地球防衛軍:“廉価版”から生まれた異例のヒットシリーズ ファンの心を掴んだ理由

2003年に発売された第1作「THE 地球防衛軍」(上)と2021年発売予定の最新作「地球防衛軍6」(C)2003 SANDLOT(C)2003 D3 PUBLISHER (C)SANDLOT(C)D3 PUBLISHER
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2003年に発売された第1作「THE 地球防衛軍」(上)と2021年発売予定の最新作「地球防衛軍6」(C)2003 SANDLOT(C)2003 D3 PUBLISHER (C)SANDLOT(C)D3 PUBLISHER

 地球防衛軍の一兵士として巨大生物やエイリアンと絶望的な戦いを繰り広げるアクションシューティングゲーム「地球防衛軍」(ディースリー・パブリッシャー)。先日、3年ぶりの新作「地球防衛軍6」の制作が発表されると「地球防衛軍」が検索ランキングのトップに輝くなど話題を集めた。累計250万本近い売り上げを誇る人気シリーズとして知られるが、数々のヒット作と異なり、実はいっぷう変わったところから産まれたシリーズだ。シリーズの歴史を振り返りながら、著名人の心も掴むオンリーワンの魅力を解説する。

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 「地球防衛軍」は、その名の通り、プレーヤーが地球防衛軍の一兵士となって、地球の平和を脅かすさまざまな侵略者と戦いを繰り広げるアクションシューティングゲームだ。敵の種類はアリやハチ、クモなどの形をした巨大生物や、UFO、ロボット、怪獣、異星人と多岐にわたり、大地を埋め尽くすほどの大群で襲いかかってくるそうした侵略者を相手に孤独な戦いを挑むのだ。

 「地球防衛軍」は、2000円のプレイステーション(PS)2向け廉価版シリーズ「SIMPLE2000シリーズ」の第31弾「THE 地球防衛軍」として、2003年に産声を上げた。廉価版ソフトとは思えないグラフィックや、単純ながらやり込めるゲーム内容は、ネットを介してじわじわと評判が広がっていき、最終的に16万本というスマッシュヒットを記録した。映画など他のジャンルと異なり、単価の高い家庭用ゲーム市場にあっては、ヒット作の続編や著名クリエーターをそろえた大作ソフトが圧倒的に有利だが、廉価版からの異例のヒットとして話題となった。

 好評を受け、「SIMPLE2000シリーズ」の第81弾として2005年に登場したのが「THE 地球防衛軍2」だ。いわゆる歩兵にあたる前作の「陸戦兵」に加え、体力は少ないが空を飛べ、使える武器も異なる「ペイルウイング」という兵種を新たに追加。バリエーションが大幅に増えたこともあって、よりユーザーの評価が上がった。

 なお、MANTANWEBの前身サイトでもあるゲーム感想文投稿サイト「ゲームクエスト」に寄せられたユーザーからの感想も1000件を超えるなどネット上での口コミも過熱。後に発売されたPSP版「地球防衛軍2P」、PSVita版「地球防衛軍2PV2」を合わせると60万本というヒットにつながった。

 HDゲーム機であるXbox360向けに開発された2006年の「地球防衛軍3」からは、ついにフルプライスになったが、HDに対応した圧巻のグラフィックで描かれた巨大生物の大群のインパクトは強烈だった。後に発売されたPSVita版「地球防衛軍3P」と合わせて25万5000本というヒットを記録している。

 第2のターニングポイントとなったのが、7年ぶりの新作として2013年に発売された「地球防衛軍4」だった。発売時からのマルチプラットフォーム戦略により、Xbox360に加えてPS3でも発売。「陸戦兵」にあたる「レンジャー」、「ペイルウイング」の流れをくむ「ウイングダイバー」に加え、空爆などの支援攻撃にたけた「エアレイダー」、パワードスーツに身を固めた「フェンサー」と計4兵科で遊べるようになったことで、さらにゲームとしての広がりができたほか、マルチプラットフォーム化で多くのユーザーの支持を集めた。

 その後も「地球防衛軍4.1」(PS4・PC)、「地球防衛軍5」(同)とシリーズを追うごとに売り上げを伸ばしているほか、スピンオフ「EARTH DEFENSE FORCE:INSECT ARMAGEDDON」(PS3・360・PC)、「EARTH DEFENSE FORCE:IRON RAIN」(PS4・PC)なども発売されている。

 どうしてここまでの人気になったのか。一つには単純な爽快感があるだろう。確かに巨大アリの大群が地平線の彼方から押し寄せてくるさまは戦慄(せんりつ)すら覚えるが、その大群に向かってロケットランチャーを打ち込んでけ散らしていくのはまさに快感の一言だ。

 さらに、難易度によって敵が落とす武器の強さが変わってくるというゲームシステムもポイント。手に入れた新しい武器でより強い敵と戦い、さらに強い武器を手に入れるという一連のサイクルによって、とことんまでやり込めるのだ。今では多くのゲームで採用されているが、2003年のシリーズ第1作の時点で取り入れられているのは驚き。難易度を任意にいじれるほか、終わりがはっきりするステージ制なので、気軽に遊びやすくやめやすいのも大きい。

 そして最後の一つが、特撮作品やハリウッド映画にも通じるストーリー設定だ。質、量ともに圧倒的な侵略者の攻勢によって、戦況は悪化の一途をたどる。地球を救う最後の希望としてプレーヤーが孤軍奮闘する……という絶望的なシチュエーションはある種の悲壮感すら覚える。ネット上での口コミがヒットにつながったシリーズだが、こうしたストーリーがファン同士の連帯感にもつながっているのだろう。そして、現在ではその連帯感がプレー動画配信にまで広がってきている。

 著名人の中にもファンを公言する人は多く、今年6月には、俳優の風間俊介さんが、情報番組「ZIP!」(日本テレビ系)の中で、「地球防衛軍5」を紹介。発売から3年がたつにもかかわらず、いまだに遊んでいることを明かしてネット上で話題を集めた。

 6月23日にはナンバリングの最新作「地球防衛軍6」(2021年発売予定)と、シリーズの歴代キャラが総登場するスピンオフ「ま~るい地球が四角くなった!? デジボク地球防衛軍 EARTH DEFENSE:WORLD BROTHERS」(2020年発売予定)の発売が発表。3年ぶりのビッグニュースに「地球防衛軍」が検索ランキングのトップになるなど話題を集めた。ついに再始動する地球防衛軍の新たな戦いにこれからも注目したい。

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