俳優の吉沢亮さんと女優の杉咲花さんがダブル主演する映画「青くて痛くて脆い」(狩山俊輔監督)が、8月28日に公開される。原作は、デビュー小説「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」が映画化された住野よるさんの同名小説で、吉沢さんは主人公の大学生・田端楓を演じている。話題の映画やドラマに多数出演し、2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」では主演を務めることが決まっている吉沢さんに、今作での役作りや杉咲さんとの共演の感想、今後について聞いた。
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「世界を変える」という大それた目標を掲げ、秘密結社サークル「モアイ」を設立した大学生の田端楓(吉沢さん)と秋好寿乃(杉咲さん)。ところが秋好は突然、“この世界”からいなくなり、モアイは社会人とのコネ作りや企業にこびを売る就活サークルに成り下がった。「大切な仲間」と「居場所」を奪われた楓は、モアイ奪還計画を実行していく……というストーリー。
楓を演じるにあたって、吉沢さんがまず意識したのは、「相手との距離感」だった。吉沢さんによると楓は、「もともと他人にあまり近づかないというテーマで生きていた人間」。そのため、最初は吉沢さんも「コミュニケーション能力が高すぎてもおかしなことになると思った」と楓を表現する。
しかし、楓は秋好がいなくなったあと、復讐(ふくしゅう)していくためには、「周りの人間を利用しなければならない。そのためにはある程度のコミュニケーション能力が必要」と判断。そこで、秋好と出会った頃の楓と、モアイ奪還計画に協力する友人の前川董介(岡山天音さん)や、モアイの幹部・天野巧(清水尋也さん)と向き合う楓とでは、「相手との距離感はだいぶ違うはず」と考えながら演じていったという。
吉沢さんは、これまでもたびたび、心に闇を抱えた人間を演じてきた。そんな吉沢さんから見て、今回の楓は「勝手に自分で落ちていっているだけ。勝手に勘違いして、勝手に自分で反省して、自分で完結して、それに他人を巻き込んでいる、すごく身勝手な人間」と映った。
半面、そんな闇の抱え方は「割と誰にでもあるのではないかとも思った」という。「他人から見るとめちゃくちゃ痛いし、ダサいと思うけれど、それだけでは片付けられない。自分を傷つけたくないというプライドみたいなものは理解できました」と楓を評する。
今作に見せ場は数々あるが、その一つが、モアイへ復讐する、とあるシーンだ。そこで浮かべる楓の“不敵な笑み”については、「あそこは長回しで撮っていったのですが、冷静に考えると相当やばいことをやっている。アドレナリンが出すぎて感情があふれ出てしまったのでしょう」と説明する。
全力疾走するシーンでは、カメラを積んだ軽トラックと並走。「大変だと思いながら、めちゃくちゃ走りました。あれを撮っているときに、『これは青春映画』だったんだと気づかされました」と苦笑交じりに明かす。
楓と対照的なのが、杉咲さん演じる秋好だ。秋好は理想が高く、真っすぐで、それが時に、“空気が読めない”発言を生んでしまう。秋好に対して吉沢さんは、「僕が大学生だったら痛いと映るかもしれないけれど、今、会ったら、『こんなことを本気で言う人がいるんだ。この人、面白い』と思うと思います」としながらも、「ただそれも、はたから見ているからであって、実際近くにいたら、近づきたくなくなるのかな」と打ち明ける。
秋好を演じる杉咲さんとは、2018年公開の映画「BLEACH」(佐藤信介監督)で共演したが、そのときは一緒に登場するシーンはほぼなかった。もともと杉咲さんに対して、「お芝居がすてきな人だと知っていましたし、いつか一緒にお芝居してみたい」と思っていただけに、今作で共演できたことを素直に喜び、「杉咲さんが秋好を演じることによって、秋好の発言がすごく真実味を帯びて、ただの〝痛いやつ″から〝めちゃくちゃ魅力的な女性″になりました」と杉咲さんを称賛する。
そんな杉咲さんの“すてきな演技”に触れ、当初、楓は秋好に対して恋愛感情はないと思っていた吉沢さんも、撮影初日に2人で人形劇をする場面で杉咲さんの笑顔を見たとき、「あ、楓は秋好のことがたぶん好きだな」と感じ、楓の気持ちに寄り添えたという。
「どの現場でも、新しい人と組むと何かしらの発見があります」と話す吉沢さん。特に新しい監督と組み、「その人の価値観でお芝居する」とき、その思いは増すという。今作でメガホンをとったのは狩山監督だ。過去の監督作に「映画 妖怪人間ベム」(2012年)があり、今年放送された連続ドラマ「知らなくていいコト」で演出を担当するなど、ドラマをおもに手がけてきた。
今作の撮影中、狩山監督からは、瞬間、瞬間の表情の変化など細かい演技を求められ、吉沢さんは「ドラマ的な演出が、映画の中でどうなっていくのだろう」と好奇心を刺激されたという。完成した作品を見て、「こういうふうにつながるんだ!という発見がとても多くて面白かったです。見ている人にも(感情が)伝わりやすいと思いました」と、新しい出会いによってもたらされた収穫に感謝する。
現在26歳。2009年にデビューし、2011~2012年に放送された「仮面ライダーフォーゼ」で人気を得た。2019年にはNHK連続テレビ小説「なつぞら」に出演。2019年公開の映画「キングダム」(佐藤信介監督)では、第43回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞するなど、約10年の間に着実に足跡を残している。
これまで、「先のことを見据えて何かをするということはあまりしてこなかった気がします。考えても、せいぜい1、2年後の作品に向けてくらいです」と語る吉沢さんだが、その「1年後」には、渋沢栄一役で主演を務める大河ドラマ「青天を衝け」の放送が始まる。
「もちろん喜びもありますし、プレッシャーもあります」と大役を担う心境を明かす。現在は「(渋沢が生きていた)当時のことを調べたり、剣術やそろばんの練習をしたり、撮影に必要なことは少しずつやっている」といい、その中で、二段の腕前を持つ剣道とは細かいところで異なる剣術に難しさを痛感したり、経験が「まったくない」というそろばんに四苦八苦したりしているという。
大河ドラマの主役を演じることについて、「今はまだ割と平常心」といい、「今から考え過ぎてつぶれても怖いし、周りはすごい方々ばかりで、どうせ太刀打ちできないのだから、せめて自分でやれることはやろうと開き直っている状態」だと表現する。
映画「青くて痛くて脆い」はもちろん、吉沢さんの今後の活躍に注目だ。
(インタビュー/りんたいこ)
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