人気ゲーム「ファイナルファンタジー VII」のPS4向けフルリメーク版「FINAL FANTASY(FF) VII REMAKE」の販売本数が、4月10日の発売から3日間で全世界累計で350万本、国内で100万本を突破し、大きな話題を呼びました。分作の第1作目ながら、価格が8980円と高額であることなどから、当初は決して歓迎されたというわけではありませんでした。しかし、蓋を開けてみると売れ行きは好調で、評価も非常に高いものになっています。なぜ批判される記事が目立ったのか、そしてなぜ批判をはね返すヒットを記録したのでしょうか……。オリジナル版が発売された1997年、当時小学5年生だった、現在34歳のオールドファンが語ります。
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「FFVII」は、1997年にプレイステーション(プレステ)で発売され、ファンタジー世界を舞台にしたそれまでのRPGとはいっぷう変わったスチームパンク風の世界観や魅力的なキャラクター、当時最先端の技術を駆使した映像が多くの人を魅了し、これまでに全世界での累計販売本数が1240万本を突破しています。
発売された1997年は、プレステとセガサターンの次世代ゲーム機戦争がエスカレートしていた時期です。3Dグラフィックのゲームが徐々に増えてきたものの、まだまだアクションゲームが多く、多くのユーザーに支持されていたRPGというジャンルでいえばドット絵が主流でした。そんな中発表された「FFVII」は、これまでにないリアルなグラフィックで街や風景、キャタクターが描かれ、当時のゲーマーの度肝を抜きました。ゲーム雑誌を片手に、友達と「すげぇ」と盛り上がったことは、今でも記憶に焼き付いています。
また、大人向けなストーリーが、小学生だった記者にはとても刺激的でした。FFVIIではスチームパンク的な世界観が広がり、政治をも牛耳る超巨大企業「神羅カンパニー」の存在、エネルギーや環境問題といった社会情勢が色濃く描かれている、エアリスの死をリアルに描いた点などが、当時のRPGとは一線を画していたと思っています。このゲームが発売から23年たっても多くの人から支持されている理由は、グラフィックのインパクトだけでなく、こうしたストーリーによるところも大きいのではないでしょうか。
さて、FFVIIRの存在が初めて明かされたのはオリジナル版の発売から18年後、2015年6月のことです。米ロサンゼルスで開催されたゲーム見本市「E3 2015」内で、制作されていることが発表され、同時に映像がお披露目されました。YouTubeなどで当時の会場の様子の動画が公開されていますが、美しくよみがえった主人公・クラウドたちに、観客たちが興奮している姿が印象的です。FFVIIの人気は、海外でもすさまじいものであると、実感させられます。
ところが同年12月、FFVIIRが分作となることが、スクウェア・エニックスから発表され、ネット上で大きな波紋を呼びました。そこで起こった批判の主なポイントとしては、「元々一つの作品だったものを分割する」という点です。さらにその後、8980円(税抜き)という価格が発表されると「分作にもかかわらずフルプライス」というところもネットで反響を呼び、同時にこれらの意見に乗っかった批判記事も、ネット上で散見されました。
決して印象が良くなかった中で、蓋を開けてみると発売から3日間でミリオンセラーを達成したわけです。ある種マイナスからのスタートに思われましたが、これだけFFVIIが支持されるのはなぜなのでしょうか。
ここからは記者の分析ですが、ネットで目立った意見は「分作商法」「なのにフルプライス」と、ある種分かりやすく批判しやすいポイントではありますが、肝心のゲームとしての内容に触れておらず、非常に表層的、一面的であるという印象です。
そして発売後、これらの批判が目立たなくなった理由として、「FFVII」というブランド、23年たっても色あせなかった作品自体の魅力が、批判を上回ったのではないかと、記者は考えています。そもそもファンは「分作でも構わなかった」「大好きだったゲームが23年ぶりに最高のクオリティーで復活すること自体がうれしかった」のだと思います。記者も分作などの批判は当初からあまり気にしておらず、それよりも「あいつらにまた会える」という期待の方が大きかった1人です。
もちろんゲーム自体の内容も良く、発表から5年待ったファンの期待に応えるものでした。これも批判が目立たなくなった大きな理由でしょう。単なる切り売りではなく、フルプライスに見合ったボリュームで、クリアするまでに30時間以上は時間を費やしましたし、やり込むと倍近い時間は遊ぶことができます。
また、昨今のRPGで主流となっているアクション要素を、FFシリーズ伝統のATB(アクティブタイムバトル)とうまく融合させた最先端の戦闘システムに進化させたことも、楽しめました。オールドファン向けには、AIがアクションを補完してくれて、従来のコマンドバトルのようにプレーできる“クラシックモード”が実装されています。ゲーム離れが長かったユーザーでも、「久しぶりにFFをやってみるか」と手を伸ばせる作りになっています。
サイドストーリーも充実しており、オリジナル版ではスポットが当たらなかったモブキャラの人物像が大きく掘り下げられていることも、好意的に見られているようです。特に序盤から登場するアバランチのメンバーであるビッグス、ウェッジ、ジェシーの活躍は非常に魅力的でした。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、オリジナル版と今回のFFVIIRのストーリーには違いがあります。「ひょっとしたらオリジナル版に置いてきた“宿題”を取りに戻れるのでは」という淡い期待を抱くこともできました。ただグラフィックが奇麗になっただけの作品ではないことも、FFVIIRが成功した理由ではないでしょうか。
マイナスイメージが先行したものの、オリジナル版自体の圧倒的なブランドパワーと、作品としてのクオリティーの高さでそれをはね返してくれた今回のFFVIIR。ミリオンヒットを記録し、根強いファンが多くいることを改めて証明してくれました。だからこそ次回作への期待も高まるばかりですが、きっとその期待にも応えてくれるはずです。ただ、23年来のファンである記者は、1年に1作程度のペースで発売してほしいと願っていますが果たして……。
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