Levius:肉感を感じる表現を 瀬下寛之総監督、島崎信長が語る

アニメ「Levius」でレビウスの声優を務める島崎信長さん(左)と瀬下寛之総監督
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アニメ「Levius」でレビウスの声優を務める島崎信長さん(左)と瀬下寛之総監督

 「ウルトラジャンプ」(集英社)で連載中の中田春彌さんのマンガが原作のアニメ「Levius」が、動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」で配信をスタートした。戦争で父親と自分の右腕を失い、母親も意識の戻らない孤独な少年レビウスが、人体に機械を融合させて戦う機関拳闘に没頭する姿を描くアニメ。劇場版アニメ「GODZILLA」シリーズなどの瀬下寛之さんが総監督を務め、ポリゴン・ピクチュアズが制作。島崎信長さんが主人公・レビウスを演じている。瀬下総監督と島崎さんに制作の裏側を聞いた。

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 ◇体重が分かる肉感、量感を更に高める

 --原作の印象は?

 瀬下総監督 元々、原作が好きで、2012、3年頃からアニメ化したい作品の候補の中にありました。3DCGをツールに長編を作ることにこだわる中、グラフィックノベルやバンド・デシネを動かしてみたいと考えていたんです。原作は、日本でも数少ないバンド・デシネスタイルで作られています。魅力はやはり絵ですね。中田先生の絵の魅力が大きい。CGで中田先生の絵の魅力を再現できているとは思っていませんが、自分ができる手段でできる限りまで高めました。

 島崎さん プロの方に対してこんなことを言うのはおかしいですが、絵がうまい! その魅力に引き込まれました。読めば読むほどのめり込む。出演できることになり、本当にうれしかったです。レビウスは強いけど、彼が全てを引っ張るわけではなく、みんなで助け合う。キャラクターが大好きになるんですね。ファミリー、チームがすごくいい。感動させられます。

 --映像がない状態で進めるプレスコが行われたようですが、映像になった印象は?

 島崎さん 戦闘シーンに期待していましたが、期待していた以上でした。表情、殴られた後の傷などがどうなるんだろう?と思っていましたが、すごくいい表情なんです。傷が痛そうで……。すごい! と驚かされました。

 瀬下総監督 そこは現場が頑張ってくれました。ただ、素晴らしい手描きのアニメにはかなわないと思っているところもあります。スタッフはみんな頑張っていて、日本のCGでトップクラスの創造集団になっている。ただ、日本の卓越した手描きアニメを見ると、まだまだ……とも感じます。役者さんがいい演技をしてくれていますが、機微まで表現するのは難しい。声優さんや音響チーム、ありとあらゆる皆さんが弱点をカバーしてくれています。CGスタジオだけでは作品はできない。助けていただいています。

 島崎さん アニメは、スタッフの皆さん、声優というそれぞれのプロフェッショナルが高め合っています。そういうところが好き。
 
 --戦闘シーンは迫力があります。

 瀬下総監督 これまでの作品と比較すると、体重が分かる肉感、量感をさらに高めようとしました。ただ、もっと高めたい。汗、皮膚で疲れが分かるくらい進化させたい。超フォトリアルなCGが進んでいる方向とはちょっと違って、限りなくカリカチュアされているけど、肉感を感じるものを目指しています。

 ◇島崎信長の魅力 「そこに生きている人として演じたい」

 --瀬下総監督から見た島崎さんの魅力は?

 瀬下総監督 「BLAME!」にもご出演していただきましたが、簡単に言うと存在感が際立っていて、すごいな! と。今回もオーディションに声をかけさせていただき、ほぼ満場一致で決まりました。役者としてのうまさもさることながら、ステレオタイプなキャラクター像ではなく、境界にいる危うげな感じも演じられる役者さんです。レビウスは本来ボクシングをしない子がボクシングをする。どこか甘えているところもあって、はかなげ、危うくもあります。その感覚を演じていただけました。役者さんには、息遣いのリテークをお願いしたり、むちゃをお願いしましたが。

 島崎さん 恐縮です。僕もテンプレ-トはイヤで、ちゃんとそこに生きている人として演じたい。プレスコでは、その場の掛け合い、想像力、イメージで自由に演じさせていただきました。素晴らしい環境でしたので、それに応えないと! という気持ちもありました。瀬下さんはディレクションについて「むちゃ」と言いますが、そんなことはなくて、僕らとしてはすごく分かりやすい。難しいことに応えるのも面白いですしね。周りの方と一緒にやるからできたところもありました。

 瀬下総監督 僕らのコンテキストを受容した役者さんに恵まれたんです。ツイていますね。

 ◇過保護な距離感を大切に

 --作品を作る上で大切にしたことは?

 瀬下総監督 CGスタジオはCG以外も大事にする。これまでの作品もそうですが、岩浪美和音響監督とチームが素晴らしい。菅野祐悟さんの音楽、オープニング、エンディングも素晴らしい。

 --瀬下総監督はこれまでも場面設計にこだわって作品を作ってきましたが、今回のこだわりは?

 瀬下総監督 これまで没入感を高める方法を考えてきました。今回は、周囲のキャラクターたちのレビウスへの過保護な距離感を大切にしました。レビウスをとにかく大事にしています。母が子供に怒る時、子供を見下ろすのか? 中腰なのか? しゃがみ込んで目線を低くするのか……と見え方が違いますよね。愛情の注ぎ方の印象が変わる。立ち位置がもたらす愛情の伝え方がこだわりです。特に(レビウスの伯父の)ザックスの動き、レビウスへの寄り添い方を見てほしいですね。ザックスのけなげさを表現しようとしました。

 --最後に見どころを教えてください。

 瀬下総監督 毎回、戦いの盛り上がりを用意しています。そして、ザックスです。ザックスから離れがたくなる。ザックスのいるところに帰りたくなる作品になれば。

 島崎さん ザックスとビルの関係もいいですよ。

 瀬下さん 腐れ縁のような(笑い)。僕はそういうのも大好きなんです。

 ※注:島崎信長さんの「崎」は立つ崎(たつさき)

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