女優の井上真央さん主演で、昨年10～11月に放送されたNHKの連続ドラマ「少年寅次郎」。国民的映画シリーズ「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎（寅さん）の少年時代が題材の、山田洋次監督の小説「悪童（ワルガキ） 小説寅次郎の告白」のドラマ化で、井上真央さんは寅次郎の育ての母・車光子を演じた。今回、葛飾・柴又を旅立ってから1年たった寅次郎と、よみがえる幼いころの日々を前後編で描く、特集ドラマ「少年寅次郎スペシャル」が12月4、11日の2週連続で放送。井上真央さんに母・光子として再会した2人の“寅ちゃん”の印象などを語ってもらった。

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　◇2人の“寅ちゃん”に安堵とさみしさ　「変わってない」と「ちょっと成長」のはざまで…

　「少年寅次郎」は、寅次郎出生の秘密から、戦争を挟んだ悪ガキ時代、そして最愛の妹さくらに見送られて葛飾柴又の駅から旅立つまでの物語。脚本は、2017年度前期のNHK連続テレビ小説（朝ドラ）「ひよっこ」などで知られる岡田惠和（よしかず）さんが担当した。

　2人の“寅ちゃん”とは、寅次郎の幼少期を演じた藤原颯音（はやと）君と、少年期を演じた井上優吏（すぐり）さんのこと。井上真央さんはそれぞれを大寅ちゃん（＝井上優吏さん）、小寅ちゃん（＝颯音君）と呼んでいる。

　「『変わってないな』って思うことが多くて、ホッとしたんですけど。ただ、やっぱり、会話をしていると、『あっ、ちょっと成長したじゃん』っていうところもあって。大寅ちゃんに関しては、もう見た目的に、背もすごく高くなって、より少年らしさ、大人に近づいているなという感じがして。ちょっと立派な子に成長しているみたいな。もともとシャイな子なんですけど、その人見知り感がより増してまして。今回も10回話しかけて、1回返ってくるくらいのシャイさというか。ちょっと母ちゃん、さみしいっていうのはありました。でも今回、お芝居的に大変なシーンもあったので、きっと前回よりも彼なりに頑張らなきゃいけないっていうのを背負っている感じがしましたね」と振り返る。

　一方、“小寅ちゃん”こと颯音君に関しては、「ほとんど変わっていなかったのですが、若干口が達者になっていたというか（笑い）。本当に今回も、彼の明るさに助けられましたし、無邪気さというか、ほとんど変わってはなかったかな。機嫌が悪くなる回数が前回よりもちょっと減ったかなくらいですね」と目を細める。

　「口が達者になった」という部分については、「私がまだ浴衣とか着物に着替える前、私服でいたときに、寅ちゃんが『母ちゃん、そんな格好で来たの？』って言ったんですよね。「何で？　可愛いでしょ？」と言い返したら、『うーん、まぁおいら、お母ちゃんの顔しか見てないから』って言ってきて（笑い）。『そんなことを言うようになったのか！』みたいな感じのことはありました。そんなことが毎日あって、『今日は何を言い出すんだろう？』っていうのが面白かったですね」と撮影現場でのエピソードをうれしそうに披露した。

　◇“大きな肝の座ったお母ちゃん”の光子役は「結構難しい」

　井上真央さん演じる光子は前回の最終回で亡くなっているため、今回は寅次郎の回想として登場する。

　「前回も今回もですけど、光子はやっぱり私の中で結構難しい役といいますか、もちろん、（脚本の）岡田さんとは何度もお仕事をしていますし、本当に愛情を感じるのですが、台本を読んでいて。ただ、やっぱり時代背景だったり、3人の子供を持つという経験もないですし、自分の中にある共通するものっていうのがなかなかなくて……。それでいて、光子さんのような、大きな肝の座ったお母ちゃんをやれるのだろうかっていうのは、すごくありました」と明かす。

　さらに「前回はどちらかというと、『男はつらいよ』の世界観というものも大事にしたいなっていうのがあったので、ドラマを見た人が懐かしくなったり、映画を見返したくなるようになればいいなと思っていました。でも今回はどちらかというと、そういうものに自分がハマりに行こうとするのではなくて、目の前にいる子供に対して、自然に湧き上がる感情というか、そういうのを大事にしていきたいかなっていうのは思いました」と語った。

　改めて2週連続で放送される「少年寅次郎スペシャル」については、「見終わった後に、そういう大事な人のことを思いたくなるような作品になっています。温かい作品になっているので、前回のドラマを楽しく見ていただいた方もですし、今回初めての方もいらっしゃると思うのですが、家族で笑ったり、ちょっとほろっとしたり、そうやって思い返したりってできるような作品になっているので、楽しみにしてもらえたらなと思います」とアピールしていた。

　特集ドラマ「少年寅次郎スペシャル」が12月4、11日午後10時からNHK総合で放送される。