薬屋のひとりごと
第21話 身請け作戦
3月12日(木)放送分
国際アニメーション映画祭「東京アニメアワードフェスティバル2026(TAAF2026)」(同実行委員会・日本動画協会主催)が、3月13~16日に東京・池袋で開催される。TAAFは「東京が、アニメーションのハブになる」を合言葉に2014年から開催されており、今年で13回目を迎える。高いクオリティーとオリジナリティーに富む世界中の作品を東京で上映することで、アニメ文化と産業の振興や新たな人材の発掘、育成することが狙い。同映画祭のフェスティバルディレクターを務めるのが、スタジオジブリの元広報部長で、現在は広報学芸担当フェローとして後進の育成に当たる西岡純一さんだ。「TAAFは、アニメーションの『過去』『現在』『未来』を網羅する日本でも数少ない映画祭の一つ」と語る西岡さんに映画祭への思い、現在のアニメ業界について聞いた。
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西岡さんは、1999年スタジオジブリへ入社し、広報・宣伝業務に携わってきた。2011年から徳間記念アニメーション文化財団事務局長、2017年から広報部部長を務めた。三鷹の森ジブリ美術館が世界のアニメをセレクトし紹介する「三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー」「三鷹の森アニメフェスタ」にも携わってきたこともあり、今回TAAFのフェスティバルディレクターを務めることになった。
「前ディレクターだった竹内孝次さんが後任を探していて、私も見習いとして、2年くらい一緒に活動していました。三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーや三鷹の森アニメフェスタでの活動は、海外の優れたアニメーションを日本に紹介するという意味では、TAAFとも共通していたので、ディレクターを任せていただくことになりました」
日本各地でさまざまな国際アニメ映画祭が開催されている中、TAAFの最大の特徴は「東京で開催されること」。「世界的にも『日本はアニメーション』というイメージがある。その首都である東京で本格的な国際アニメ映画祭を開催することに意味がある」と説明する。
もう一つの特徴が、アニメの「過去」「現在」「未来」を幅広く網羅していることだ。
「アニメ界のレジェンドと言われる方々を表彰するアニメ功労部門は“過去”、この1年間で優れたアニメーション、クリエーターを表彰するアニメ オブ ザ イヤー部門は“現在”に当たります。“未来”に関しては、日本で未興行の世界の作品を対象にしたコンペティション部門を大事にして、これから世に出ていく人たちの作品を競わせて、優れた作品を紹介する。これらを満遍なくやっている映画祭は、日本でも数少ない。TAAFでは、長編、短編のコンペを行いますが、両方やっている映画祭も少ない。そもそも、TAAFはフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭を目指したいという思いでやってきた映画祭だと思います」
中でも力を入れているのが“未来”を担うコンペティション部門で、「コンペは最も手間、費用がかかりますが映画祭の華なので、大変な労力をかけてでも実施したい。審査員やスタッフの交通、宿泊の手配、1000本以上の応募作の審査も含め大変な思いをしてやっていますが、新しい作品に光を当てるということでは、やる意味がある」と意義を語る。
アニメ功労部門、アニメ オブ ザ イヤー部門、コンペティション部門という従来の3つの柱がある中で、西岡さんは今回、アニメ業界の変化に合わせて何かできないかと考えた。
「現在のアニメーション業界は、興行の仕方も、アニメーションの作り方も変わっています。昔のように大きなスタジオがあって、大規模にアニメを作るというよりも、個人の作家さんも増えて、小規模で作った映画が大ヒットすることもあります。いろいろな要素が変わってきている」
新たな試みとして、数々の作品がアカデミー賞にノミネートされているアイルランドのスタジオ、カートゥーン・サルーンのルイーズ・バグナル監督を招き、長編「Julian」の制作の裏側を紹介するシンポジウムを実施する。
「アニメ業界の現状を見せることに力を入れたいと考えました。カートゥーン・サルーンは、素晴らしい作品を多く生み出して根強いファンもいますが、まだまだ日本で広く知られているとは言えない。良いスタジオ、良い作品は世界にたくさんあるので、そこに光が当たるようになるとうれしい。また、オープニング作品では、アニー賞で長編インディペンデント作品賞を受賞した『ARCO/アルコ』を上映します。歴史あるスタジオの作品ではありませんが、ウーゴ・ビアンヴニュ監督が自身が教えているフランスのアニメーション学校・ゴブラン校の生徒たちと一緒に長編を作った。私財を投げ売ってパイロットフィルムを作って、いろいろな人に見せて回っていたところ、ナタリー・ポートマンの目に留まって製作総指揮を務めてくれることになったり、各映画祭で受賞したりしている。そうした作品を紹介できるのは、本当に光栄なことだと思っています」
