七つの大罪:作者・鈴木央は「電子嫌い」「ネットを全くやらない」 “アナログ人間”が無料配信に踏み切った理由

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 鈴木央(なかば)さんの人気マンガ「七つの大罪」のコミックス第1~24巻が、講談社のマンガアプリ「マガポケ」で2月23日から無料配信される。鈴木さんはこれまで「電子嫌い」を公言しており、無料配信キャンペーンを実施してこなかった。「インターネットを全くやらない」「パソコンとかスマホとか、全然できないんです(笑い)」というアナログな鈴木さんがなぜ無料配信に踏み切ったのだろうか? 鈴木さんに聞いた。 

ウナギノボリ

 ◇パソコンとかスマホとか、全然できないんです(笑い)

 --「七つの大罪」はこれまで無料配信をしていませんでした。

 はい。僕の中では、やはり紙のコミックスで読んでほしいし、紙の書店を大事にしてほしいという思いが強くて、そういった電子版の無料化みたいなことにはあまり乗り気ではありませんでした。コミックスの電子版自体も発売されてはいるんですが、新刊の発売日を、紙のコミックスより1カ月遅れにしてもらうようにお願いしていました。アナログ人間だと言われるかもしれないんですけど、僕自身が紙でマンガを読んで育ってきたので、どうしても思い入れが強くて。それに、僕自身がインターネットを全くやらないというのもあります。

 --鈴木さんは「電子嫌い」を公言してきました。

 パソコンとかスマホとか、全然できないんです(笑い)。10代で福島から上京して以来、ずっとマンガを描いてきたので、そういうものに触れる機会がないままに今に至っています。僕はゲームがすごく好きなんですけど、PS4もインターネットにつながず、一人でやっていますから。昔、あるゲームで初期出荷分にバグがあって先に進めなくなってしまって、どうやらインターネットで修正されたみたいなんですけど、僕のPS4はインターネットにつながっていないので、そこから永遠に進めなくなってしまったこともありました(笑い)。

 ◇やりとりは電話 資料も全て紙

 --担当の編集者とのやりとりはどうしているのでしょうか?

 基本は電話ですね。メールも使えないです。あ、でもファクスは使いますよ! 前にマガジンの忘年会で仲よくなった某作家さんに飲みの誘いをしたんですけど、僕はメールアドレスを持っていないので、いきなり電話をかけたらすごく驚かれたことがありました(笑い)。今の人は、いきなり電話をかけたりしないんですね。

 ー-パソコンやスマホを使ってみようと思ったことはない?

 ないですね(笑い)。今後もないと思います。もちろんマンガの原稿もアナログで描いていますし、マンガの資料とかも全て紙の本ですね。電子書籍だとかさばらないよ、とオススメされることもあるのですが、僕はむしろ紙の本を棚に並べるのがいいと思っているので。だから、「七つの大罪」も棚に並べがいがあるように、背表紙には巻をまたがってつながったイラストを入れています。最初は、「これですぐ打ち切りになったらどうしよう……」と思っていましたけどね(笑い)。

 --紙への思い入れが強いようですね。

 今は、スマホでマンガを読まれる方も多いと思うんですけど、小さい画面でちゃんと読めるのかな?と思うこともあります。電子版を出してほしくないとか、そういうことでは全然ないのですが、できれば、紙のコミックスのサイズで読んでほしいという気持ちはあります。それに、紙だとふとした時に読み返したりすることがあるじゃないですか。そういうことも紙のよいところかなと思っています。なにより、昔から紙の書店さんが大好きで、紙の書店さんを大事にしたいというという気持ちは強いですね。今、紙の書店さんが潰れていってしまっているじゃないですか。もちろん、電子版で読んでもらえるのもうれしいんですけど、紙の書店で買ってほしいという気持ちも捨てきれない。今回、無料化ということをすることにしたんですけど、その気持ちはまだまだ強くあります。

 ◇コロナ禍で変化 乗りきる助けになるのであれば…

 --無料配信を決断したきっかけは?

 それは、やはりコロナのことがありました。今は僕自身もほとんど外出せず、大好きなお酒を飲みに行くこともできないのですが、こういう状況の中でもっともっと苦しんでいる方もいますし、大変な尽力をされている医療関係者の方もいます。あるいは、外出してマンガを買いにいけないということもあるかもしれません。そういう中で、皆さんが家で過ごすことの助けに少しでもなるのであれば、今だけはやってもいいのかなと思いました。僕自身は、今後も電子版でマンガを読むことはないと思います。ですが、若い人はスマホで読んだりすることに慣れているということも分かっているので、こういう状況ですし、スマホやパソコンでも読めるんですかね? 読んでもらえたら、それはそれでよいのかなと思っています。そして、それがこのコロナ禍を乗りきる助けになるのであれば、なおよいのかなと思います。

 --最後に、読者にメッセージをお願いします。

 大変な日々を過ごしている方が多いと思います。僕もちょうど連載が終わって、「よし、羽を伸ばすぞー!」と思ったタイミングでコロナが感染拡大してしまって、なかなか外出できないままに新連載が始まってしまったのですが、もっとつらい状況の方もいると思います。そういう時に、マンガを読むことが気分転換になったり、少しでもお役に立てればと思っています。みんなで、この状況を乗りきりましょう! また、今年の1月から「週刊少年マガジン」で「七つの大罪」の続編「黙示録の四騎士」も始まりました。そちらもぜひ読んでいただけるとうれしいですね。

 「七つの大罪」は、「週刊少年マガジン」で2012~20年に連載。かつて王国転覆を謀ったとされる伝説の逆賊<七つの大罪>の戦いが描かれた。“正統続編”となる「黙示録の四騎士」が同誌で連載中。テレビアニメの最終章「七つの大罪 憤怒の審判」がテレビ東京系で放送中。無料配信キャンペーンは3月8日まで。

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