ダンダダン
第6話「ヤベー女がきた」
11月7日(木)放送分
人気ゲーム「ドラゴンクエスト」(ドラクエ)シリーズの劇場版アニメ「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」が8月2日から公開中だ。同作は「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」(1992年発売)のストーリーが原案で、シリーズ初の3DCGアニメ。「ALWAYS 三丁目の夕日」「永遠の0(ゼロ)」などで知られる山崎貴さんが総監督と脚本を担当し、八木竜一さんと花房真さんが監督を務めた。八木監督、花房監督に劇場版アニメ化するにあたってのこだわりや工夫、「ドラクエ」の魅力などを聞いた。
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「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」は「ドラクエ」の“生みの親”堀井雄二さんが原作・監修を務め、シリーズの音楽を手がけてきたすぎやまこういちさんの楽曲を使用。俳優の佐藤健さんが主人公・リュカ役の声優を務めるほか、有村架純さんがビアンカ、波瑠さんがフローラの声を担当し、山田孝之さん、坂口健太郎さん、古田新太さん、吉田鋼太郎さん、井浦新さんらも声優として出演する。
――大人気ゲームが3DCGで劇場版アニメ化。話を聞いたときのお気持ちは?
八木監督:話を持ってきてくださったプロデューサーの方に「主人公の名前もせりふもまったくない、あの『ドラゴンクエスト』を映画化するのは難しいです。たぶん無理だと思います!」という話をしました(笑い)。
花房監督:ゲームって、プレーヤーの遊び方がストーリーになるところがあるけど、映画化すると勝手にストーリーを決めちゃうことになってしまう。それは良くないんじゃないかな、と思いました。そういう意味で、難しいだろうなと感じましたね。
八木監督:そのときはプロデューサーの方が「分かりました」と帰ったんですが、その後も何度かいらして「なんとかやれませんか」と(笑い)。それで「じゃあ、やってみる?」という話になったんです。
花房監督:ちょっとキャラクターを作ってみますか、と。ドット絵のキャラクターがCGで、立体で、果たしてどのようになるのか作ってみて、良くなかったらやめておきますか、という感じで進んでいったんですが、プロデューサーの方に好評だったんです。それで「じゃあもうちょっとやってみますか」となりました。
――現場ではどのように役割分担したのでしょうか。
八木監督:僕らが現場監督で、山崎総監督は大きなジャッジを決める感じですね。3人で、「こういうふうに見せていったらいいんじゃないか」と、時には熱く語り、時にはバトルしながら(笑い)。本当に手が抜けなかったです。花房監督がずっと言っていることなんですが、ドット絵をリアルに見せるのも、すごく頑張りましたよね。
花房監督:当時プレーして大人になった人たちに、この映画を見たいと思ってほしかった。「これこれ、こういうのをイメージしていた」という気持ちになってほしかったんです。どういう世界観ならあの世界がリアルに感じられるのか、ということを考えて、実際の歴史を調べながら世界観を構築していきました。
――実際の歴史とは?
花房監督:「ドラクエV」は、ベースとして「中世ヨーロッパファンタジー」というものがあると思うんです。
八木監督:地中海文化という感じですよね。ヨーロッパの雰囲気もあり、エジプトなどの雰囲気もあり。地中海あたりを一つの世界にした、というぐらいの広さなんじゃないかなと。ゲーム内で描かれているドラクエ世界の地図の広さって、地球の広さじゃなくて、それぐらいの広さじゃないかと話していたんです。そこに「ドラクエ」の世界観を混ぜてリアリティーを出していこう、というわけです。
花房監督:あと、主人公が旅をする話だから、いろんな国を渡り歩いている感じを出すことが重要だと思ったので、それぞれの国の特色を変えることを考えていました。主人公がターバンを巻いていますが、ターバンを巻くような民族はどういう感じの建物に住んでいるのか……とか。原案の「ドラクエV」もファンタジーとはいえ、やっぱり中世ヨーロッパをベースにしていると思うんです。そこをどうアレンジしてドラクエ世界に見せるか、実際に誰かがそこに住んでいるように見せられるか……意識したのは、そこですね。原案の「ドラクエV」のイメージを壊さないようにと思っていました。
――ビジュアル面でのこだわりは?
