杉野遥亮:詐欺師役で人を共感させる演技とは? 「言語にしづらい感情」が顔に出る

連続ドラマ「スカム」での杉野遥亮さんの表情 (C)「スカム」製作委員会・MBS
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連続ドラマ「スカム」での杉野遥亮さんの表情 (C)「スカム」製作委員会・MBS

 俳優の杉野遥亮さんが、放送中の連続ドラマ「スカム」(TBS・MBSほか)で、詐欺師の主人公・草野誠実を熱演している。映画「全員死刑」(2017年)で間宮祥太朗さん、ドラマ「GIVER 復讐の贈与者」(2018年)で吉沢亮さんの主演作を作り、「今をときめくキレイな俳優さんをどんどん汚している(笑い)」という小林勇貴監督は、今作の杉野さんの演技を「行間の演技がすごい。見れば本当に安心する」と絶賛。今作が初主演となる杉野さんについて、抜てきの理由を聞いた。

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 ドラマは、ルポライター鈴木大介さんが振り込め詐欺をする若者たちの実態を取材した「老人喰い」(ちくま新書)が原案で、リーマン・ブラザーズの経営破綻により多くの失業者が生まれ、若者の貧困率が高齢者のそれを大きく上回るなど、「世代間格差」という言葉が取り沙汰された2008年の東京近郊が舞台。社会的要因から振り込め詐欺に手を染めざるを得なかった若者たちを描く社会派エンターテインメント作で、杉野さんが演じる草野誠実は、父親が病気になったことをきっかけに、社会の理不尽さに怒りを覚え、お金のために振り込み詐欺を始めることを決意する、という役どころだ。

 ◇杉野遥亮起用はキャラクターとの合致「主人公はこういう人か」

 “クリーン”なイメージが強い杉野さんを詐欺師役に起用したことについて「間宮祥太朗から始まって、吉沢亮ときて、今をときめくキレイなものは、俺に近寄ると汚れる、空気汚染がすごい」と独特の表現を使って評しながら笑う小林監督。「“汚すシリーズ”は、ライフワークの一環です」とジョークを飛ばしつつ、「準備段階で誰がやるか決まっていなかったけれど、台本が出来上がったときに」杉野さんに会い、「声のトーンとか、何かを言われて目がどう動くのかを見たときに『草野誠実はこういう人か』という納得がすごくあった」と、描こうとしたキャラクターのイメージと合致したと明かす。

 杉野さんを起用し、「不安要素は全くなくなった。『お前が詐欺師にまで落ちたんだったら俺たちもそれを描かなきゃ』と思った。誠実が詐欺に手を出しちゃう世の中、それは見なきゃいけない、楽しく見せなきゃいけない、ということが全部つながったんですよ」と作品への思いも強くなったという。

 ◇杉野遥亮の魅力は「行間の感情の表情」 

 劇中では、振り込め詐欺の電話研修で才能を発揮しながらも「詐欺なんだよな」と我に返っていた(第2話)誠実が、徐々に善悪の意識が薄れて「詐欺はビジネス」と言ってしまうようになる(第5話)変化が描かれている。

 小林監督は、杉野さんの演技について「笑ったり、怒ったり、泣いたりの感情ではなく、その合間にある“行間”の感情の表情が、ものすごくいいと思うんです」と絶賛。「何を考えているのか、言語にしづらい感情が、(杉野さん演じる)誠実の顔にめちゃめちゃ出る。見る人の感情を引きずり回したいという作品の方向性とマッチしていて、本当にうれしい」と喜ぶ。

 “行間”の感情とは「例えば、誠実が『自分が詐欺をやっていたらどうする?』と、幼なじみの美咲(山本舞香さん)に言えなかったシーン(第2話)の目の動き。言えなかったというのは失望まではいかない、感情の中間、“行間”だと思う」と説明。「行間が埋まることで人の共感を生む。『お父さんが病気』だからとか、『失業した』とか、そういう境遇では、実は共感はあまりない」といい、行間の演技を見せてくれる杉野さんの演技に「見れば本当に安心する」と厚い信頼を寄せているという。

 ◇演出は「ケンカをふっかける」?

 これまで、本物の不良少年たちを出演させた映画「孤高の遠吠」(2015年)などを手がけてきた小林監督。「繊細で、常にいじけてて、プライド高い不良少年たちと映画を撮った。『お前と一緒にいると、何かができそうな気がする』と思ってもらえなきゃいけないので、こいつに伝わる言い方はこれ、と(役者との)関係値(で演出)」しているといい、現場の杉野さんとは「今、思うと優しかった」と笑顔で振り返る。

 劇中でのある重要なシーンでは、演技に悩む杉野さんに「ケンカをふっかけた」と明かす。「(杉野さんから)『泣けなくなっちゃった』と言われた。その気持ちに付き合いたいと思ったので(気持ちができるまで)待とうと思ったんですが、俺も一緒に気持ちを作ろうと思った」というが、「俺の方が先に気持ちができた(笑い)。俺たちの仲なんだから、『次でできてもできなくてもこれでおしまい!』と、単純にケンカをふっかけた」といい、その撮影は成功したという。「杉野がちゃんと気持ちを作ってくれた。『そう、お前はそういう男だ!』と思った(笑い)」と厚い信頼関係を明かした。

 小林監督も絶賛する「スカム」での杉野さんの“行間”の演技に今後も注目だ。ドラマは、MBSで毎週日曜深夜0時50分、TBSで毎週火曜深夜1時28分(第6話は深夜1時30分)に放送。全9話。第6話が8月4日(MBS)と6日(TBS)で放送。

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