サレタ側の復讐~同盟を結んだ妻たち~
第1話 クソ夫どもは地獄へ堕とす。
4月1日(水)放送分
俳優の高石あかりさん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第115回(3月13日放送)で、視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのだろうか? テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた割合を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移を調べたところ、最高値は午前8時14分の74.7%だった。
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「ばけばけ」は113作目の朝ドラ。ヒロインの松野トキと、その夫となるレフカダ・ヘブンのモデルは、松江の没落士族の娘、小泉セツと、「怪談」などの著作で知られるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)だ。ドラマの中では大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描くという。
久しぶりに松江で朝を迎えたヘブン(トミー・バストウさん)だったが、かつて感じたはずの感情が、音を聞いても、風景を見ても、なにも感じられない。第115回は、自分の変化に動揺するヘブンに、錦織(吉沢亮さん)が橋の上で声を掛けた場面の続き。錦織は日本人になる意味、錦織が反対する理由、ヘブンの現実を淡々と突き付ける。そんな2人の様子をトキ(高石さん)も見ていた。
テレビの前の視聴者のうち、画面を注視していた人の割合を示す「注目度」は、ピークとなった衝撃のラスト「午前8時14分」に向かって、右肩上がりに上昇していく美しいグラフを描いた。錦織ほか、松江の懐かしい人々が順に登場した第23週は、第114回がわずかに70%台に達しなかったが、ほか4回は全て70%を超える、視聴者の視線をつかんで離さない1週間だった。
錦織はなぜ、日本人になろうとするヘブンを手助けしないのか? その疑問が明かされる、ヘブンと錦織の対話が、ドラマのスタートとともに始まったが、午前8時0分の注目度は59.9%。その後も大きく上がることはない。
「正直に言いましょう。今のあなたには……もうこの国で何も感じることができない。何も書くこともできない。幻想を見ていた。日本という国に夢を見ていた。だが……もうその夢から覚めてしまった」。錦織はヘブンに厳しい言葉をぶつける。
ようやく少し注目度が上がったのは午前8時6分(67.4%)。「フィリピン滞在記」をもし書いていたら、「日本滞在記」以上のものが書けたのではと続けた錦織は、「あなた自身も……書いてみたかったんじゃないですか? 日本人になるということは、そういったことがすべて叶わなくなる」と言う。そして、その後強烈な一言を発するあたりからが午前8時6分台だ。
「作家としてのあなたは、死んだも同然。いや、死んだのです」。錦織は英語でそう言い放つ。自分のせいだとわびるトキ(高石さん)に、錦織は「無理を承知で。イギリス人にはなれないだろうか?」とまで尋ねる。ヘブンも、自分が書けなくなっている状況はよくわかっている。錦織の一言一言が正確に、ヘブンの急所を突いていっているような目が離せない場面だった。
注目度はやや下がりながらも、再び上昇カーブとなり、午前8時10分には69.4%と、70%目前まで到達する。錦織の“たきつけ”で奮起したヘブンは松江で一心不乱に原稿を書き始めると、そのまま熊本でも執筆を続ける。午前8時10分は、原稿が完成したとヘブンがトキに報告するあたりから。錦織が驚くだろうというヘブンに、トキは錦織から送られてきた手紙を見せる。無事、ヘブンは日本人となり、雨清水家の戸籍に入ったというのだ。
この後、映像はヘブンと錦織が対話した直後の回想シーンに切り替わる。ヘブンが一心不乱に原稿を書く部屋の外で、様子をうかがうトキのもとに錦織がやってきて、「たきつけたんだ」「これで書けるようになればいいが」と話す。この辺りまでが午前8時10分台だった。
錦織がトキに真意を明かす午前8時11分台はやや注目度が下がるが、再び熊本でのトキとヘブンの場面に戻る午前8時12分(70.3%)に70%台に乗せると、午前8時13分は73.8%、午前8時14分はこの日の最高値74.7%と、視聴者をクギヅケにし続けた。
午前8時13分は、ヘブンの著書「東の国から」を手に取った錦織が、冒頭の文章にはっと気付き、微笑む。うなづくかのように、下を向き、錦織はリテラリーアシスタントとして、自分の仕事をやり遂げた喜びをかみしめているようにも見える。その瞬間、画面は暗転する。そして、蛇と蛙(阿佐ヶ谷姉妹)のナレーションで、数カ月後に錦織が亡くなったことが伝えられた。
午前8時14分台は、錦織が見ていた冒頭の文章の内容がわかる。英語で書かれた内容は「出雲時代の懐かしい思い出に 錦織友一へ」。ヘブンを“たきつけ”奮起させた錦織の真意は、ヘブンにきちんと伝わっていたのだ。そんな2人の関係がうかがえる、いい場面だった。誰かが大声を出すような、派手な場面ではないが、錦織の死と、著書に書かれたエピソードはしっかり視聴者の心に届いていたようだ。
そして、ヘブンはまた原稿を書き始める。そんな場面で第115回は余韻を残して終わった。
活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」(関東地区、速報値)。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)
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