おじさまと猫:ドラマPに聞く“ふくまる”を人形にした狙い 「天性の才能」神木隆之介の声の魅力とは

草刈正雄さんの主演ドラマ「おじさまと猫」の第6話のワンシーン(C)「おじさまと猫」製作委員会
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草刈正雄さんの主演ドラマ「おじさまと猫」の第6話のワンシーン(C)「おじさまと猫」製作委員会

 俳優の草刈正雄さん主演のドラマ「おじさまと猫」(テレビ東京ほか、水曜深夜0時58分)。草刈さん演じる孤独なおじさま・神田冬樹と、愛されることを諦めていた猫・ふくまる(声・神木隆之介さん)の心温まる日々を紡ぐハートフルストーリーで、視聴者からは「すっごい泣ける」「じんわり温かくなるドラマ」などの声が上がっている。劇場版アニメ「君の名は。」など、声での活躍も話題の神木さんについて、今作を手がける濱谷晃一プロデューサーは、「見る人を感情移入させる“牽(けん)引力”みたいなものがある」と魅力を話す。濱谷さんに、声の収録の裏側や、ふくまるを人形にした狙いを聞いた。

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 ◇一昨年11月に企画 「草刈正雄と猫、この二つがあれば私は何もいらない」

 原作は、ウェブサービス「ガンガンpixiv」、マンガ誌「月刊少年ガンガン」(スクウェア・エニックス)で連載中の桜井海さんの同名コミック。妻に先立たれた世界的ピアニスト・神田冬樹が、ペットショップで売れ残っていたブサ猫のふくまると出会い、次第に笑顔を取り戻していく。

 一昨年の11月、今作を企画した濱谷さんは、「原作を読んで、すごく心が温まって。(神田役を)草刈さんでドラマにしたら絶対にいいな、テレ東の深夜にまさかの癒やしのドラマ、これはやるべきだなと思って企画した」と振り返る。企画書のキャッチコピーには、「草刈正雄と猫、この二つがあれば私は何もいらない」と書いたといい、ふくまるの声の想定も当初から神木さんだった。「まさか最初の企画書に書いた名前のまま放送できるなんて、こんなにハッピーなことはない」と喜びを明かす。

 第1話では、草刈さん演じる神田と、神木さんが声を演じるふくまるの出会いが描かれた。SNSでは、「原作で号泣したけどドラマでも泣けた」「草刈おじさま素敵だし、神木くんの声の演技も良い~」「癒やされながら見てる。ホントにあのまんまマンガから飛び出してきた感じ」などのコメントが並んだ。また、語尾に「ニャー」をつける“猫語”を話す神木さんも話題となった。

 ふくまるは、本物の猫ではなく、人形を使用。「発表した時に、ネットでは人形であることに賛否両論ありました。ただ、OAで神木君の声が入った動くふくまるを見てもらったら、こちらが意図するストーリーや演出は伝わると思っていた」と明かし、「放送後、『感動した』『泣けた』『心が温まった』という反響が圧倒的で、本当によかったなと思います」と振り返る。

 ふくまるを人形にした理由について、「ふくまるに最も感情を乗せられる方法を模索して、人形にたどり着いた感じですね」と明かした濱谷さん。一方的に人が猫を愛でる、猫が“愛されるだけの対象”のドラマだったら、本物の猫でもよかったというが、今回の原作は違うという。

 「人の気持ちを猫がどういうふうに感じていて、猫はどんなふうに人を見ているかというところや、おじさまと猫が互いに思いやる心の交流が一番のベース、キモだと思う」と原作の魅力を語り、「普通の猫をテーマにしたお話に比べると、猫の表情、アクション、感情が圧倒的なボリュームで求められるので、本物の猫では絶対に不可能だと思う。もし本物の猫で強行していたら、過酷な撮影になり、すごいストレスを与えたかもしれない」と話す。

 ◇アナログな方法で撮影

 実は、ふくまるは、某有名子供番組を手がけたスタッフによって、命が吹き込まれている。「専門のスタッフの方が、顔と手足に操作を加えて見せるという非常にアナログな方法でやっています。だから、ふくまるのCGワークは、動かす人を消しているのと、まばたきを足す程度」と明かす。

 草刈さんの立場を考えれば、愛情をぶつける相手として、ふくまるは気になるところ。ドラマ撮影の前に、草刈さんとふくまるの“対面式”が行われたほか、ふくまるのCG処理済みの動画を見てもらったという。

 「草刈さんが、『いやー本当に可愛い! これなら安心だ』と言ってくださった」と振り返る濱谷さん。ふくまるとの撮影についても、草刈さんは「『人と芝居をしているのと変わらず演技ができたのがすごいよかった』とおっしゃっていた」と明かす。

 撮影の直前に、神木さんも交えて読み合わせを行った。そこで、草刈さんが神木さんの演じるふくまるの声を絶賛したという。神木さんは、すべての編集作業が終わった映像にアフレコしていくので、撮影現場では、助監督が仮でふくまるの声をあてたが、草刈さんもスタッフも、読み合わせで聞いた神木さんの声のイメージを持ちながら撮影に臨んだ。

 ◇神木隆之介の声は「見る人を感情移入させる牽引力がある」

 劇場版アニメ「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」「君の名は。」など、声での活躍も続く神木さんだが、「(今作のアフレコの)難しさは10段階中、10でした。マックスでしたよ」と明かしていた。「最初の方は、『どんなトーンでしゃべっていいかな? どんなふうにしゃべったらいいかな?』って工夫をしたので、この方向だなと決まるまでは難しかったですね」と話していた。

 そんな神木さんを「天才」と表現した濱谷さんは、「アウトラインは、人生ならぬ“ねこ生”をあきらめていた猫が、すてきなおじさまに愛されて幸せになるという話です。ただこの作品はさらに一個踏み込んで、『パパさんを自分が幸せにしてあげたい』と奮闘する猫の成長も描かれていて。神木さんがハマっている」と話す。

 神木さんの声の魅力については、「天性の才能だなと思っていて。声優さんとはまたちょっとアプローチが違う感じがしていて」と話す。「俳優同士の芝居の中に1匹だけアフレコで交わるのですが、俳優だからこそ出せる自然な雰囲気を、神木さんも今回意図的に入れてきてらっしゃるのかなと。そして、ふくまるの声のひたむきさが胸を打ちます。見る人を感情移入させる牽引力みたいなものが、神木さんにはあると思っています」と表現する。

 最後に、濱谷さんは、視聴者に向けて「12話通しておじさまと猫がいろいろな試練にぶつかりながら、乗り越える。本当に幸せな気持ちになれるので、ぜひ最後まで見て、2人の行く末を見届けてほしいです」と呼びかけた。

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