UFC247:高阪剛が見どころ語る ライトヘビー級タイトルマッチは「相当ハイレベルな戦い」 

「UFC247」に出場するジョン・ジョーンズ選手(右)(C)GettyImages
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「UFC247」に出場するジョン・ジョーンズ選手(右)(C)GettyImages

 世界最高峰の総合格闘技イベント「UFC247」が2月9日(日本時間)、米テキサス州ヒューストンで開催される。メインイベントはライトヘビー級タイトルマッチのジョン・ジョーンズ選手対ドミニク・レイエス選手で、ヴァレンティーナ・シェフチェンコ選手対ケイトリン・チョケイジアン選手による女子フライ級タイトルマッチも注目されている。WOWOWの「UFC-究極格闘技-」解説者を務める格闘家の高阪剛さんが“最強王者”ジョーンズ選手とMMA(総合格闘技)12戦全勝のレイエス選手の対戦など「UFC247」の見どころを語った。

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  ◇“カウンターにカウンター”「相当ハイレベルな戦い」

 --メインはジョーンズ選手とレイエス選手というライトヘビー級タイトル戦が組まれました。

 最強王者ジョーンズに、MMA無敗のレイエスが挑戦する頂上対決ですから、これは本当に楽しみです。

 --ジョーンズ選手はUFCのパウンド・フォー・パウンドランキング1位と、まさに“最強の中の最強”ではありますが、2018年12月復帰以降の戦いぶりに、一部で「ちょっと物足りない」との声もあります。高阪さんはどう感じていますか?

 確かに、以前のように超アグレッシブに攻めるシーンは少なくなっていますね。大人の戦いをするようになったというか。ただ、要はポテンシャルがそもそも高いので、相手の攻撃を流しながら自分の距離やタイミングでしか攻撃を出さない、という戦い方をしても、そこまで攻め込まれることがないと思うんです。

 --やや安全策をとっても、しっかり勝つことができていると。

 例えば、アグレッシブに攻めることを信条としていた選手が、「ちょっと俺は戦い方を変えた方がいいんじゃないかな?」と思って、ややディフェンシブな戦い方に変えると、大概やられるものなんですよ。でも、ジョーンズ選手がそうなっていないということは、より無駄のない攻めができるようになっている。だから競技者目線からすると納得できるんです。それが昔のジョーンズらしくないと言えば、そうなんですが(笑い)。

 --簡単に言えば、かつてのような“圧勝”が少なくなったのは、力が落ちたわけではなく、より隙(すき)がなくなったと。

 例えば、前回のティアゴ・サントス戦(2019年7月のUFC239)では、関節蹴り、サイドキックを頻繁に使っていたのも、サントスが途中で足を痛めたのを察して、そこを重点的に攻めることで確実に勝利をもぎ取った。そこでやみくもにKO狙いで前に出てカウンターをもらうリスクを回避しているんです。

 --アグレッシブに攻めてくれれば隙もできますが、そうじゃないということは、対戦相手にとっては、より厄介な存在になったのではないでしょうか?

 そうですね。そもそもあれだけリーチが長くて、攻撃の技も多彩で、隙を見せない。相手からしたら「俺は何をやればいいんだ?」ってなりますよ。そういう戦いをジョーンズ本人が極めようとしていて、なおかつ結果を出し続けているので、誰もそれを否定することはできない状況だと思います。

 --ジョーンズ選手は本格的に生涯無敗で現役を終えようと考えているのかもしれませんね。

 まだ若いですが、このままいくとそうなる可能性は高いですね。

 --レイエス選手はジョーンズ選手をどう攻略すると推測しますか?

 レイエスはずっと負け知らずできて、しかも上り調子ですから。心身共にすべてのバランスが取れている状態だと思うので、ジョーンズのスタイルを“厄介だな”とは考えず、しっかり自分の戦いができると思うんです。具体的な動きで言うと、クリス・ワイドマンやオヴィンス・サンプルーとやった試合では、バックステップをしながら後ろ手の左ストレートでダウンを奪っていたり。

 --ワイドマン選手との一戦のフィニッシュブローもそれでした。

 ライトヘビー級という体で、バックステップやサイドステップをしながら、しっかり拳に体重を乗せるっていうのは、じつは相当大変なことなんです。軽く打っても相手は倒れてくれないので。それがワイドマンはあんな倒れ方をしたわけですからよほど、拳に体重が乗ってないとああいうことにはならない。あれができるというのは、体幹の強さや当てる感覚がしっかりしていて、なおかつ力みなく自信を持って、打ち抜いているからこそだと思うんです。

 --体幹や当て勘、技術がそろっていて、なおかつ最高のタイミングでパンチを放つことができている、と。

 体が勝手に反応して動いてくれている状態だと思いますね。だからそれを、ジョーンズを相手にできるかどうか。しっかり顔面を打ち抜かないとジョーンズは倒れてくれないと思うので、レイエスは得意の左ストレートを当てるために、どこで何をするかが、一つのポイントになると思います。

 --カウンターを入れるために、ジョーンズ選手をいかに前に出させるかもポイントになりますか?

