攻殻機動隊:新作「SAC_2045」が描く未来 3DCG、モーションキャプチャーで芝居を強化

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「攻殻機動隊 SAC_2045」を手がける荒牧伸志監督(左)と神山健治監督

 士郎正宗さんのマンガ「攻殻機動隊」が原作の新作アニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」がNetflixで配信がスタートした。「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)」シリーズの神山健治さんと「APPLESEED」の荒牧伸志さんが共同監督を務め、シリーズで初めてフル3DCGアニメとして制作。「攻殻機動隊」はこれまで「未来を予見してきた」とも言われてきた中で、新作で描かれる「未来」に注目が集まっている。3DCGによる新しい「攻殻機動隊」とは……。神山監督、荒牧監督に聞いた。

 ◇ドラマ、キャラクターの演技をしっかり見せる

 「攻殻機動隊」は、近未来の電脳化社会を舞台に架空の公安組織の活躍を描いたマンガで、1989年に展開が始まった人気作。押井守監督が手がけた劇場版アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「イノセンス」のほか、「S.A.C.」シリーズ、「攻殻機動隊ARISE」シリーズなどが制作されてきた。スカーレット・ヨハンソンさん主演で実写化したハリウッド映画版も話題になった。神山監督が手がけた「S.A.C.」シリーズは第1期が2002~03年、第2期が2004~05年に放送。2006年には長編「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」も制作された。

 「SAC_2045」が制作されることになったのは約5年前、旧知だった荒牧監督とプロダクション I.Gの石川光久社長がゆうばり国際ファンタスティック映画祭で再会したことがきっかけになった。荒牧監督が「フル3DCG、モーションキャプチャーで『攻殻機動隊』を作ってみたい」「神山監督と一緒にやりたい」と提案した。

 荒牧監督は「『S.A.C.』シリーズはキャラクターの等身、空間がリアルで、ドラマが緻密に組み立てられていました。それに、モーションキャプチャーはドラマを作るのにも有効という手応えもあった」と考えていた。

 神山監督は「モーションキャプチャーに可能性を感じた」と快諾した。一方で「これまで『攻殻機動隊』を作ってきた中で、3D向けではないとも思っていた」とも明かす。

 「作画(2D)は一カットしか出てこないものでも描いてしまえばいい。3Dはコストの問題があり、意味、意義がないものは作ることができない。作画はアニメーターの力量でリカバリーできるから、『S.A.C.』はそこを生かしていたけれど、3Dでは難しい。作画はアクション、設定、情景描写の自由度が高いのですが、その半面、リアルな演技は、記号化することでしか成立しない。作画と3Dでは得意、不得意が真逆なんです。今回は、モーションキャプチャーで芝居を強化することで、作画ではできない部分をしっかりできるとは思っていました。やりながら分かったところもあるのですが」

 「SAC_2045」のカメラワークは実写的にも見える。荒牧監督は「CGっぽく、グリングリンとカメラが動くのではなく、きっちりしたカメラワークでドラマ、キャラクターの演技をしっかり見せようとした。CGということを気にせずに、ストーリーに没入してもらいたかった」という思いがあった。

 キャラクターを3Dでモデリングする際もリアリティーにこだわった。神山監督は「マンガっぽい頭身に見えるかもしれないけど、脚の長さ、関節などがリアルなんですよ。リアルにしすぎると、格好悪くなるけど、そうならないようにするのに苦労しました。日常のシーンで違和感がなく、アクションでは格好よく見えるように、バランスをとらないといけなかった」と話す。

 ◇サスティナブルウォー、シンギュラリティーというキーワード

 神山監督は「攻殻機動隊」シリーズについて「自分はしばらく離れていて、いろいろな監督が手がけるシリーズになっていますが、昔からこの題材が持っているポテンシャルにすごくひかれていました。自分が描きたいことに向いている、相性がいいというところもあります」と話す。神山監督が手がけた「S.A.C.」シリーズは「未来を予見してきた」とも言われてきた。新作では何を描くのだろうか?

 「今はどういう時代なのか? 悪いところ、いいところは何か? 何が足りないのか? 例えるなら、ドラえもんのポケットから出てくる道具を現代社会に立脚していく。僕のスタイルなので、今回も踏襲させてもらいました。それを『攻殻機動隊』の世界観に組み込むことで、何が見えてくるだろう? どういう未来像が見えてくるのか? テーマというより題材と言っています。『攻殻機動隊』で描かれたAI、今の生活の中にあるAIと違うところ、同じところを照らし合わせました」

 持続可能な戦争(サスティナブルウォー)、AIが発達して人間の知能を超えるシンギュラリティー(技術的特異点)というキーワードが見えてきた。

 「草薙素子たちは戦争屋。刑事としての草薙素子じゃないところも描きたかった。今の時代は、ある種の世界大戦が起きてしまった時代ではないか? ミサイルが飛んでくるわけではないけど、戦争をしている。産業としての戦争が社会に組みこまれている時代なのかもしれない。そこで、サスティナブルウォーというワードが出てきたんです。AIがどんどん生活に入ってくる中で、2045年ごろにシンギュラリティーがくるとも言われている。戦争をAIに管理させると、産業として効率がいい。そうやって社会の中に組み込まれているのが今なのかもしれない。そういう題材を見つけたんです。そこに、キャラクターを投入する中で、テーマが見えてくるだろう……と組み立てました」

 新作の企画が立ち上がった約5年前から社会が大きく変化した。「シナリオを開発する中で、社会の変化に追い抜かれるかも……」とも感じた。

 「『S.A.C.』の時よりも社会の動きが速くなっている。5年前、中国がこれだけ国際社会に影響力を持つとはあまり思われていなかった。『攻殻機動隊』の世界では、日本はテクノロジー大国として描かれてきました。1980、90年代に日本が成熟し、その産業構造が国際社会で注目されましたが、世界はまだまだ流動的で、考え方が大きく変わっている。日本は新興衰退国になっているんじゃないかな?と見えてきた。認めたくない思いもあるのですが、そうアプローチできるかもしれないと考えました」

 3DCGによる表現、この時代だから描ける題材によって「SAC_2045」は全く新しい「攻殻機動隊」になった。未来を予見することになるのだろうか……。

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