「第92回アカデミー賞」で作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホさんが来日し、2月23日、日本記者クラブ(東京都千代田区)で会見した。今回の受賞について「賞を取るために映画を作ったわけではないですが、喜ばしく光栄なこと」と話し、「(公開された)どの国の人も熱く反応してくれて、そのことをうれしく思っています」と語った。
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会見では同作の2月22日までの興行収入が30億6000万円を突破し、日本国内における韓国映画歴代1位となったことが発表された。ポン監督は「映画を見て熱く反応した日本の観客のみなさまに感謝します」と喜んだ。世界各国で受け入れられている理由について聞かれ、「なぜ受け止められたのか、よく分からないんです。この映画は国際的に熱い反応を得ることを意識して作った作品ではありません」といい、「今起こっていることに、私自身も不思議に思っています」と心境を語った。
「パラサイト 半地下の家族」はポン監督の最新作。“半地下住宅”に暮らす貧しい一家と“高台の豪邸”で暮らす裕福な一家という相反する二つの家族が出会い、徐々に貧しい一家が裕福な一家にパラサイトしていく……というストーリー。
「格差」が同作のテーマとして注目されることが多いが、ポン監督は「(格差による)二極化の事実を暴きたかったという意図よりも、未来に対する恐れという感情がありました。未来の社会が二極化を克服しうるのか。それがたやすいことではないと思ったのです。今後どうするべきか、すべての人が抱えていることを率直に表現したいと思いました」と語った。
またポン監督は、日本映画界との関係について「日本には親しくしている監督がいます。日本は長い映画の伝統、歴史を持っている。優れた監督、歴史的な存在がいるという印象を持っています。今村昌平監督をはじめ黒沢清監督、阪本順治監督、是枝裕和監督の作品はどれも好きで、長い付き合いもあります。もちろん(2006年に死去した)今村昌平監督とはお目にかかったことはないですけど」と語り、「日本ではマンガ、アニメーション産業が国際的に広く知られていて、そこに焦点が置かれるかもしれませんが、私個人としては、日本の監督やフィルムメーカーが持つ幅広い世界にとても興奮を覚えます」と話した。
さらに過去作「グエムル-漢江の怪物-」では、未知のウイルスによって混乱する人々を描いたが、新型コロナウイルスの感染が拡大する現状について「最近の状況を見ていると、浦沢直樹さんの『20世紀少年』を思い出します。現実と創作物が相互に侵入しあうのは、自然なことだと思います」とコメント。「『漢江の怪物』では、存在しないウイルスを巡り、パニックや騒動が描かれました。今は映画と違う状況ですが、この事態を恐れすぎたり、過度に反応したり、国家や人種の偏見なども加わってしまうと、より恐ろしいことになるのでは」と警鐘を鳴らしていた。
「パラサイト 半地下の家族」は、第72回カンヌ国際映画祭でも韓国映画初となる、最高賞のパルム・ドールを受賞。アカデミー賞作品賞とパルム・ドールのダブル受賞は、パルム・ドールを1955年、アカデミー賞作品賞を1956年に受賞した「マーティー」以来。
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