特撮ドラマ「仮面ライダー」シリーズの劇場版最新作「仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション」が12月21日から全国公開された。冬の仮面ライダー映画シリーズの新作では、令和初の仮面ライダー「仮面ライダーゼロワン」の誕生の秘密が明らかにされる。テレビシリーズのメイン監督を務め、今作でメガホンをとった杉原輝昭監督に、「仮面ライダーゼロワン」の撮影のこだわり、令和ライダーならではの演出や挑戦、映画に懸ける思いなどを聞いた。
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「仮面ライダーゼロワン」のメイン監督オファーを聞いたとき、「田崎(竜太)監督や石田(秀範)監督らがパイロットで立ち上げたものを見ていたので、ものすごく遠いものだと思っていた。そういう状況でのオファーだったので『僕ですか?』っていうのはすごくありました」と当時の心境を明かし、「(プロデューサーの)大森さんから連絡をいただいたときも、何を言っているか若干、理解できなくて、一瞬(意識が)飛びました(笑い)」と振り返る。
そんな杉原監督が「平成ライダーから受け継いだこと」とは……。「仮面ライダーがどういう存在かというのはぶれてはいけない。平成ライダーで培ってきたもの、何を守る仮面ライダーなのか、何を守るヒーローなのか、そのヒーロー像は揺らいではいけない。そこは受け継いでいきたい」ときっぱり。「だからこそ、今年は何を守るライダーなのか、何を大事にしたい人なのかというので“今年っぽさ”を出せている」と伝統を基に進化させていると話す。
撮影にあたって意識している点は、「世界観が特殊なので、世界観の構築といいますか、説得力のある世界観を作ることにはこだわりました」といい、「人間たちに混じってヒューマギアという人工知能搭載人型ロボが生活している。結構、特殊な画(え)になってしまうので、浮いてしまわないようにリアリティーを持たせつつも、あまりリアリティーを持たせすぎて(人間とヒューマギアの)見分けがつかなくならないようにというのは気にしました」と説明する。
さらに、「ヒューマギアに関わってくる人たち、例えば飛電或人(ひでん・あると)を含めた『飛電(インテリジェンス)』の人たち、ヒューマギアに関わることを取り締まる『A.I.M.S.』、それを悪用する『滅亡迅雷(.net)』……。画に映る部分に関してはものすごくこだわりを持って作りました。衣装や小道具もそうですし、車両関係もそうです」と語る。
「ゼロワン」で杉原監督は、「全力でヒーローを演じてもらうということを大事にしつつ、新しいものは、見た目やアクションなど、画になったもので表現できれば」という意識で撮影しているという。「年号が変わったからといってヒーロー像が変わるわけではなく、年号が変わった先でもヒーローはヒーロー。その根本的な部分は変えずに、あとはどういうアクションや映像美で見せるかを考えてこだわっています」と撮影スタンスを語る。
特にこだわっているのが「『仮面ライダー』ならではのアクション」で、「ゼロワンのスーツは例年に比べてスリムで、なおかつ腕を組んだりもできる。相当できることも広がったので、今までできなかったアクションを盛り込んだりしています」といい、「モチーフが久しぶりにバッタに戻ってきたこともあり、できるだけ脚力、跳躍力だったりスピード感だったりを重視しています」とゼロワン“らしい”アクションに仕上げているという。
撮影手法も工夫し、「通常は1秒で撮れるコマ数を24とか30にする場合が多いのですが。今回はアクションを21コマで撮ってみるなど、そういう試みでもっと速く見えるように、もっとキレが良く見えるように狙っています。あと仮面ライダーのアクションは合成というのも大きな要素になってきますが、そういうところでもスピード感は重視しています」と説明する。
具体的な例として「ライダーキック」を挙げ、「ライダーキックはしっかり見せないといけないのですが、そのためにスピード感がなくなるのは違うと思う。疾走感で見せるけど何をやっているかという内容はしっかり見せる。そういうところにはこだわってライダーキックは作っています」と話す。
