上白石萌音:「恋つづ」ヒット支えた“共感力” シンデレラから国民的愛され女優へ

上白石萌音さん
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上白石萌音さん

 女優の上白石萌音さんと俳優の佐藤健さんが共演し、数々の胸キュンシーンを生み出した連続ドラマ「恋はつづくよどこまでも(恋つづ)」(TBS系)のブームが、まだまだ終わらない。特別編放送も盛り上がりを見せ、続編を希望する声も多いが、これほどまでにファンを魅了したのは、「魔王」と呼ばれるドSなドクター・天堂先生(佐藤さん)のイケメンぶりだけでなく、そんな彼をゾッコンにしてしまう七瀬(上白石さん)の愛らしさだ。上白石さん演じる七瀬がほほ笑むと、優しい風が吹いたかのような温かさに包まれるが、彼女自身から思いやりあふれる人柄がにじみでるからこそ、体温の感じられる七瀬が誕生し、「魔王」に愛される「勇者」に、確かな説得力を与えた。

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 ◇天堂が恋に落ちた、七瀬のひたむきさ

 ドラマは、円城寺マキさんの同名マンガ(小学館)が原作。偶然起きた出来事で医師の天堂に出会って恋をした七瀬が、彼に会いたい一心で猛勉強し、晴れて看護師に。天堂に素直な思いを伝え続け、くじけず突き進む「勇者」の七瀬と、「魔王」天堂の恋模様をユニークに描いた。

 最初は「この先、俺とお前がどうこうなる可能性は0.0001%もない!」と豪語していた天堂。彼が七瀬に惹(ひ)かれていく過程を見てみると、彼女のひたむきな背中がいつもそこにあった。第1話で七瀬は小児科で入退院を繰り返す患者の不安に気づき、第4話では娘の結婚式に行きたいと願う患者のために奮闘。七瀬が常に相手の立場に立って物事を考え、人を励ますことのできる女性だったからこそ、天堂は恋に落ちた。誰かのために一生懸命に突き進む七瀬、そして、そんな彼女を見つめる天堂の穏やかなまなざしに触れ、幸せな気持ちになった視聴者も多いはずだ。

 ◇相手の気持ちに寄り添う、上白石萌音の“共感力”

 現在22歳の上白石さんは、2011年に行われた第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞し、芸能界入り。周防正行監督の映画「舞妓はレディ」で約800人が参加したオーディションを勝ち抜き、16歳にして映画初主演を果たした。ミュージカルタッチの映画とあって、歌やダンスも披露。なまり全開の素朴な少女が舞妓として花開いていく姿を見事に表現した演技力、透明感あふれる歌声で観客をとりこにし、第38回日本アカデミー賞では新人俳優賞を受賞している。また大ヒットした劇場版アニメ「君の名は。」では、ヒロイン・三葉役として声優にチャレンジ。声の演技も素晴らしく、さらに英語力もあるというから、上白石さんのあらゆる才能には驚かされるばかり。いわゆるハイスペック女子と言えよう。

 しかし、トーク番組や舞台あいさつなどを目にしても、上白石さんは決してそれをひけらかすことなく、思いやりあふれる人柄が伝わる。第7回「東宝シンデレラ」オーディションには、妹の萌歌さんや女優の浜辺美波さんも参加していたが、オーディション合宿ではダンスがうまく踊れず戸惑う浜辺さんを、上白石(萌音さん)さんが支えるという場面があった。この美しき2人の少女の姿は、双方のファンの間で今でも語り草となっている。

 また恋愛映画に初挑戦した「L・DK ひとつ屋根の下、『スキ』がふたつ。」では、杉野遥亮さん、横浜流星さんというイケメン2人が演じる男性との三角関係に身を投じた上白石さん。完成披露の舞台あいさつでは、ヒロインに選ばれたのは「何かの手違いか人違いかと思った。信じられなかった」と率直に打ち明け、迎えた初日では「何人がこの役をやりたいだろうと思うと、本当に申し訳ない。ごめんなさい!」と劇場に駆けつけた横浜さん、杉野さんファンの気持ちに寄り添った。いつもキャストだけでなく、スタッフへの感謝を口にしているのも印象的で、上白石さん自身も「恋つづ」の七瀬と同じく、相手の気持ちの分かる“共感力”の高い女性だと感じる。

 ちなみに同映画の舞台あいさつでは、サインを書いたゴムボールを会場に投げ入れる一幕もあったが、遠くに投げようと大きく振りかぶりながらも、すぐ近くの観客にボールを当ててしまうなど、上白石さんのドジっ子ぶりに会場も大爆笑。こんな姿も何とも可愛らしく、改めて考えてみると、上白石さんにとって「恋つづ」の七瀬は大変なハマり役だったと思う。「恋つづ」のインタビューでは、佐藤さんも「人間力があります。頼っちゃっています」と上白石さんの人柄を絶賛していた。“人を幸せな気持ちにさせる力”は、なかなか磨こうと思って手に入れられるものではない。優しい風を吹かすことのできる上白石さんが、これからも日本エンタメ界の大きな光となることだろう。(成田おり枝/フリーライター)

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