諫山創さんの人気マンガ「進撃の巨人」が、4月9日発売の連載誌「別冊少年マガジン」(講談社)5月号で最終回を迎え、約11年半の連載に幕を下ろす。斬新な設定、謎が謎を呼ぶ先が読めない展開、個性的なキャラクター……。「進撃の巨人」はさまざまな魅力にあふれた作品で、多くの人の心をつかみ、全世界の累計発行部数が1億部以上を誇る超ヒット作になった。怪作にして快作を生み出した諫山さんとは? その魅力に迫る。
ウナギノボリ
ついにクライマックス!「不適切にもほどがある!」
「進撃の巨人」は、圧倒的な力を持つ巨人たちを相手に人類が絶望的な戦いを挑む姿を描いたマンガ。諫山さんのデビュー作で、2009年9月に「別冊少年マガジン」の創刊タイトルとして連載をスタートした。コミックスが第33巻まで発売されており、最終巻となる第34巻が6月9日に発売される。テレビアニメのシーズン1が2013年4~9月に放送され、実写映画が2015年に公開されたことも話題になった。テレビアニメ最終章となる「The Final Season(ファイナルシーズン)」がNHK総合で放送中。
諫山さんが19歳の時、講談社に原稿を持ち込んだことが、「進撃の巨人」誕生のきっかけになった。持ち込みの際、原稿を目にしたのが、後に「進撃の巨人」の担当編集となる講談社の川窪慎太郎さんだ。川窪さんは、編集を担当する中で感じた諫山さんの“すごさ”を「弱音を聞いたことがないこと」と語る。
「諫山さんのマンガ家としてのすごさは、作品を読んでいただければ誰にでも一瞬で分かると思います。それ以外に、僕が思う諫山さんのすごいところは、少なくとも連載中の11年の間には一度も作品制作の弱音を吐かなかったことです。『ネームができなくて苦しい』『アイデアが思いつかなくて困ってるから助けてほしい』みたいなことは一度もなかったです。もちろん打ち合わせはしますし、打ち合わせの中ではアイデアを出し合いますが、いざ諫山さんが机に向かう段になってからは、一度も弱音を聞いたことはないですね。自分がやらなくてはならないことは自分でやる、という矜持(きょうじ)を持った人だと思います」
「進撃の巨人」の“すごさ”は誰も想像もしなかったようなアイデアにあふれているところだ。川窪さんは、連載が始まる前から諫山さんのアイデアに驚かされたという。
「『進撃』を連載するようになるまでの諫山さんの中には『描きたいこと』がたくさんあったように記憶しています。原稿にしたもの、ネームで終わったもの、企画段階で終わったもの、たくさんありますが面白くないと思ったものは一つもなかったです」
「進撃の巨人」は、国境、世代を超えて多くの人に愛されている。さまざまな魅力がある作品ではあるが、川窪さんは「物語」に魅力を感じているという。
「物語というものは複層構造です。表面には絵や文字が記されていて、その下に意味があって、さらに下には意味合いやテーマがある。その下に実はもう一つだけ層があって、それを無意識と呼ぶのか無我と呼ぶのか何と表現したらいいのか僕のような人間には、分からないのですが。そこは年齢や性別や人種を超えて全人類がつながっている場所で、諫山さんがそこまで潜って物語を作れる人間であるというのが一番の理由だと思っています」
「進撃の巨人」を読んで驚いたり、心を動かされるのは、“全人類がつながっている場所”に訴えかける何かがあるからなのかもしれない。約11年半におよぶ連載は一体どのように幕を下ろすのか? 最終回を迎えるのは寂しくもあるが、とんでもないものを見ることができるかもしれない!と期待が膨らむ。
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