歩賞受賞作家の翔田寛さんの小説「真犯人」(小学館)が原作。昭和49(1974)年と平成20(2008)年に起きた二つの殺人事件が交差し、未解決だった幼児誘拐事件の真相に迫る捜査ミステリー。
平成20年に静岡県の国道高架下で須藤勲(尾美としのりさん)の殺人事件が発生し、捜査する富士裾野署の刑事・日下悟(小泉孝太郎さん)は、須藤が昭和49年に幼い息子を誘拐事件で亡くしていたことを知る。誘拐事件は時効成立の1年前となる昭和63年に、静岡県警本部長の榛康秀(高嶋政伸さん)の指示により特別捜査班が編成され、ノンキャリアながら警視にまで昇進した重藤成一郎(上川さん)が管理官となり、有能な刑事6人を率いて再捜査が行われた。それから20年後に東京都在住の須藤が静岡で殺されたことを不可解に感じる日下は、昭和49年の事件を掘り下げることが須藤殺害の解明につながると直感し、次第に真相へと近づいていく……というストーリー。WOWOWプライムで23日から毎週日曜午後10時放送。全5話で、第1話は無料。
34年間にわたって描かれる二つの事件の絡み具合が絶妙だと思いました。昭和49年、昭和63年、平成20年という三つの時間軸の中で、一つ一つ解きほぐされていく謎や事実が淡々としている中にも勢いを失われずに描かれています。シナリオとして読んでいたわけですが、どこか読み物として引き込まれていった覚えがあります。
彼がある種、愚直なまでに守り続けている“姿勢”、例えば、先輩刑事からの教えをきっちり真面目に継承する姿や、リタイアした後でも棚に資料ファイルをきれいに並べている折り目正しさなどから、彼の人となりが浮き彫りになっているように思います。たたき上げでは難しい警視にまで出世していることからも、勤勉さや精神的持久力を感じました。
重藤は二度、事件に敗れています。20代に敗戦を喫した男が、40代でもう一度同じ事件に挑み、思い及ばず捜査の現場から再び離れなければならなかった。そんな男がその後の60代をどう過ごしているのか、等々を考慮しながら、事件や職務、仲間たちに対して向き合うたたずまいには、一貫性を持たせるべく配慮をしつつ演じました。
印象深いシーンはいくつかあるのですが、その中でも誘拐事件を再捜査した特別捜査班が終わりを迎える場面が、心に残っています。演じていて、本当に悔しかったんです。あれは重藤を演じている僕自身の心情すらも揺らされたシーンでした。
今年は例年に増して寒かったので、外のロケに限らずスタジオの中も冷え冷えとしていて、演者はいつも「きゅっ」とまとまってよもやま話をしていました。もともと特別捜査班は、別の現場でも幾度となく顔を合わせたことがある面々がほとんどでしたから、ドラマの中での人間関係は対立するような空気から始まり少しとげとげしくもありましたが、裏では実に朗らかに楽しく過ごしていました。
以前ご一緒した「連続ドラマW 沈まぬ太陽」の時は、僕の部下役で清涼感のある人物像を演じていらっしゃいましたが、今回演じられた日下という刑事の役からは、事件を追いかけている男の「重力」のようなものを感じました。重力を持つ天体が物を引きつけるように、日下に関わった重藤が、何か引きつけられる物を感じたからこそ平成の事件にも協力していくことになります。そうした人間的魅力とも言える何かを体現して、今回の役に臨んでいらっしゃったという印象です。
ビックリしました。普段は朗らかで屈託がなく、皆に分け隔てなく接してくださる、ぬくもりのあるお人柄なのですが、いざ演技となるとエッジの立ったシャープなお芝居をされます。さらに、役に入るいとまがとても短い。あっという間に尾畑理恵になって、その世界の中にたたずんでいる。そしてカットがかかると、笑顔がすてきないつもの内田有紀に戻っている。芝居に向かう姿勢はさまざまありますが、その見事な切り替えは、彼女が内包しているポテンシャルであり、持っているエネルギーの量がそれを可能にさせるのだろうと思います。僕らには普段は感じさせないような、圧縮された熱や力がある方なんだと思いました。
何度ご一緒しても同じ顔でご一緒させていただいたことがないと思うくらい千変万化なお芝居で、お会いするたびに楽しい方です。今回演じられた「自分の野心をいかに実現させていくか」という人物像の造形も実に巧みで緻密でした。役として相対すると、それはとてもしゃくに障るのですが、いざ上川隆也として客観的に見ているとこれは楽しくてしようがない。会うたびにすてきだなと思わせてくれる役者のお一人です。
監督は常にとても穏やかな空気を現場にもたらしてくださる方です。しかし、そうしたお人柄からは想像できない画作りをなされていて正直驚きましたし、静かな熱を感じるような仕上がりになっていて見入りました。僕らが垣間見ることができない思いが監督の中に沸々とあって、それが今回の作品の中に注ぎ込まれたんだと思います。
皆でじっくりと造り上げた作品です。第1話をご覧になっていただけたら、多分2、3話と続けてご覧になっていただけるという確信めいたものが僕の中にはあります。「誘拐殺人」という、これまでさまざまな形で描かれているクライムストーリーの中でも異色作になるのではないかとさえ思っています。変な例えをしますと、ものすごくじっくり弱火で焼いた肉は旨味が逃げないんです。柔らかくて、口当たりも良い。そんなドラマに仕上がっています。
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