 そうとも言えます。レイエスは自分から打撃を当てにいくと思いますが、ただ前に出てパンチを出していっても、それがジョーンズに当たるかといえば、それはあまり想像できない。だとすると、先に仕掛けるのはレイエスだとして、ジョーンズが放つカウンターの打撃をさらにカウンターで返すということができれば、倒すチャンスがくる。そこだと思いますね。

 --カウンターの取り合いになるんじゃないかと。

 ジョーンズはそういうリスクを負わないためにスタイルを変えているので、なかなかその術中にハマることはないと思いますけど。体幹が強くて神経が研ぎ澄まされた状態のレイエスなら、ジョーンズが“いける”と思った瞬間に、冷静に切り返して得意の左ストレートを入れることができるかもしれない。そうなると面白いことになりますね。

 --無敵のジョーンズ選手が倒れるシーンが見られるかもしれないと。

 そうですね。ただ個人的には、ジョーンズがその想像を超えるような戦いをして、驚かせてくれることも期待しています(笑い)。いずれにしても、相当ハイレベルな戦いになることは間違いないですよ。

 ◇シェフチェンコ選手対チョケイジアン選手 ポイントは「距離」

 --シェフチェンコ選手対チョケイジアン選手の見解はどうでしょうか?

 王者シェフチェンコは、このところ総合格闘家としての能力の高さを見せつけています。フライ級転向後、4試合連続で完勝していますし、この階級がすごく合っているんでしょうね。シェフチェンコは決して手足が長いわけではないので、1階級上のバンタム級では、ステップで刻んで中へ中へ入っていかないと、パンチを当てることができなかった。バックスピンキックやバックハンドブローを多用していたのも、“届かない”ということが大きかったと思うんです。それがフライ級に転向してからは、踏み込んでしっかり左右のワンツーを当てたり、カウンターで前手のフックを入れたり、組んで首相撲からのヒザ蹴りなど、やりたい放題できている。楽しんで試合をしている気がします。

 --グラウンドも強くなってきています。

 また、その場面場面で自分の多彩な武器から、最適なものをチョイスする能力にもたけていますよね。だから試合の中で修正もできるし、崩れることが少ないんです。

 --チョケイジアン選手は、フライ級で最も長身で、リーチも長い。シェフチェンコ選手のフライ級でのアドバンテージを消す存在でもあるかと。

 そうですね。チョケイジアンはパンチで距離を測って、自分の距離での打撃で追い込んで、相手が顔を背けたところにハイキックを入れるのを得意としていますが、あの身長があるからこそできることです。チョケイジアンは自分の射程距離にいる相手に対してはすごく強い。だからシェフチェンコは、どれだけ中に入れるかがポイントだと思います。

 --距離をなくせるかどうか。

 チョケイジアンは、序盤から手数が多いタイプですが、それは自分の距離設定を早くしたいのと、相手を中に入らせない“防御壁”を作るためだと思うんです。その防御壁に相手が阻まれると、チョケイジアンのペースで試合は進みますが、シェフチェンコは一発もらっても前に出て行ける選手なので、それをやられたらチョケイジアンはキツいでしょうね。

 --自分の距離で強いということは、逆に言えば防御壁、結界を破られたらもろいと。

 チョケイジアンは組まれてからの対処もそこまでうまいわけではなく、テークダウンも結構取られますからね。フィジカル面で上回るシェフチェンコに組まれたら、そこからはかなりキツいと思います。だからチョケイジアンは、入ってこられないような結界が張れるかどうか、そしてシェフチェンコはそれを破れるかどうか。この一戦は、そこが最大のポイントでしょう。

 *……試合の模様は、「生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC247 in ヒューストン 絶対王者ジョーンズ&女子フライ級王者シェフチェンコ、ダブルタイトルマッチ!」と題し、2月9日正午からWOWOWライブで生中継。

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