星界シリーズ:20年愛され続ける伝説のアニメ 長岡康史監督、川澄綾子、清水香里が振り返る 今だから話せる裏話も

「星界」シリーズのブルーレイディスクボックス「星界 Complete Blu-ray BOX」が12月25日に発売されることを記念したイベントに登場した(左から)清水香里さん、川澄綾子さん、長岡康史監督(C)森岡浩之・早川書房(C)サンライズ
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「星界」シリーズのブルーレイディスクボックス「星界 Complete Blu-ray BOX」が12月25日に発売されることを記念したイベントに登場した(左から)清水香里さん、川澄綾子さん、長岡康史監督(C)森岡浩之・早川書房(C)サンライズ

 森岡浩之さんのSF小説が原作のアニメ「星界」シリーズのブルーレイディスク(BD)ボックス「星界 Complete Blu-ray BOX」が12月25日に発売される。第1作「星界の紋章」のテレビアニメの放送20周年を記念して初めてBD化されることになった。約20年前の作品ではあるが、ボックスの発売記念イベントに多くのファンが駆けつけるなど、愛され続けている伝説のアニメだ。長岡康史監督、ラフィール役の川澄綾子さん、エクリュア役の清水香里さんに、同シリーズへの思い、今だから話せる当時の裏話を聞いた。

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 ◇川澄綾子の「礎の一つ」に 高校生だった清水香里は…

 --皆さんにとって「星界」シリーズとはどんな作品でしょうか? 清水さんは出演時、高校生だったそうですが。

 清水さん 年齢もキャリアも一番下でした。お芝居の勉強をさせていただき、刺激を受けていました。先輩もみんなすてきで、ぜいたくな現場でした。その経験が自分の基礎になっています。最大限にクールなお芝居をしようとしていました。

 --約20年たち、変化したことも多いのでは?

 清水さん 今思うと、あのお芝居は当時しかできないでしょうね。今だと少しあざとさが出るかもしれませんし、「撃つ!」というせりふも、もっと力を入れてしまいます。当時は意識していなかったのですが、今になってそう思いますね。変わったことばかりですね。

 --川澄さんにとってもキャリア初期の代表作の一つになっています。

 川澄さん 自分の礎の一つになった作品です。「紋章」の時は、まだキャリアが浅く、手探り状態でした。ラフィールを演じるのは本当に難しかったし、毎回挑戦でした。せりふ量がほかの作品と比べても格段に多く、難解な言葉も多い。あの当時は、やるしかない! という気持ちで挑んでいました。無我夢中でしたが、今振り返るとその当時の私と役がうまくリンクしていたのかなと思います。

 ◇流行を追わずに自由に作った

 --川澄さんの言葉の通り、長いせりふが多い印象があります。

 長岡監督 一カット、1、2分しゃべるシーンもありますからね。尋常じゃないです。極力、原作のせりふを残そう、生かそうとしていました。キャラクターがバストアップでしゃべっている演出では飽きられるので、心象風景などを入れる。その演出ができれば、アニメ化する意味があると思っていました。ワンパターンにならないように、コンテに時間をかけたし、演出もすごく考えていました。

 川澄さん  台本をめくってもめくってもせりふ……。この作品以降、さまざまな作品に触れましたが、「星界」シリーズ以上のものはなかなかありません。この経験があるから、その後、難解なせりふが続くような役をいただいても、おじ気付くことがなくなりました(笑い)。その当時はできない自分がふがいなく、悔しい思いもしましたが、若い時に経験できたことが大きかったですね。それに「星界」はせりふを発していて楽しい! と思えるものが多く、この言葉をラフィールとして自分が話せることは、役者としての喜びでした。個性が強いキャラばかりなので、現場は役者同士のぶつかり合い、という様子もありましたね。

 --長岡監督はこれまでも「大変だった」「寝てなかった」と発言していますが……。

 長岡監督 死ぬかも……と思っていました(笑い)。ほかの現場もキツいんですけど、「星界」の後半は特に大変でした。自分でものすごくハードルを上げていた。でも、それを越えなければいけない。自分のオリジナリティーよりも、原作の世界感をどうアニメにするのかを考えていました。

 --今見ても、古さを感じさせない普遍性があります。

 長岡監督 家族、出自がテーマになっていて、誰の人生にも重ねられる。流行を追わなかったんです。流行とは関係なく、地に足を着けてできたと思っています。自由にやらせていただけたことがありがたかったです。

 ◇川澄綾子の高貴さ 清水香里の空気感

 --長岡監督が感じる川澄さんの印象、魅力は?

 長岡監督 川澄さんは高貴で品があったんです。力強さもあり、ピタッとハマった。川澄さんがオーディションに参加したのは後半だったのですが、演技を聞いて、迷いがなくなかった。それまでは迷っていた。高貴なところはテクニックだけでなく、持って生まれた資質なのかもしれません。アフレコを重ねていくうちに、段々とラフィールの強さも出てきた。「紋章」の途中から、前進している印象があって、そこもうれしかった。

 --清水さんは?

 長岡監督 あの空気感ですね。当時、「エヴァンゲリオン」の綾波レイのようなちょっと不思議なキャラクターが多かったのですが、エクリュアはそういうキャラではない。エクリュア役もなかなか決まらなかったのですが、清水さんの声を聞いて、この子だな! となった。清水さんは経験はあまりなかったけど、ナチュラルな空気感を持っていたんです。「と言ったら、うれしい?」というせりふにしても、あれがイラッとしないのは清水さんだから。役者としての資質も大きいと思います。やってもらって本当によかった。

 --最後にファンにメッセージをお願いします。

 清水さん 30、40、50年とぜひ末長く愛していただきたいです。久々に見ても、やっぱり面白いんですね。当時、気が付かなかったけど、改めて分かることもあると思います。

 長岡監督 20年たって、こうやってボックスが発売される機会は、そうそうないと思います。応援してくださったファンの皆さんのおかげ。感謝以外の言葉が思い浮かばないです。作っている時は、本当につらかったのですが……。

 川澄 作品に出会えた縁、運に感謝しています。私自身も大好きな作品で、今でもいろいろな方から「ラフィールが好き!」と言っていただけることがあります。ラフィールを演じていなかったら、今の自分はどうなっていたんだろう……とも思えるくらい自分にとって大きく、いろいろなきっかけをいただけた作品です。これからもぜひ、応援してください! 皆さん、きっとアニメの新作も見たいですよね!

 長岡監督 見たいなあ……。でも、オレは寝たいなあ(笑い)。

 ボックスには「星界の紋章」(全13話、1999年放送)、「星界の戦旗」(全13話、2000年放送)、「星界の戦旗II」(全10話、2001年放送)、「星界の戦旗III」(全2話、2005年発売)、「星界の断章 誕生」(全1話、2000年発売)、「星界の紋章 特別編」(総集編、2000年発売)、「星界の戦旗 特別篇」(総集編、2001年発売)、「星界の戦旗II 特別篇」(総集編、2005年発売)を収録。原作のイラストを手がけた赤井孝美さんがボックスのイラストを描き下ろす。価格は4万円(税抜き)。

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