そしてゼロワンのライダーキックは、「一つの必殺技として格闘ゲームみたいなコンボにしたかった」と意図を明かし、「蹴り上げて蹴り落として追っかけていって貫くという、3発のキックで初めて一つのライダーキックみたいな感じで作ったら面白いのではと考え、アクション監督と相談してやりました」と完成までの経緯を明かした。
飛電或人/仮面ライダーゼロワン役の高橋文哉さんの第一印象について、「『可愛い感じで男前の子が来たな。芝居やったことないんだ』っていうのが正直な印象でした」と話し、「1、2話をやっていく上でしっかり意見交換し、芝居に関しても僕が納得するまで何度も何度も芝居してもらった。彼もそれに対してすごく食らいついてきてくれた」と感謝する。
続けて、「1、2話を見た人に『芝居うまくて、よかったね』とよく言われましたが、あれは1、2話をやりながら(高橋さんが)すごく頑張ってくれたから芝居上手に見えるだけ。彼の頑張りがあったから、あそこまで芝居として伸びている」とたたえ、「高橋君に関しては1、2話で急成長しているので、これからの成長はもっともっと楽しみ」と伸びしろに期待する。
また不破諫/仮面ライダーバルカン役の岡田龍太郎さんについては、「自分の世界観を持っている子」と評し、「自分をどう見せるかとか、どう見せたいかは常に考えている子なので、その点、手はかからない……いや手はかかるんですけど(笑い)。自分の見せ方を知っている子だなと思いました」と話す。
現場では岡田さんのアクションも評判となっているといい、「アクションに関してはカッコよく映りますね。こちらが想像している以上にカッコよく映る。思い切りがいいんでしょうね」と杉原監督も絶賛する。
杉原監督は「仮面ライダージオウ」の「アギト回」を担当しているが、再会したジオウチームの印象を聞くと、「相変わらずみんないい子たちでした。今回(奥野壮さん演じる)ソウゴですが、奥野君的にもオーマジオウを経た後のソウゴとして芝居をしたかったみたいで、僕としてもそうしてほしいというのがあった」と明かし、「落ち着いたソウゴで全編通してやってくれている。そういう意味でもジオウパートとしては見どころの一つになるのでは。ソウゴの先輩感が半端ないです(笑い)」と語る。
予告編で奥野さん演じるソウゴが見せる振り向きざまの笑顔が印象的だが、杉原監督は「“魔王の笑顔”でしょう。すごい余裕あるし、めっちゃいい笑顔。演出は僕じゃないです(笑い)。本人からにじみ出たものです」と明かす。
今回の映画について、杉原監督は「勝手な僕の意気込みなのですが……」と前置きし、「(タイトルに)“劇場版”と付いていなくて、1本の映画として撮っている。映画としての画の作り方とかにはこだわっています。一枚一枚の画、1カット1カットの画に力強さを持たせたというか、かなりこだわって毎カット撮っているので、熱量は画から伝わるかな」と自信をにじませる。
テレビシリーズでは鶴嶋乃愛さん演じるイズと井桁弘恵さん演じる刃唯阿/仮面ライダーバルキリーが人気を集めているが、「イズは基本的に常に可愛くやってもらってはいますが、映画では表現する上でイズがキーパーソンに。或人の頑張りに対してのイズというのがあって初めて成立する芝居があります」と杉原監督は話す。
井桁さんについては、「唯阿は(映画では)強さはそのままですが、何を一番に考えるかは違う表現にはなっている」といい、「アクションはすごかった。ガンアクションもそうですし、カーチェースのシーンの唯阿もカッコよかった。素晴らしいアクションをやってくれた。芝居も貪欲に食らいついてくるので、撮っていて面白い。違った一面の唯阿が見られるかな」と井桁さんの成長ぶりと努力を称賛する。
最後に、映画の見どころを聞くと、「或人は自分のことを仮面ライダーと呼んだことがない。物語の中で仮面ライダーがどういうものかを知るというか、自分の中で仮面ライダーとは何なのかを或人が再確認して、そこから自分のことを仮面ライダーと名乗るに至る話になっています」といい、「ジオウとしては最後の映画、ゼロワンとしては最初の映画。締めであり、新しい出発点であり、節目の映画としてふさわしいものになっている。新しい時代の幕開けに触れてもらえたら」とメッセージを送った。
(取材・文・撮影:遠藤政樹)
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