鬼滅の刃:ブームの現状 人気長期化の背景にファン層の代謝?

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ファンの代謝が起き、新たなファン層が盛り上がりを維持したことは、ブームがここまで長期化し、さらに過熱している一因になっているのではないでしょうか

 劇場版アニメが史上最速で100億円を突破するなど大ヒット中の「鬼滅の刃」。テレビアニメは2019年4~9月に放送され、原作マンガは今年5月に終了と、そのたびに大きく話題を集めてきたが、ここにきて、数々の記録を塗り替えるほどの歴史的なヒットに至りつつある。早くから「鬼滅の刃」の動向を見守ってきたアニメコラムニストの小新井涼さんが独自の視点で分析する。

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 評判を耳にしている人の中には「まだそんなに騒がれているの?」と思う方もいるかもしれませんが、「鬼滅の刃」人気はまだまだとどまるところを知りません。絶賛上映中の劇場版は、公開から3日で興行収入・観客動員数歴代1位となり、ついには国内史上最速で興収100億円を突破するという偉業を達成し、「君の名は。」以来の興収200億円突破が早くも射程圏内に入りました。

 こうした本作のブームは、昨年のアニメ放送以降、既に1年以上と、深夜アニメ発のものとしてはかなり長期化してきています。しかしグッズやコラボ展開、実際の劇場での光景など、その内情をのぞいてみると、ブームを支えるファン層は、昨年の盛り上がり始めの頃とは微妙に変わってきているようです。

 一体今、「鬼滅の刃」ブームにはどのような変化が起きていて、その背景には何があったと考えられるのでしょうか。

 ブームに火が付いた昨年のアニメ放送以降、しばらく“女性人気の高さ”が注目されていた本作ですが、最近はそれに代わって“キッズ・ファミリー層”のファンが存在感を増してきています。実際に、本作劇場版はPG12指定(12歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要)にもかかわらず、既に映画館に足を運んだ人は、ブームの中心層とされていた女性ファンと同様かそれ以上に、本作を鑑賞する親子連れの姿を目にしたのではないでしょうか。

 こうした背景には、二つのポイントが考えられます。

 まずはコロナによる休校期間以降、劇場版公開までの間に、キッズ・ファミリー層の作品熱が醸成されてきたことです。

 元々小学生からその親世代まで、幅広い層に人気の作品ではありましたが、休校期間中、さらにアニメ配信や原作マンガに触れて、新たに親子でハマったファンが増加したのでしょう。加えて、ステイホーム期間中に、親が子供にマスクなどのグッズを手作りしてあげたことや、外出ができるようになってからは、ローソンやドン・キホーテ、くら寿司など、ファミリー層も使う店舗で頻繁にコラボやグッズ販売が行われ、ハマったばかりの人にはうれしい、豊富な供給状態だったのも大きかったようです。

 こうした流れもあり、本作はクラスで話題に、親同士で集まっても共通言語となる作品になっていき、劇場版公開までの間にこの層の間で特に作品熱が高まっていったのだと思います。

 二つ目のポイントは、上記の傾向も受けてか、最近になってキッズ・ファミリー層に向けた展開が特に増加していることです。「ドンジャラ」や「DX日輪刀」の発売までは、“こんなグッズまで出るんだ”くらいの認識だったかもしれませんが、いまやスーパーに行けば「鬼滅の刃」ふりかけやカレーが並び、「進研ゼミ小学講座」とのコラボが行われ、ついには「光るパジャマ」や「ランドセル」まで発売されることになりました。

 こうした展開は、増加したキッズ・ファミリー層の作品熱を更に高めると同時に、深夜アニメであり、かつ原作含め残酷な描写も含まれるものの、本作が「自分たち向けの作品でもあるんだ」と、彼らに広く認識させることができたのだと思います。PG12指定であるにもかかわらず、この層が現在積極的に映画館に足を運んでいるのもそのためなのでしょう。

 こうしてキッズ・ファミリー層が存在感を増すことで、現状本作のブームは、同じ“ジャンプの国民的作品”でも、特にティーン層や大人、海外のファン層が厚い「ONE PIECE」や「ドラゴンボール」などとは違う盛り上がり方をみせています。クラスや親同士の会話で共通言語となり、親子でグッズを買い、コラボ店舗に出かけるといった様子は、どちらかというと、かつて「ポケットモンスター」や「妖怪ウォッチ」がはやり始めたころの盛り上がり方に似てきているといえるかもしれません。

 「鬼滅の刃」ブームは今も変わらず続いているものの、現状の盛り上がり方はこうして昨年ブームが生じ始めたころとは明らかに様相を変えています。これには昨年以降、(変わらず応援し続けるファンももちろんいますが)ブームの中心層であった女性ファンの中に、仮に途中で熱が冷めて離脱していく人がいたとしても、それと同じかそれ以上に新しいキッズ・ファミリー層を取り込んだことで、ブームを支えるファンに適度な“代謝”が起きたことも関係していそうです。

 こうした代謝による新たなファン層の取り込みがこのタイミングでなかったら、ブームは原作完結から劇場版公開までの5カ月のブランクで、冷めないまでもある程度の落ち着きをみせていたかもしれません。ブームを支えるファンの代謝が起き、新たなファン層が盛り上がりを維持したことは、現在本作のブームがここまで長期化し、さらに過熱している一因にもなっているのではないでしょうか。

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう 埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。

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