東映アニメーション:アニメ企画を公募 「一休さん」リメークも

「東映アニメーション 100年アニメプロジェクト」のイメージビジュアル
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「東映アニメーション 100年アニメプロジェクト」のイメージビジュアル

 アニメ「ONE PIECE」「プリキュア」などで知られる東映アニメーションが、オリジナルアニメ企画を一般公募し、クリエーターを発掘する新プロジェクト「東映アニメーション 100年アニメプロジェクト」を始動したことが6月6日、分かった。創立60周年を経た同社がアニメ企画を一般公募するのは初めて。四つのコースが設けられ、「一休さん」のリメーク企画も募集する。

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 アニメが100年続く中で、新しいクリエーターを発掘することを目的としたプロジェクトで、年齢、性別、経歴などを問わず参加できる。オリジナル企画をアニメ化する「だれでもアニメコース」、長期にわたり多くの地域、たくさんの人に愛されるアニメ企画を募集する「プロでもアニメコース」、「一休さん」のリメーク企画を募集する「みんなでリメイクコース」、制作プロデューサー、クリエーターを募集する「クリエイター&製作プロデューサー募集コース」の4種類。

 募集期間は7月1日~8月31日で、2020年4月23日に結果が発表される予定。各コースごとに大賞には100万円、優秀賞には50万円、奨励賞には30万円の賞金がそれぞれ贈呈される。

 ◇東映アニメーション 高木勝裕社長のコメント

 --本プロジェクトを実施することになったきっかけをお教えください。

 アマチュアからの募集も含め、今回のように広くアニメ企画を公募するのは東映アニメーションにとって初の試みです。今、社内でも多くの企画が出ていますが、それ以外にも、これまで弊社になかったような新しい視点の企画が生まれることを期待して、外の人の力を借りていこうと考えました。具体的には「どこかで見たことがあるな」「何かに似ているな」と感じさせない作品です。うまい、下手ではありません。こんな発想があったのか、と驚きを感じさせる内容をお待ちしています。映像の技術は日々進化しています。だからこそストーリーの大事さが浮き彫りになってくるのです。

 --プロジェクトのテーマ「100年アニメ」に込められた思いは?

 弊社の代表的アニメである「ドラゴンボール」シリーズが34年、「ワンピース」が20年、「プリキュア」シリーズが16年続き、今もこれらの作品がヒットの前線にいます。時代背景によって設定などを変えていく必要があると思いますが、良い作品であれば長く続いていくはずです。テーマ「100年アニメ」には、細かい変化はあっても100年継続するタイトルを進めていきたいという思いが込められています。

 --「長く続くアニメの定義」とは?

 それは私も知りたいところですが。一つ言えることは時代にあった作品を作り続けること。同じタイトルの作品でも、その時々の価値観や時代背景を考慮して柔軟に対応していくことが大事だと思います。

 --今、アニメ業界はどのような状況にあると考えている?

 本音を言えば、世に出ていく作品数に対してヒット数が少ないと感じています。制作にお金のかかるアニメ作品からどうやって利益を出していくか。それには作品の2次利用を成功させるかどうかが鍵になります。厳しく言うなら、制作側が満足のいく作品ができたとしても、世間の目に触れる機会がなければ自己満足で終わってしまう。確かに技術の進歩によって、個人でもアニメ制作ができる時代にはなりました。しかし、多くの人を巻き込むことで作品は出来上がっていくものだと考えています。ですから、アイデアをお持ちの方には、本プロジェクトをぜひ、活用してほしい。私たちには作品を成功させるための、長年培ってきたノウハウがあります。海外進出も視野に入れ、しっかりとバックアップしていきたいですね。

 --受賞作品は海外展開もありうる?

 そうですね。東映アニメーションは日本だけでなくアメリカ、ヨーロッパ、アジアにそれぞれ拠点を持っています。昨年末に公開した「映画 ドラゴンボール超 ブロリー」は、日本はもちろん、それ以上に海外で大きなヒットとなりました。受賞作品は世界規模での展開を考えていきたいですね。

 --現在どのようなアニメが多くの人々に愛されるのでしょうか?

 大ヒットにつながる作品に共通するのは、どのような層にも受け入れられる内容です。アニメに興味のない人たちでも「ちょっと見てみようかな」と思わせる、間口の広い作品が求められています。私が東映アニメーションに入社したころは「アニメは子供のもの」というのが常識でした。それが時代とともに視聴者層が広がっていきます。性別ごとにターゲットを分けた「男女別作品」も、いまでは少なくなりました。アニメの社会的地位は大きく変わりましたね。昔と比べ、劇場公開作品が増えたことにも表れていると思います。

 --具体的にはどのような変化を体感してきましたか?

 私が入社して間もないころに、鳥山明先生原作のアニメ「Dr.スランプ アラレちゃん」がヒットしました。それ以前は、ヒロインは金髪で目がぱっちり、きれいな服を着ているのが“お決まり”でした。ところが本作の主人公・則巻アラレは紫色の髪にメガネ、カジュアルな帽子をかぶっている頭身が低い女の子。当時の常識から外れた見た目でしたが、いざ放送してみると作品がヒットし「これが当たるのか」と驚きを隠せませんでした。「週刊少年ジャンプ」に連載していたこともあり、男性向け作品としてかじを取りましたが、放送が始まると女の子からも多くの支持を受けました。“常識”に当てはめて動いてみたら、意外な結果が待っていた(笑い)。

 それから10年ほどたち、次はアニメ「美少女戦士セーラームーン」が女の子の間でブームになりました。“女の子たちの戦隊もの”も当時としては衝撃的でした。「時代の当たり前」を変える力を持つ作品。その目新しさが多くの人の目を引くのかもしれません。

 --令和を迎え、新たな価値観の作品が生まれる日はやってくるでしょうか?

 遠い話ではないと思います。固定概念にとらわれず新たな想像力で企画を生み出してほしいですね。むしろこれまでアニメ業界に関わってきていない人のほうが、損得や過去の成功例を気にせず自由に発想できるのでは。どんな斬新な企画が寄せられるのか、いまからとても楽しみです。

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