「私の人生で初めて愛に涙しました。自分が子供過ぎるからなのか、大人になったからなのか、分からないんですけど、自分でもすごく驚きました」。そう話すのは岩井俊二監督の新作映画「ラストレター」で、松たか子さん扮(ふん)する主人公・岸辺野裕里の高校時代と、裕里の娘・颯香(そよか)の二役を演じる女優の森七菜さんだ。昨年1月期に放送された連続ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)で注目され、新海誠監督の劇場版アニメ「天気の子」(2019年7月公開)では、ヒロイン・陽菜の声優を務めた、伸び盛りの18歳。これまでも「好きな人のために泣くってどういう気持ちなんだろうとすごく思っていたし、役を演じる時にもずっと探していた気持ちだった」と明かす森さんに、完成した映画の感想や撮影エピソードを語ってもらった。
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映画は、手紙の行き違いがきっかけで始まった二つの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描く。宮城に住む裕里(松さん)は、姉の未咲の葬儀で、未咲の一人娘の鮎美(広瀬すずさん、未咲との一人二役)から、未咲宛ての高校の同窓会の案内と未咲が鮎美に残した手紙の存在を知らされる。未咲の死を知らせるため足を運んだ同窓会で、姉と勘違いされてしまう裕里。そこで初恋の相手・乙坂鏡史郎(福山雅治さん)と再会し、勘違いから不思議な文通が始まる……。
広瀬さんと同じく、一人二役に挑戦した森さん。「何よりも裕里は松さんの高校時代なので、見てくれる方にそう受け取ってもらえるよう、松さんの出演番組を見て、仕草とか研究しました。言葉では言い表せない部分ではあるのですが、しゃべり方にも特徴があって、頑張って多少なりとも真似できたとは思います」と振り返る。
一方、颯香については「なるべく私から出てくるものでやろうと思った」といい、「加えて、颯香は楽しいことに進んでいく子なので、私の中の楽しい気持ちが100(%)出るように。あと颯香は中学生なので、高校生よりも知らないことが多くて、いろいろなことを珍しがる、というところも意識しました」と話す。
高校時代の裕里は先輩の鏡史郎(神木隆之介さん)に淡い恋心を抱いていて、その恋心ゆえ裕里は鏡史郎に対してうそをついてしまうことも。“初恋相手”の神木さんとは2018年放送のNHKのドラマ「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」で共演。当時から神木さんは「すごく謙虚で優しくて、細やかな気遣いをされる方」だったといい、「またお芝居をご一緒したいと思っていたので、こうやって再び共演できてうれしかったですし、裕里として気持ちが入りやすかったです」と笑顔を見せる。
「今回も大変だったシーンの後に『よく頑張ったね』って声をかけてもらったんですけど……。でも完成した映画を見たら、裕里と(広瀬さんの演じた)未咲に向ける顔が全く違っていて。とろけているというか、それを見たときは結構ショックでした。本当に裕里、脈なしじゃんって(笑い)」とちょっぴり悔しそうな表情をのぞかせていた。
改めて「人を好きになったことはありますけど、裕里のように好きだからうそをつきたい、そうまでして誰かに好かれたいと思って涙を流したりすることが、今までの私では理解できなかった」と素直に明かす森さん。だからこそ、完成した映画を見て、鏡史郎が未咲に向けた「愛」に触れ、自分自身が涙したことに「すごく驚いた」のだろう。
今回、森さんは映画のオーディションを受けるにあたり、初めて岩井俊二作品を目にしたというが、そこで驚かされたのが圧倒的なリアリティー。「まさに自分がずっとやってみたかったもので、この人たち(=登場人物)は台本があって、カメラがあって、存在するんじゃなくて、そこに存在しているからカメラを向けられているんじゃないかって思うような感じ。この人たちは、今もどこかで生きているんじゃないかなって思えるような作品でした」と印象を語る。
今や、そんな岩井俊二作品の一部となった森さんは「ラストレター」でもう一つの大役を担った。それは主題歌「カエルノウタ」の歌唱。作詞を岩井監督、作曲を小林武史さんが担当、そのまま森さんのデビューシングルとなった。以前、森さんは「スクリーンで最後に自分の歌が流れるのは、楽しみですが、すごく誇らしげな気持ちになるか、穴に入りたくなるか、どちらかだと思います」とコメントしていたが……。
映画が完成した現在は「誇らしい気持ちです」と話す。「岩井さんと小林さんが作った曲なので、そこはもう2人を信頼して、任せて出来上がったものなので、大好きな曲。宝物になりました」とうれしそうに話すと、今後の歌手活動に関しては「もし需要があれば」と謙遜していた。
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