「ARCO/アルコ」のほかにも、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」で話題になったやなせたかしさんの「やさしいライオン」「チリンの鈴」や、竹宮惠子さんのマンガが原作の「地球へ…」、安彦良和監督の「ヴイナス戦記」、マンガ家の竹本泉さんがキャラクター原案を務めたことも話題になった「アポカリプスホテル」、ファン投票により決定するアニメファン賞を受賞した「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」など幅広い作品が上映される。
「オリジナルでクオリティーの高い作品を応援したいという気持ちもあります。幅広く、全世代の人に楽しめる作品を意識して選んでいます」
TAAFのフェスティバルディレクターとして、「アニメ業界の現状を見せることに力を入れた」と語る西岡さん。今の世界のアニメの動向をどう見ているのだろうか。
「ディズニー、ピクサーなどハリウッドの大きなスタジオが作るアニメが大ヒットを続ける時代ではなくなってきていると感じています。ヨーロッパなどで作られた良質なアニメーションが日本にも入ってきやすくなっている。実際、ヒットまではつながらない作品も多いですが、中にはラトビア発の『Flow』のように、ほぼ個人で作られた作品が世界でヒットして、アカデミー賞を取るようなケースも出てきた。日本もそうですが、アニメーションを作る人たちが幅広くなって、大きなスタジオでなくても作品を作って世に評価される時代が来たんだなという気はしています」
作品の内容としては、「海外は戦争を意識したものが増えている」という。
「ウクライナの戦争は4年も続いていて収束の兆しは一向に見えません。中東でも新たな戦火が起こりました。海外は戦争を意識した社会性のある作品の比率がかなり上がっているように感じます。一方、日本は、そういうことは全く意識していないというと言い過ぎですが、正義や友情などをファンタジーとして扱っている作品が多いなという気がしていて、そこに大きなギャップを感じます。どちらがいいということではなくて、両方あっていいとは思うのですが。特に、短編のギャップが大きくて、海外は環境問題、戦争、LGBTQ+などを取り上げた作品が多いのですが、日本は母親との関係や友人関係、自分探しといった私的なものが圧倒的に多いんです」
そうした日本と海外のギャップはあれど、国内のクリエーターを取り巻く環境は「良い方向に行っている」と語る。
「特に、会社としてやっているスタジオでは、『この仕事では食べていけない』ということは少なくなって、ちゃんとした就職先になっている。そこが大きな変化だと感じています。ただ、それによって、会社の運営コストがものすごく上がったのは確かです。アニメの制作費に関しても、10年くらい前までは、テレビシリーズ1本の制作費が1200~1500万円だったのが、今はその3倍くらいかけて作っている。それでクオリティーも上がっていますが、人件費を含めてコストは上がっています。また、DVDが売れなくなった半面、配信プラットフォームが完備されて、日本のアニメーションが世界中に配信されるようになって、会社が助かっているところも大いにあります。さまざまな面でアニメーションの環境が変わったと思います」
スタジオの規模、個人か団体かに関わらず、テレビアニメ、劇場版アニメともに日々数え切れないほどの作品が世に送り出されている中、良作であっても埋もれてしまうケースも少なくない。西岡さんは、「そういう意味では、映画祭はいいチャンスで、実際足を運んで、良い作品、クリエーターを見つけてもらえたら」と映画祭の意義を語る。「今は何が当たるか本当に分からない」という西岡さんに「良い作品を知ってもらうためには?」という質問をぶつけてみた。
「それが分かったら苦労しないですよね。上映イベントをやるにしても、ただただチラシを配ることに意味があるのかも分からないし、SNSを使うにしても、何かきっかけがないと拡散されないし、本当に難しい。30年近くアニメの配給の仕事に関わっていますが、それは永遠のテーマかもしれない。例えば、宮崎(駿)監督の『君たちはどう生きるか』は、国内でもヒットしましたが、海外での反響が予想以上にすごかった。ジブリの鈴木(敏夫)プロデューサーは、『時代の空気を読む』ということを常に考えています。宣伝や世間に発表することがあると、『今みんなはどう思っているの?』『今世間は何を感じてるの?』と。時代を読むことの大切さは、ジブリでとことん教えられました」
スタジオジブリの一員として長く業界に携わりながらも、日々良作を多くの人に知ってもらうために頭を悩ませている西岡さんだが、「見る人を励ましたり、勇気づけたりする映画が作られていけば」と願望も口にする。
「その時の観客、見る人を励ましたり、力を与えることができる映画がヒットするし、残っていくんだろうなと思うんです。例えば、コロナ禍の時に劇場版『鬼滅の刃』が大ヒットしましたよね。私も見に行きましたが、涙が出そうになりました。煉獄さんの力強いセリフを聞いているだけで、勇気づけられて励まされて、『これは今の日本人はみんな見るな』と思ったら、案の定大ヒットでしたね。そういう作品がヒットするし、作られていくといいなとは思いますね」
(しろいぬ/MANTANWEB)
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