花房監督:服装はなるべく原案のゲームに寄せています。ただ、旅をしたりモンスターたちと戦ったりという、主人公たちの行動にふさわしい服かどうかを、中世ヨーロッパの服装やターバンを巻いている人たちの実際の服装を調べながら決めていきました。武器はどうやって携帯しているのか、服を何枚重ねているのか……原案の特色は残しつつ、原案にはないアレンジをしています。
八木監督:「中世の靴が見つからない」と言って、探したこともあったよね(笑い)。
花房監督:そう、中世の靴底がどうなっているのか分からなくて(笑い)。昔の靴には、どう見ても靴底がないんですよ、皮一枚だけっぽくて。いろんな資料を見て「こうに違いない、昔の靴は袋なんだ」という結論にたどり着いたんです。だから、キャラクターはみんな、靴底はなくて、布が縫ってあるだけみたいになっています。そこにたどり着くまでに時間がかかりました。
八木監督:花房監督は、想像で作らないようにすることを心掛けていたようで、実際にあるものを(素材として)持っていかないと納得しないんです(笑い)。ターバンも、どういう巻き方をしているんだ、とこだわっていましたね。
花房監督:ターバンはアレンジしているんです。原案のゲームだと紫一色ですが、ターバンってだいたい2、3枚重ねたやつをぐるぐる巻いているんですよ。そこは今回のアレンジの特徴ですね。オレンジのラインが入っているターバンは原案にはないんです。
八木監督:そういうことを一個一個重ねていって、完成まで4年近くかかってしまったという(笑い)。
――八木監督は絵コンテを担当されていますが、どのようなところに苦労されましたか?
八木監督:ゲームの「ドラクエ」で楽しい部分って、どんどんレベルアップしていくことですよね。ただ、そのレベルアップ感は数字では表現できないと思ったので、物語の中でどんどん成長しているな、と思わせる描写を加えていったつもりです。例えば中盤にリュカと一戦まみえるゴンズはリュカをこてんぱんにやっつけるのに、最後はリュカがジャミを一発でやっつけるとか。「この人どんどん強くなっているんだな」と思ってもらえる仕組みを作ることを意識しました。あと、リュカは後半、若干マッチョにしているんですよ。ちょっと二の腕を太くしたりね。
花房監督:わずかなんですけどね。パッと見では分からないかもしれないけど、たくましく見えるかも、みたいな。
八木監督:パパスとの差も気をつけたところですね。リュカがだんだんパパスっぽくなっていく方がいいんじゃないかな、と。
――リュカはちょっと気弱で人間味あふれるキャラですが、内面はどうしてこうなったのでしょうか。
八木監督:色がついたキャラにはしたくなかったんです。気弱なようだけど、それほど気弱でも臆病でもない。たとえば前作「STAND BY ME ドラえもん」ののび太はもっと怖がりまくるキャラだし、ジャイアンならいじめっ子で力強いキャラですよね。でも、リュカはプレーヤーの化身なので、わざと透明性のあるキャラにしたんです。そこを(佐藤)健さんがうまく演じてくださっているんです。見ている人が自分を投影できるように、どういう人なのかはあえて答えられないようにしたかったんです。そこが難しいところでしたね。ゲームはせっかちな人はせっかちにプレーするし、慎重派は慎重にプレーする。いろんな人がいるので、色をつけすぎちゃうと「これは俺がプレーした主人公じゃない」となるかもしれない。できるだけフラットな人にしたいという思いがありました。
――ところで、「ドラクエ」でお好きなキャラは?
花房監督:プサンですかね。
八木監督:取られた!(笑い)
花房監督:プサンって、原案のゲームでびっくりするキャラ。登場の仕方がめちゃくちゃだし、謎めいている。怪しさ満点なんですよ。「この人についていったら絶対何か悪いことが起こる」みたいな。それが、まさかこういう人だったのか、と……。手のひらで転がされる、本当に面白いキャラですよね。
八木監督:僕はキラーパンサーかな。人懐っこくて可愛いじゃないですか。ヒョウっぽいけど、猫ですよね。
――では、改めて「ドラクエ」の魅力とは何でしょうか?
八木監督:「ドラクエ」は昔スーパーファミコンでリメークされたときに初めてプレーしたんです。1、2、3とプレーしたんですが、仕組みがめちゃくちゃうまくできている。たとえば、たいまつを持って地下に行くとだんだん火が小さくなって、世界が暗くなっていく。実際に心細くなるんですよ。本当に旅している感じを味わわせてもらって、最後に自分が勇者になれたときは誇りに思える。大ボスを倒した後、城に戻るまでに村を渡り歩くとき、村人たちにすごく感謝される。帰ってくるとあのテーマ曲が流れて「俺はやったんだ」と思う。その自分を認めてもらった感じは、やっぱり「ドラクエ」ならでは。そこが「ドラクエ」というゲームのすごさなんじゃないかと思います。
花房監督:「ドラクエ」が出る前はレースとかアクションとか、そういうものがゲームだと思っていたんですが、そこに突然ドラクエが「RPG」というジャンルで出てきました。RPGという言葉も、当時まだ知らず、「ロールプレイングって何だろう」と思っていたころです。
八木監督:そうそう、そこで覚えたよね。
花房監督:自分が広い世界を冒険していることを体感させてくれるものだった。それが「ドラクエ」の最大の魅力だと思います。冒険がちゃんとストーリーになっていて、体験としてしみこんでくるんです。当時はびっくりしましたね(笑い)。
八木監督:毎回、びっくりするようにできているんですよね。
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