岩井俊二監督の新作映画「ラストレター」に出演している女優の森七菜さん。昨年1月期に放送された連続ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)で注目され、新海誠監督の劇場版アニメ「天気の子」(2019年7月公開)では、ヒロイン・陽菜の声優を務めた伸び盛りの18歳は今回、松たか子さん扮(ふん)する主人公・岸辺野裕里の高校時代と、裕里の娘・颯香(そよか)の二役に挑戦した。「現場ではずっと役の気持ちを考えていたり、役に寄り添っている時間が多かったです」と明かす森さんに、女優業への思いなどを聞いた。
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森さんは2001年8月31日生まれ、大分県出身。2016年に大分県内でスカウトされ、芸能界入りした。2017年に人気グループ「嵐」の櫻井翔さん主演の連続ドラマ「先に生まれただけの僕」(日本テレビ系)で生徒役を務め、同年は、映画「心が叫びたがってるんだ。」にも出演。2018年には、連続ドラマ「獣になれない私たち」(同局系)で田中美佐子さんの独身時代を演じた。一般の視聴者に“発見”されたのは、やはり「3年A組……」からだろう。
「『3年A組』は私の人生の中でもターニングポイントになった作品というか。そこから街中で声をかけていただくことが増えましたし、同年代の方と同じ現場でお芝居をして、すごく刺激も受けたし、自分の出来ないこと、悪い部分と向き合うこともできました。メッセージ性が強い作品でもあったので、私自身、人間として教わることも多かったと思います」と振り返る。
「3年A組」のクラスメート以外にも、気になる同年代の女優は「たくさんいる」といい、彼女たちの出演作はもちろん、年の離れた先輩女優が自分と同じ年の頃に出ていた作品も「良く見ます」と明かす森さん。「もしかしたらそれは、私にもやるチャンスがあったのかもしれない役で、別の選択肢を見ることができるというか。私から生まれたものは私だけのもので、私にしかできないこともあるとは思うんですけど、この人が演じるとこうなるんだとか、私だったらどうするのかってことを考えることができるので、そういう方たちの作品を見るのもすごく楽しいです」と話すなど、演技に対する探究心は強い。
役作りでは「あまり決め込まないこと」を大事にしているというが、現場に入れば、演じる役が背負っているものの“重さ”や、その時間の“長さ”さえも「感じよう」と没頭する。「何も決めないっていうのも、周りからしたら迷惑な話かもしれないんですけど……。監督から『スタート』の声がかかってから思い付いたものを大事にしたいというか。相手の方から何か面白いものをいただけたら、すぐに対応できるような状態でいたいんです」とも。
「“スイッチ”みたいなものは特になくて。大げさに聞こえるかもしれないんですけど、気付くとその世界に入っている気がする」といい、「普段の日常を生きるように、映像の中でも、可愛い子ぶるでもなく、格好付けるでもなく、存在できたらいいなって毎回思うので、そこも大事にしている部分なのかも知れません」と結論付けていた。
話題作への出演が続き、注目度は日増しに高くなってきている森さんだが、普段はどんな女の子だろうか。オフの様子を聞くと、「なんか、ずっとお芝居のことを考えていますね」と苦笑い。「普段の生活の中でいろいろと込み上げてくる感情も、もしかしたら、どこかで使えるかもしれないって思ってしまうんです。ただ、そう感じた瞬間に気持ちが引っ込んでしまったり、ふとしたことで冷静になって、自分を客観視してしまって、『ここで泣いちゃう!』って時でも、涙が引っ込んでしまったりするのが実は悩みだったりするんですけど」と明かす。
そんな“女優純度”の高さも魅力だが、決して独りよがりなタイプではない。森さんも「自分たちが作ったものがたくさんの人に届いて、『3年A組』も『天気の子』も(戸田恵梨香さんの少女時代を演じた)『最初の晩餐』も『地獄少女』でも、それぞれで『一番。良かったよ』って言ってくださる方がいて。人の人生を変えられるくらいの作品に力を尽くせることに楽しさを感じています」と声を弾ませる。
「天気の子」の新海監督からかけられたある言葉から、自分のことを知ることができたという森さん。「新海さんは感じたことをスラスラと言葉にできる方で、もしかしたら言葉にしているよりずっと多くのことを考えていらっしゃるのかもしれないんですけど。そんな新海さんが私について『七菜ちゃんは生命感に満ちあふれていて、一日一日を楽しもうとしている』と言ってくださって、すごくうれしかったんですね。大好きな新海さんの目にそう映っているのもうれしかったですし、そういう自分のプラス面を初めて言葉にしてもらったので、すごく心に残りました」とうれしそうに話す。
改めて「3年A組」「天気の子」などで充実の日々を過ごした2019年について「驚くことが多かったですね。その前の年から決まっていたことだったんですけど、声のお芝居や歌のお仕事があって、あと先日は全国高校サッカー選手権大会の応援マネジャーもやらせていただいて。お芝居以外のお仕事でも見てもらえる機会が増えました」とにっこり。
露出が増えたことで否定的な意見も届くようになったというが、「そういうものも含めて、たくさんの言葉をもらえて、次の作品へ向かう上で、真摯(しんし)に向き合おうって今まで以上に思えましたし。自分への期待値がどんどんと上がっているので、予想外のことが起こっても対応できるように、学びの時間につなげていけたらいいなって、すごく思っています」と前向きに語った。
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