名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
中学校の男子ソフトテニス部が舞台のテレビアニメ「星合の空」。「天空のエスカフローネ」「ノエイン もうひとりの君へ」などの赤根和樹さんが監督のオリジナルアニメだ。さまざまな事情を抱える少年たちの葛藤を描き、リアルで重いストーリーも話題になっている。なぜ、この時代に重い作品を作ろうとしたのか? 赤根監督に、作品に込めた思いを聞いた。
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キャラクター原案のいつかさんの描くデザインを見て、ソフトテニス部の青春を描いた爽やかなアニメを想像していた人は驚いたかもしれない。父から暴力を受けてきた桂木眞己ら、部員はそれぞれが悩みを抱え、苦悩する。赤根監督は「社会的なテーマとエンターテインメントが両立した物語」を描こうとした。
「自分は、この業界に入って30年くらいたちます。(ジョージ・)ルーカス、(スティーブン・)スピルバーグが席巻していて、日本にはエンターテインメントの映画がなくて、面白く感じなかった時代がありました」
その頃、「宮崎駿さん、富野由悠季さんの作品を見て『これからはアニメの時代だ!』と感じ、アニメ業界に入りました。今、アニメーターの技術は頂点に達しましたが、物語が成熟していないように感じています。表現方法が発達した中で、物語を生かして、深みを表現したかった」。
アニメを制作する中で感じることもあった。
「昔は諦めていたんです。アニメは、子供のためのものだったし、OVA時代以降は萌えキャラが中心になっていった。何とかしないといけない!という思いがあった。社会的なテーマとエンターテインメントが両立した物語をちゃんとやってみたかったんです。ガンダムやエヴァンゲリオンにしても、アニメでは思春期の悩みをしっかり描いてきた。だから、新しいものをやっているつもりではありません」
子供の悩み、家庭の問題など普遍的なテーマを扱いつつ、子供だけでなく、大人にも伝えたいことがあった。
「大人のアイデンティティーがいつ形成されたかを考えると、小学校高学年、中学生の時、なんですね。でも、子供だったからだよ……と痛みを忘れ、大人になり、子供に対して同じようなことをやってしまう。そんなに幸せな家庭の方が少ないと思うんですね。それぞれにさまざまな問題があります。親だって人間ですから、完璧なわけではない。子供を傷付けることもある。子供たちに、君たちは悪くないんだよ、社会の中で必死に生きているんだよと言ってあげたい。子供の頃を忘れてしまいがちな大人にも何かを感じてほしい」
実写でもできるのではないか?とも考えてしまうが、「星合の空」はアニメだからこそできる作品だという。
「中学生は精神的に不安定な時期。もう子供ではないし。高校生にように大人の入り口に立てているわけではありません。だから、怒り、悩み、悲しみをドラマチックに描ける。実写でやってもいいけど、実写は難しいんです。うまい子役がいっぱいいればいいのですが、なかなかそろわない。高校生だったら、20代以上の役者もできますが、中学生は難しい。アニメだから、子供が主人公でもリアルなドラマを作ることができる。これがアニメの武器なんです」
アニメの武器はほかにもある。「星合の空」はその武器が生かされている。
「日常を描くアニメではありますが、誇張、省略がある。それもアニメのよさなんです。誇張、省略によって日常の動作が印象的になる。実写で見るよりも印象に残ると思います。例えば、第1話で(桂木)眞己が父に殴られるシーン。アニメだからこその怖さがあります。痛過ぎるくらいを見せていく。リアルな現象を描くから、リアルなキャラにするのではなく、キャラのデザインが柔らかいからできるところもあります。アニメーターは大変です。普通に見せることは難しいんです。トリッキーなことはごまかせるところもあるのですが」
さまざまな問題、課題が描かれるが、解決方法はあるのだろうか……。赤根監督は「心の痛みを表現したいけど、正しい解決方法は分からない。ただ、子供たちがどう立ち上がっていくかは描けます。課題、問題を考えるきっかけになれば」とメッセージを込めた。アニメだからできるリアルなドラマから何かを感じるはずだ。
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