ドラマBiz:“テレ東らしさ”が生んだ珠玉のドラマ枠 CPが語る「今を切り取る」目線

「ドラマBiz」第6弾の「リーガル・ハート ~いのちの再建弁護士~」の場面写真 =テレビ東京提供
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「ドラマBiz」第6弾の「リーガル・ハート ~いのちの再建弁護士~」の場面写真 =テレビ東京提供

 「働く人」をテーマに、テレビ東京が2018年4月に立ち上げたドラマ枠「ドラマBiz」第6弾の「リーガル・ハート ~いのちの再建弁護士~」が、7月22日から放送される。ヘッドハンターや企業再生家など、専門性が高く、一見マイナーな業種に光を当てた骨太な作品が、視聴者を魅了している。「他局がやらないことを、『ドラマBiz』でやりたい」と話す浅野太チーフ・プロデューサー(CP)に、立ち上げの経緯や、「ドラマBiz」が目指す姿などを聞いた。

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 ◇ターゲットは「働く人」

 同局のドラマといえば、「ドラマ24」(金曜深夜0時12分)で展開されてきた、「孤独のグルメ」シリーズや「勇者ヨシヒコ」シリーズ、「きのう何食べた?」など、若者の支持を集めるコミカルな作風の作品が多く放送されてきた。一方、「金曜8時のドラマ」(金曜午後8時)では、「三匹のおっさん」シリーズや「警視庁ゼロ係」シリーズなどを放送し、幅広い年齢層に親しまれている。

 浅野さんによると、「ドラマ24」「金曜8時のドラマ」で、同局のドラマが話題になることも増え、ドラマに注力していくという局の方針も手伝って「ゴールデン、プライムでもう1枠」という機運が高まった。平日の午後10時は「カンブリア宮殿」「ガイアの夜明け」「日経スペシャル 未来世紀ジパング」といった、経済系の番組が並んでおり、これらの番組の視聴者をターゲットに「働く人」がテーマの「ドラマBiz」が立ち上がったという。

 ◇好評も数字が取れないジレンマも

 2018年4月に放送された「ドラマBiz」第1弾の「ヘッドハンター」は、江口洋介さんが主演を務め、企業に必要な人材の転職をあっせんするヘッドハンターを描き、好評を得た。
 続く「ラストチャンス 再生請負人」は、仲村トオルさんが元銀行マンで飲食フランチャイズ企業のCFO、「ハラスメントゲーム」は唐沢寿明さんがスーパー運営企業のコンプライアンス室長、「よつば銀行 原島浩美がモノ申す!~この女(ひと)に賭けろ~」は真木よう子さんが都市銀行の女性総合職、「スパイラル~町工場の奇跡~」は玉木宏さんが企業再生家と、これまであまり描かれてこなかった職業のビジネスパーソンをフィーチャーしてきた。

 平均視聴率に目を移すと、いずれも5%弱で、浅野さんは「数字だけを言えば、もっと伸ばしていきたいですね」と率直に語り、「ただ、初めからうまくいくとは思っていませんでした。とがった内容のドラマでこの数字を取れたのは、卑下することではなく、ここからスタートという思いでした」と話す。

 また、「テーマがビジネスに特化したものだったので、男性層に響くドラマで立ち上げましたが、数字を取れるドラマは、やはり女性層が見ていることが多いので、男性に向けて作ると数字が出てこない。そういったジレンマはありますね」と分析。「見ていて苦しくなる物、シリアス過ぎるものは見づらい時間帯なのかなとも思います。ただ、『働く人』がテーマというのは、枠として変わらないと思います」と明かす。

 ◇打ち出していく“テレ東らしさ”

 その一方で、視聴者からは、「ドラマBiz」の骨太なクオリティーを称賛する声も多い。浅野さんも「作品ごとに言えば、私たちが目指していたドラマはできています」と胸を張り「ターゲットであったり、訴求力の勝ちパターンなど『視聴者がテレビ東京に求めているもの』に目線を合わせ、“テレ東らしさ”を打ち出していかないと意味がないので、続けていくしかないですね」と意気込む。

 こんな逸話もある。前クールに放送された、「スパイラル~町工場の奇跡~」は、企業買収を描いた「ハゲタカ」の外伝が原作だ。ドラマ化に際し、原作者の真山仁さんからは「『スパイラル』じゃなくて、『ハゲタカ』をやってよ」と言われたそうだが、番組のプロデューサーが、「(企業再生家が主人公の)『スパイラル』をやりたい」と主張し、ドラマ化が実現。このような、独自の目線を重視した考えは制作陣に浸透しているという。

 7月22日に初回を迎える「リーガル・ハート ~いのちの再建弁護士~」は、実在の再建弁護士・村松謙一さんをモデルにした主人公・村越誠一を、反町隆史さんが熱演。実際に村松さんが手がけた案件に触発されたストーリーが展開され、浅野さんは「現実世界との地続き感は、見ていてグッとくると思います。『ドラマBiz』が大事にしている『今を切り取る』というのがドンピシャ。働いている人の光になれば」と出来栄えに胸を張り、「かならず最後は、気持ちが晴れやかになります」と語る。

 「他局がやらないことを、『ドラマBiz』でやりたい」と力を込める浅野さん。池の水を抜いてみたり、電動バイクで充電の旅を繰り広げたりと、他局には見られない目線の“テレ東らしさ”は、ドラマ制作の現場にも息づいているようだ。

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