俳優の佐藤健さんと高橋一生さんが出演する映画「億男(おくおとこ)」(大友啓史監督)が19日から公開されている。“お金”をテーマに、幸せや家族の絆とは何かを問いかける作品で、佐藤さんが宝くじで当てた3億円と共に消えた親友を探してさまざまな億万長者との出会いを繰り返す一男、高橋さんが一男の親友で3億円と共に行方をくらますミステリアスな九十九を演じている。佐藤さんと高橋さんに、劇中で重要なカギとなる落語シーンや砂漠でのロケなど、撮影エピソードについて聞いた。
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映画は、累計発行部数が76万部を突破している川村元気さんの「億男」が原作。兄が3000万円の借金を残して失踪し、昼は図書館司書、夜はパン工場で働き借金を返済する一男(佐藤さん)。そんな一男に妻(黒木華さん)は愛想を尽かし、娘と一緒に家を出てしまう。3億円の宝くじが当たった一男は借金返済と家族の絆の修復を目指すが、宝くじの高額当選者たちが悲惨な人生を送っているという記事を見て、大学時代の親友で、億万長者の九十九(高橋さん)にアドバイスを求める。久しぶりの再会と豪遊で酔いつぶれた一男が翌朝目を覚ますと、3億円と共に九十九は姿を消していた……というストーリー。池田エライザさん、沢尻エリカさん、北村一輝さん、藤原竜也さんらも出演している。
佐藤さんが演じるのは、失踪した兄の借金を返済するため、図書館司書とパン工場で働く二重生活を送る一男。家族ともバラバラの生活を余儀なくされているなどどこか頼りなく、他の強烈なキャラクターの億万長者たちに比べると“普通”のキャラだ。佐藤さんは「一男のキャラクターのあり方が難しかったですね。普通の人といっても、その中でそれぞれどういう人なのか細かく違いがあるので、一男のキャラをどこに設定すればいいか……」と語る。
台本は打ち合わせを重ねることでブラッシュアップされていった。「初めはまだ途中段階の台本が来て。クランクインしてからも、さらに良くするために打ち合わせを重ねていって。完成したものが存在しない状態で撮影に入っていたんです」と佐藤さん。「シーンに入る前に、『こういう方向で行こう』ということは毎回決めて、撮影に入っていました。でも毎回、本当にぎりぎりまでそういう話し合いをしていた」と明かす。
同作では、“落語”シーンが見どころの一つだ。物語の中でも示唆的な存在として登場する。佐藤さん演じる一男も、高橋さん演じる一男の親友の九十九も、共に大学時代は落語研究会に所属しており、劇中では2人が落語を披露するシーンも出てくる。特にモロッコの砂漠のど真ん中で高橋さん演じる九十九が「芝浜」を一男に披露するシーンは印象的だ。高橋さんは吃音があり、落語がうまいミステリアスな男という難役はどのように作り上げたのか。「落語は撮影の3~4カ月ぐらい前から練習していました」と明かす。
「立川志らくさんにご指導いただいて。家で練習した覚えはあまりなくて、ずっと音を反芻(はんすう)して聞いていた状態でしたね。2度くらい志らくさんに見ていただいて、『こうした方がいいんじゃないかな』とアドバイスをいただきました」と高橋さんは落語シーンの裏側を語る。「あとは実際に“億男”の方にお会いしたり、演劇をしている吃音の方や吃音を研究されている方にお会いしたり……。コラージュの断片的なものはたくさんいただいていました」と役作りを語る。
佐藤さんも1カ月ほど落語を練習したといい、「演目を覚えるのがそもそも大変。それに江戸弁も難しいし、あと、やっぱり所作というか、独特の上下(かみしも)の切り方は、僕が一番届かなかったな、という部分ですね。落語独特の動きがぜんぜんできなかったなと思いました」と苦労を語る。「上手な落語家さんのことをすごく尊敬しています」と佐藤さんは話す。「やっぱり、手に職がついている人を尊敬しちゃうところがあって……。志らくさんに落語のことを教えてもらって、『何か自分の中に取り入れよう』という気持ちで話を聞いていました」と尊敬の念を明かす。
劇中では一男と九十九がそれぞれ人前で落語を披露するシーンも。時間にすれば数分の場面だが、実際には佐藤さんが約10分、高橋さんが約20分、落語をぶっ通しで披露していたという。「2人で30分、通しでやったんです。その間はずっとカメラが回っていて。断片的に撮ったように見えるんですが、実は通しでやっていました」と高橋さん。「かいつまんでいますが、その臨場感は出ていると思います」と手応えを語る。
実際に砂漠で落語を披露した高橋さんは「健くんが、ほぼ最初のお客さんだったんですが『健くんでよかったな』と思います」と笑顔を見せ、「お芝居の中だったとしても、ちゃんと受けてくださっていたから、すごくうれしかったですね」と撮影当時の思いを率直に語っていた。落語シーンも含め2人の「億男」での熱演は注目だ。
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